ビジネスの成功をさらに高めるには、マーケティング活動を適切に測定・分析できるようにならなければなりません。
今回は、マーケティング分析の考え方とその重要性について説明します。また、マーケティング分析のフレームワークのやり方を説明し、よく使われるタイプの用語もリストアップしました。
この記事を読めばマーケティング分析の基本を理解し、ビジネスへの活用方法を学べるため、ぜひ最後までお読みください。
目次
マーケティング分析とは?定義や目的を解説
マーケティング分析に入る前に、マーケティングの定義と目的について説明します。
マーケティング分析の定義
マーケティング分析とは、企業のパフォーマンスを社内外でよりよく理解するために、データを収集、管理、活用することです。
マーケティング活動の効果や投資対効果を評価・判断するために、特定の指標を活用することが含まれます。さらに、マーケティング分析では、単なるデータにとどまらず、より大きな文脈に落とし込むケースも少なくありません。
これには、市場全体がどのように反応しているか、また、個々のキャンペーンがどのように機能しているかを見ることも含まれます。最終的には、さらなる改善が可能な領域を特定するのに役立てることが可能です。
マーケティング分析の目的や重要性
新しいマーケティング戦略の普及に伴い、それを支援するさまざまなテクノロジーが登場しています。これらの新しいテクノロジーは、互いに独立して作用するため、データソースが多数孤立しがちです。
そのため、個々のチャネルのデータだけで判断することは、マーケティング分析とは言えません。したがって、マーケティング分析には、包括的な視点が必要です。
具体的には、ソーシャルメディアのデータだけ、自社サイトの情報だけ、あるいはメールマーケティングの結果だけを分析しても不十分です。包括的かつ統合的な視点が必要です。このように、日々蓄積される孤立したデータを統合し、一定期間内にチャネルを越えて行われたすべての活動や施策を考慮しなければなりません。
マーケティング分析で全体像を把握できれば、よりよい意思決定を行い、効率と効果を高めたプログラムを実行できます。
マーケティング分析を行うメリット
顧客と自社を正しく理解することは、企業の成長や業績アップにつながります。そのためにも、マーケティング分析で期待できるメリットを3つ紹介します。
現状を客観的に把握して改善につなげられる
自社の現状を総合的に把握することで、改善につながります。事業の現状、競合の状況、製品の優位性などの情報を収集・評価することで、的確な計画を立てることが可能です。
また、経験則に基づいた意思決定を行うことで、顧客の期待に応え、部門間の連携も円滑になるでしょう。
PDCAサイクルの精度が高まる
マーケティング批評で構成されるPDCA手法を活用すれば、進捗があったところ、なかったところなど、活動前後の状況を把握しやすくなります。
マーケティングに限りませんが、PDCAを頻繁に回し続けるだけでなく、PDCA分析に公平で正確な数値を入れると、精度の高い計画が立てられます。
新しいサービスや商品のヒントを得られる
マーケティング調査では、自社のビジネスの状況や製品評価について、内部と外部、両方の視点から貴重な洞察を掘り起こせるかもしれません。
組織によっては、自社では想像もつかないような問題が存在するかもしれません。バイアスのかかっていない情報は、製品・サービスに革新をもたらすアイデアとして期待できます。
新鮮なビジネスチャンスをつかめれば、会社の売上を上げる可能性も大きくなるはずです。
マーケティング分析のフレームワークのやり方
マーケティングのトレンドを調べるのは大変なことのように思えるかもしれません。しかし、体系化されたシステムを導入できれば、目的地まで導き、正確に評価できます。
ここでは、代表的なマーケティング分析方法を9つ紹介します。
1.PEST分析
PEST分析とは、「政治」「経済」「文化・生活」「技術」の4つのマクロ環境を総合的にとらえ、企業や事業計画を立案するためのマーケティング分析です。
政治、金利、為替、人口動態、流行など、企業経営に関わるあらゆるトピックを網羅し、それぞれの側面から洞察を得ることで、リスクを先取りできます。より正確な予測や結果を出すためには、社内外からの情報収集が欠かせません。
PEST分析とは?目的と分析方法、分析テンプレートを紹介
PEST分析は3~5年後に自社や自社サービスが世の中でどのようなポジションにいるのか、中長期的視点でどのような打ち手をすべきかを考えるのに役立つフレームワークです。目的や分析方法、注意点をご紹介します。
2.5フォース分析
5フォース分析とは、「競争企業間の競争」「供給者の競争」「購買者の交渉力」などの内部要因。「代替品」「新規参入」などの外部要因の5つが、企業に与える影響や危険度を評価する分析手法です。
予測・検証ができるのは以下の項目です。
- 自社が作り上げた技術や能力を持つ異分野企業からの新規参入
- ベンダーが価格決定権を持つ場合のコスト上昇
- ベンダーが価格決定権を持つ場合のリソース停止
反対に、自社が新しい分野に参入する場合にも、ライバル関係や参入の価値を推定する材料となり得ます。
3.3C分析
3Cは、Customer(顧客)、Competitor(競合他社)、Company(自社)の頭文字で、この3つの観点から自社の経営環境について分析する手法が3C分析です。
顧客については市場規模や顧客ニーズなどを、競合他社については市場内のシェアや業界でのポジションなどを分析できます。そのため、企業全体の戦略や事業戦略を立てるときに適していると言えるでしょう。
また、自社についても複数人で分析することで、自社の弱みや強み、今後取り組むべき課題などを明確に共有できます。
3C分析とは?3C分析の基本から分析手法・テンプレートを紹介
マーケティングフレームワークの基本中の基本である3C分析について事例とともにわかりやすく解説します。3C分析を理解すればあらゆるマーケティング戦略、営業戦略を考える際に役立ちます。ゼロから学んでみませんか?
