ターゲティングとは、ビジネスの現場において「売るべき市場を見定めること」です。マーケティングの戦略の中で「6R」という有効な手法がありますが、その中の一つに数えられます。しかし、「聞いたことはあるけれど、詳しく説明できない」という人もいるでしょう。
そこでこの記事では、ターゲティングの基本を紹介するとともに、マーケティングの中での位置付けを解説します。「6R」という有効なフレームワークについても触れていますので、マーケティング戦略の立案にぜひお役立てください。
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目次
ターゲティングとは
ターゲティングとは、マーケティングの手法の一つです。市場を細分化し、ターゲット(対象)を絞り込んで分析し、戦略を立てることをいいます。ターゲットを絞り込むことで、商品・サービスを特定のニーズに対して売り込みやすくなります。ビジネスとして成功していくために、必須で取り入れていきたい手法です。
具体的には、輪郭のない「誰か」に売るのではなく、「特定の課題感や悩みを持つ人」に絞り込むことで売り込むべき戦略が定まってきます。
また、ターゲティングは、STP分析の一つでもあります。STP分析とは、S(セグメンテーション:市場細分化)、T(ターゲティング:市場決定)、P(ポジショニング:立ち位置の明確化)それぞれの英単語の頭文字をとった分析手法のことです。STP分析はビジネスの場面で、業種を問わず幅広く使われています。STP分析の内容については、次項でそれぞれ詳しく解説します。
【STP分析】市場の構造を把握する「セグメンテーション」
セグメンテーションは、「市場細分化」を指し、市場を細分化して構造を把握することをいいます。ひと口に「市場」といっても、性別・年齢・属性・嗜好・居住地などはさまざまな条件が混在しているものです。その中で、一定の軸に沿って分類しながら属性を分けていくと、詳細が理解しやすくなります。
例えば、女性か男性か、年代をどこで区切って区分けするか、居住地をどう区分するかなどといった軸を定め、その軸に沿ってセグメント(分類)し、その軸に当てはまる人をさらに調査・分析していくのがセグメンテーションです。どの軸で分類していくかで今後分析していく結果が変わってくるため、慎重に分類軸を定める必要があります。
【STP分析】勝負対象を定める「ターゲティング」
前述したターゲティングは、セグメンテーションで分類したグループの中から、さらに商品・サービスを売るべきグループを定めることをいいます。他社とは違い、秀でている部分や強みを生かせる部分に焦点を当て、グループ選定に役立てます。ターゲティングの目的は、自社の商品・サービスを買ってもらう人に焦点を当てて、より適切に売り込む戦略を立てることです。
商品を必要とする人は、どんな人なのか深掘りをして考えてみましょう。このタイミングで競合他社をしっかりと分析して、自社の強みが実際にどうであるのかを確認する機会としても良いでしょう。
【STP分析】ニーズに対してどんな価値を提供するか定める「ポジショニング」
ターゲティングで決めた対象のグループに対して、どんな価値を提供するかを決めるのがポジショニングです。ポジショニングする際には、ターゲットについて知ることももちろん重要ですが、市場でどのようなものが提供されているのか知ることも重要です。
そのためには似た商品・サービスを提供している競合他社を徹底的に調査し、それぞれの強みや特徴を押さえる必要があります。
それらを調査し、それぞれの会社の商品・サービスを整理した後に、「自社はターゲットから見てどの位置にあるか」「市場の中で自社が特にすぐれている点はどこか」を考えることになります。これがポジショニングです。
ターゲットから見て、市場における唯一の価値を提供できるポジションをとり、必要と感じてもらうことが目的となります。そうして価値を感じられるようなブランディング・広告宣伝を行いながら、これまでの分析の成果を実践していくのです。
マーケティングにおいてターゲティングが重要な理由
STP分析の中で最も重要といわれているのがターゲティングです。現代は、さまざまなものが市場にあふれ、情報も氾濫しており、質が良いだけでは売れない時代になっているといえます。単に「いいものを売っている」というだけでは、購入されずに残る可能性もあります。