4.バリューチェーン分析
バリューチェーン分析を通じて、企業がプロセスの中で価値を生み出しているステップと、コストが高いステップを評価できます。
この分析では、「主活動」(物流、製造、販売、マーケティングなど)と「生産支援活動」(人事、財務、会計、インフラ管理など)を分離します。
この2つのカテゴリーを評価することで、コスト削減のための領域を特定し、現在の弱点を認識できます。
バリューチェーン分析とは?事例を含めわかりやすく解説
バリューチェーン分析は昔からあるマーケティングフレームワークの1つです。今でも十分に役立つバリューチェーン分析について、バリューチェーンの基本的なところから解説、IKEAを例に具体例も紹介します。
5.SWOT分析
SWOTとは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の頭文字を取った言葉です。企業内部の強みと外部のチャンスをいかに生かすか、また、潜在的な被害をいかに防ぐかを検討するための広範な分析ができます。
また、内部と外部の設定をどのように一体化するか、資産をどのように使って収益を上げ、長期的な成功を得るかを評価するものです。強みだけでなく、弱みに着目することで、新たなアプローチや方法を見出せるでしょう。
SWOT分析のメリット・デメリットとは?目的、やり方、活用事例も解説
数あるマーケティングフレームワークのなかでも実践されることが多いSWOT分析を基本的なことから実践方法、実践する際の注意点までを解説します。SWOT分析を上手く活用して、成果の出るマーケティング戦略を見つけましょう。
6.STP分析
STPとは、Segmentation(市場の細分化)、Targeting(ターゲット層の決定)、Positioning(競合他社との差別化)の頭文字を取った言葉で、製品やサービスを顧客に提供する前に行うマーケティング分析です。この手法では、市場を分別し、どの分野に取り組むか、また、企業や商品・サービスの位置を決定しなければなりません。
この手法は、その後のマーケティング活動、例えばキャラクター形成やアイテムの広告計画などに影響を与えるので、熟慮することが不可欠です。
STP分析とは?目的と分析方法、事例をわかりやすく解説
売れるマーケティング戦略、販売戦略を立てるときに欠かせないマーケティングフレームワークの1つがSTP分析です。STP分析の基本から分析方法、注意点、STP分析での成功事例をご紹介します。
7.4P分析
4P分析は以下4つで構成されています。
- Product(製品)
- Pricing(価格)
- Placement(配置)
- Promotion(宣伝)
以上4つの構成要素から正しいマーケティングプランを立てるためのアプローチです。
この4つの構成要素の最適な組み合わせを「マーケティング・ミックス」と呼びます。マーケティング・ミックスは、顧客の要求や活動とどのように関係しているのか、また、要素がどのように作用しているのか認識することが欠かせません。
最終的には、顧客のニーズ・行動、素材、料金、市場、宣伝の間の不一致を埋めることが、よい結果を生むための唯一の方法といえます。
4P分析、4C分析とは?違いと事例、テンプレート紹介
8.ファネル分析
ファネル分析では、企業が提供するサービスを最初に認知してから、購入または購読に至るまでの顧客の流れを追跡・検証します。この分析により、顧客の離脱ポイントを特定し改善することでコンバージョン率を向上させられます。
パーチェスファネルとは?意味や各段階ごとの解説、必要な施策を紹介
9.RFM分析
RFM分析とは、直近の購入履歴(Recency)、訪問・購入回数(Frequency)、累積消費額(Monetary)の3つの頭文字からなる分析方法です。具体的には、顧客をグループに分類するマーケティング分析の手法となります。
各指標の条件を満たしているかどうかで各個人にポイントを割り振り、「優良顧客」「既存顧客」「離脱消費者」のクラスに分けます。このランク付けを通じて、各顧客にとって最も効果的なマーケティング戦術を特定できます。
RMF分析とは?顧客分析の手順と施策例、活用事例をわかりやすく解説
株式会社アイピアでは、『【まずはこれだけでOK!】初心者のためのマーケティングの基本分析手法』という記事にて、マーケティング担当者になってまだ日の浅い方や、マーケティングに興味の出てきた皆さまに向けて、詳しくマーケティングの基本的分析手法をご説明していますので、併せてご参考にしてみてください。
マーケティング分析でよく使われる用語の種類を紹介
マーケティング分析を行う場合、基本的なマーケティング用語を理解しておくと、より良い評価が得られます。以下、9つのマーケティング用語を紹介します。
1.AIDMA(アイドマ)
アメリカの作家サミュエル・ローランド・ホールは、1920年代にAIDMAという考え方を提唱しました。この考え方は、ユーザーの購買選択サイクルを把握する方法のひとつで、以下5つの購買決定プロセスに分けられます。
- Attention(注意)