しかしマーケティングでは、そんな状況の中でも商品・サービスを一際目立たせ、必要としている人に届けることができます。その「必要な人」を見定める際に重要なのがターゲティングです。マーケティング活動を効果的に行っていくためにも、しっかりとターゲティングを行い、自社の商品・サービスをどう届けていくか戦略を立てていきましょう。
ターゲティングに有効な6つのフレームワーク「6R」
成果につながるターゲティングを行うために、6つのフレームワークを通して設定していく方法があります。このフレームワークを「6R」と呼びますが、それぞれの項目を達成することで、ターゲットを明確にできます。
Realistic Scale:有効な市場規模
まずは、自社の商品やサービスを売るにあたって、見込みがある市場かどうかを見極める必要があります。「見込みがある」というのは、実際に期待する程度の数が売れるかという数的側面と、売り出すにあたって、生じたコストを賄うほど十分売れるかという金額的側面を持ちます。
一人当たりの消費金額が多いか少ないかも、重要な要素です。マス市場を狙えばさまざまな人に購入してもらえる機会がありますが、ニッチ産業でターゲットを絞り込み、競合を避けていく方法もあります。
Rank/Ripple Effect:優先順位/波及効果
売りたい商品・サービスに対して、顧客の優先度がどのくらい高いのか、注目してもらえるのかなどについて見極めます。そもそも世間で関心が高く、優先度の高い市場であれば、ちょっとしたことで波及効果を見込めます。拡散を狙える人に焦点を当て、魅力的な宣伝を行うことで波及効果を存分に発揮できるでしょう。
狙う市場自体が小さくても、波及効果の結果多くの人に認知拡大し、市場が発展していくことが期待できます。
Rival:競合状況
自社商品・サービスに対して、すでにライバルとなる競合が存在しているかどうかを見極めます。競合の数だけではなく、その質も重要です。あまりに競合が多すぎる場合、あるいは強力な一社が独占している状況であった場合などでは、その市場で戦うには厳しい状況といえるでしょう。こういった市場をレッドオーシャンといいます。
できるだけライバルのいない、ブルーオーシャン市場で戦うのが良策です。競合との戦いが少なく、穏やかな市場こそ成功のチャンスがあります。うまくいくとシェアを大きく獲得し、高い地位を獲得することができるかもしれません。
Rate of Growth:成長性
狙っていく市場が、その後どのくらいの成長性があるのか見極めます。今までが上り調子だった市場でも、今後の将来性については分析しなくてはわかりません。
衰退していく市場に狙いを定めてしまうと、少しの期間だけは利益を上げられるかもしれませんが、数年・数十年と市場を保つことは難しいでしょう。市場が狭くなっていけばいくほど、商品を売るのも難しくなってきてしまいます。狙いたいのは、今後成長していく市場です。今は小さい市場でも、今後成長していく見込みがあるならば期待できます。
そのため、現在の市場状況だけではなく、将来を含めてしっかりと状況を分析してください。細かいデータ分析が必要な場合もありますが、「これも重要」と考え、必要があればデータ作成から取り組むと良いでしょう。
Reach:到達可能性
地理的理由などで商品やサービスを顧客に届けることが難しくないかどうかを見極めます。具体的にいうと運送手段、ネットなどのインフラに注目します。例えば、温暖地域で雪かき機をすすめたり、都市部でトラクターを売ったりするのが難しいのと同様、買ってくれる人がほぼいない地域でわざわざ販売するのは、コストの無駄でしかありません。
地理的状況を見極めて、売るべき地域を定める必要があるのです。
Response:測定可能性
成果や反応を測定してPDCAを回していける市場かどうかを見極めます。例えば、ネット広告であれば、その表示回数・クリック数などがわかりますが、紙のチラシや宣伝カーなどのアナログな宣伝方法では正確な成果測定は難しいでしょう。
せっかくマーケティングの手法を駆使して宣伝を行ったとしても、PDCAを回せなくては改善のしようがありません。効果を測定し、常に改善を試みることができる環境を整えてください。ネット環境でのデータ収集が難しい場合は、アンケート・モニタリングなど、具体的なフィードバックを得る方法を考えると良いでしょう。
ターゲットとセグメントとの違い
ターゲットと同じような言葉に「セグメント」があります。どう違うのでしょうか?上図のように、セグメントはユーザーを属性などの条件でグループ分けすることです。一方ターゲットは、いくつかあるグループの中から、商品・サービスの対象に選んだグループを指します。ターゲットは商品・サービスの対象になっているのが、大きな違いです。
ターゲットとペルソナとの違い
次に、ターゲットと混同して使われやすい言葉に「ペルソナ」があります。どのような違いがあるのでしょうか?上図のように、ターゲットは属性などの条件で分けた集団であり、ペルソナはターゲットの一人をより具体的にイメージした人物像です。より深掘りしたペルソナを設定することで、マーケティングが行いやすくなります。
ターゲティング広告とは
ターゲティング広告とは、年齢・性別・職業・住所・年収といった属性や、サイト訪問履歴、ブラウザ閲覧履歴などのデータから、どの媒体に広告を配信するかを設定できる広告のことです。例えば、ダイエットに関する広告の場合、さまざまなユーザー情報からダイエットに興味がありそうなユーザーを選び出し、その人が良く見る媒体に広告を掲載することができます。
ターゲットを絞り込んでいるので、購買につながりやすいというメリットがあります。
ターゲティング広告でのターゲティングの種類
対象 | 種類 |
---|---|
ユーザーのターゲティング | 年齢ターゲティング 性別ターゲティング 地域ターゲティング オーディエンスカテゴリーターゲティング サーチキーワードターゲティング サイトリターゲティング |
配信するサイトのターゲティング | コンテンツキーワードターゲティング プレイスメントターゲティング |
その他 | 曜日や時間帯のターゲティング |
主なターゲティング広告の種類は、上記のとおりです。
ターゲティングの成功事例
ここからは、ターゲティングに成功している事例を紹介します。似た業界・商品などを見て参考にし、自社でのターゲティングに生かしてみてください。
スターバックス
引用:スターバックス
スターバックスは、都市部かつ利便性の高い立地で、高単価のコーヒーを販売している会社です。おしゃれな店内で優雅に勉強や読書をしている人を、見かけたことがある人も多いでしょう。学生から社会人まで、幅広く愛されています。
もともとは高単価の商品を購入できる高収入のビジネスマンがターゲットでした。クオリティーの高い商品と、店内の雰囲気が、ターゲットにうまくマッチしていたといえます。成功のポイントは、最初のターゲティングがうまくいった点にあるでしょう。
現在はコーヒー以外に、フラペチーノなどの甘い飲みものや写真映えする新商品が若い女性や学生に好まれており、想定していたターゲットから外れて広い範囲で人気を誇るようになっています。
QBハウス
QBハウスは、「美容・理容院にできるだけお金をかけたくない」という層をターゲットとして成功した会社です。美容や理容業界では本来、料金は数千円かかるのが当たり前であり、価格よりもカットの品質で競っていました。しかし金額という、優先度が高いわりに注目されていなかった項目に焦点を当て、「とにかく早い・とにかく安い」とテーマに掲げたのが大きな特徴です。
忙しいうえに自由に使えるお金が少ない会社員をターゲットに、「10分1000円」という破格の価格・スピードでサービスを提供しています。駅周辺など、人が集まりやすい場所に店を構え、今では多くの店舗が各地にあります。
無印良品
引用:無印良品
無印良品はその名のとおり、シンプルで高品質な商品を提供している会社です。当初からミニマルなライフスタイルを好む人や、シンプルなデザインを好む人をターゲットにしていて、比較的手ごろで手に入れられる商品を販売しています。
「安くてそのぶん品質が悪いもの」ではなく、「安くて良いもの」に焦点を当てて販売することで、手ごろ感を求める多くの人から好まれるようになりました。もともと凝ったデザインやパッケージ、付加価値化を行わないことから、商品を安く提供することを続けられています。一貫したマーケティングの姿勢により、追随を許さないブランディングに成功しているといえます。
SEA BREEZE
引用:SEA BREEZE
もともとは海で遊ぶ男性をターゲットにしていたSEA BREEZE(シーブリーズ)ですが、そもそも海にいく人の数が減ってきたことから売り上げは徐々に減少。そこで方向転換を行い、女子高生をターゲットに販売を行っていくことにしました。