- Interest(関心)
- Desire(欲求)
- Memory(記憶)
- Action(行動)
マーケティング担当者は、購買決定プロセスを以上の5つに区分することで、消費者の要求に合致した対応を行い、購買に結びつけられます。
2.AISAS(アイサス)
電通が2004年にAISASという概念を提唱しました。これは、顧客の行動を、主に特定の商品やサービスの獲得・利用するまでの一連の段階に分類するマーケティング分析です。AISASは、以下5つの購買に関わる顧客購買行動の頭文字を取って作られました。
- Attention(注意)
- Interest(関心)
- Search(検索)
- Action(行動)
- Share(共有)
3.SIPS(シップス)
ソーシャルメディアプロモーションに対する顧客の反応について、新たに把握することを電通が提案したものです。
SIPSとは、「Sympathize(共感する)」「Identify(確認する)」「Participate(参加する)」「Share & Spread(共有する・拡散する)」の頭文字を合わせて作られた言葉です。企業の広報活動において、ソーシャルメディアを頻繁に利用する顧客の習慣を分析するためのモデルとして活用されています。
市場分析のためのフレームワークを紹介!やり方やツールもチェック
市場分析のために用いられるフレームワークについて、使い方や目的ごとでおすすめするフレームワークを紹介しています。 自社のビジネスをより成長させるためにも、正しいフレームワークの活用方法を覚えておきましょう 。
4.ペルソナ
ペルソナとは、マーケティング用語としてよく使われます。もともとはユングが提唱したもので、人の「外側の部分」または「内側のアイデンティティ」を表す言葉です。マーケティングの文脈では、商品やサービスの典型的な消費者の概念を意味します。
ペルソナとは?役割と定義、設定ポイントを解説
5.カスタマージャーニー
消費者が最初に製品やサービスを紹介され、購入や契約に至るまでの体験は、「カスタマージャーニー」と呼ばれます。カスタマー・ジャーニー・マップという資料も有名ですが、プロセスの各段階を明確に描写するためによく用いられる方法です。
BtoBのカスタマージャーニーマップのポイント、顧客課題やペルソナ
6.セグメント
セグメントとは、コミュニティや人々の集まりを分離する細分化のことで、ビジネスの世界では、実体や集まりの分類は指標に基づいて行われます。
さらに、経済的な観点からは以下のような意味を持ちます。
- 共通の要件
- 製品・サービスの特徴的な要素
- 購買決定に至る道筋
- 同じ購買傾向を持つ購買者のクラス
7.キャズム
キャズム理論という言葉で知られ、ある品目がどの程度市場に浸透しているかを説明するイノベーター理論をベースにした理論です。
普及率から5種類の消費者(イノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガード)を定義するのが特徴です。
キャズム理論は、イノベーターとアーリーアダプターを初期市場、アーリーマジョリティからラガードを主流市場と考えます。その2つのグループの間にキャズムがあり、製品を市場にうまく導入するためには、キャズムを埋めなければならないとされる考えです。
8.クリティカルマス
クリティカルマスとは、ある製品の普及率が予想外に上昇する時点を指します。
一般的に、あるアイテムやサービスが市場に投入されると、イノベーターと呼ばれる一部のユーザーに受け入れられます。それから、アーリーアダプターと呼ばれるニッチな層を通じて、徐々に慎重な顧客層へと移行していく流れが通常です。
しかし、何らかの条件がヒットした瞬間に、普及率が急上昇するのもありえないことではありません。
9.LTV
LTV(Life Time Value)とは、「顧客生涯価値」のことです。この数値は、ひとりの顧客との関係全体を通じて、事業やブランドにもたらした利益の総量を決定することによって算出されます。
この指標は、顧客関係管理(CRM)のアプローチとうまく調和し、利益の増加と理解のしやすさをもたらすでしょう。一般的に、顧客ロイヤリティが高ければ高いほど、顧客ライフサイクルを通じてより多くの金銭的利益をもたらし、LTVの上昇につながります。
マーケティング分析では目的にあったフレームワークを使おう
結論として、マーケティング分析は、顧客、市場、競争に関する洞察を得るための重要なツールであり、企業が十分な情報に基づいた意思決定を行うのに役立ちます。
マーケティング分析を行う目的、利点、方法、さまざまな種類のフレームワークを理解することは、それを最大限に活用するためにも欠かせません。また、目的に応じて適切なフレームワークを使用することで、最も正確で包括的な分析結果を得られます。
このことを念頭に置いて、企業は将来の成功のために最良の決定を下すことをより確実にできるのではないでしょうか。もし社内での施策運用が難しい場合には、ニュートラルワークスにご相談ください。