この思い切った方向転換で、売り上げは上昇。海に行くという非日常での使用から、日常使いにフォーカスしたことで、使用頻度が上がることになりました。単純に使用するターゲットの母数が大きく上がっただけではなく、使用の頻度つまり使用量が上がったのです。
ターゲットを変更することそのものも英断でしたが、ターゲットがより大きな市場へと変化することで非常にうまくいった例といえます。
ポケットドルツ
引用:ポケットドルツ
ポケットドルツはパナソニックが開発した女性向け歯ブラシです。女性の手にも握りやすく、小さな口でも磨きやすいように設計されています。電動歯ブラシといえば、多くは高齢者や男性をターゲットに作られていて、女性をターゲットにしたものではありませんでした。
ポケットドルツはその静音性と、使いやすいフォルムから、女性が実際に職場でも使いやすくなっています。外観も上品で可愛らしくなっていることも特徴の一つ。ターゲットにひたすら寄り添った商品です。これまでの市場が向けていたターゲットからあえて外し、「小さい市場」を狙っていくことで成功した事例といえます。
ターゲティングはどんな仕事にも役立つ!営業を例に紹介
ここで一つ、営業マンがターゲティングの考え方を取り入れた例を見ていきましょう。営業マン自身は、「良いものを売るのだから必ず売れるはず」という考えで仕事をしていました。しかし、段々と新規顧客が少なくなってきたために、考えを改める必要性を感じ、ターゲティングの考えを取り入れることにしました。
ここでのターゲティングは課題を克服するために非常に有効な手段です。ターゲティングでは、市場での価値を整理し、競合を分析し、売り込むべき自社商品のプロモーション戦略を練ります。
そうして練り上げた売り文句を使い営業をかけることで、的確に魅力を伝えることができ、新規顧客が得やすくなる効果を期待できます。さらに、強い魅力を感じて客単価が上がることも期待できるでしょう。
続いて、営業面でターゲティングを活用するメリットについて解説します。
- 新規顧客にアプローチできる
- 客単価を上げられる
- ターゲティング後の動きが取りやすい
それぞれ見ていきましょう。
メリット1.新規顧客にアプローチできる
ターゲティングすることで、その商品・サービスを望んでいる層を見つけ出します。そのうえで、その層に集中的にアプローチすることによって、本来であれば難しい新規顧客の獲得が容易になります。
メリット2.客単価を上げられる
ターゲティングする際は、市場環境やターゲットになり得る層について理解することが大切です。実際に新規顧客になると、その層にはどういったニーズがあるのかをすでに理解しているため、対応できていないニーズに対する商品やサービスを提供することで客単価を上げやすくなります。
メリット3.ターゲティング後の動きが取りやすい
ターゲティングを行わないと、その商品・サービスを購入する人が、どんな思考で、どんな課題を抱えていて、普段はどんな生活をしているのか、皆目検討もつかないでしょう。ところが、ターゲティングをすることで、そうした購買層の考えやライフスタイルを想定しているので、効率的に次の行動が取りやすくなります。
ターゲティングの注意点
市場分析した結果、いい条件がそろっても自社にそのセグメントをターゲットにするリソースがあるかどうかを検討することも重要です。ターゲティングは、会社の中でも大きな方向性を握ることになります。もしターゲットにするほどのスキルやノウハウ、余裕がなければもう一度分析に戻ってみることが重要です。改めて、狙える市場を選定しましょう。
また、あまりに短期的な目線でいるのも危険です。短期の売り上げだけ、目先の結果だけを追い求めれば、長期的に見ていい結果が得られない場合もあります。さまざまなマーケティングの事例を見て学び、自社の戦略に生かしてください。
ターゲティングとは?のまとめ
ターゲティングとは、マーケティングの戦略立案をしていく際に役立つ有効な手法です。ターゲティングは、マーケティングを行う人だけが必要なものと考えがちですが、さまざまな場面で活用できます。「STP分析」の概念を念頭に置きながら、「6R」の手法でターゲットを設定し、セールスを成功に導くターゲティングを実践してみてください。
<無料>資料ダウンロード
【売上アップ】Webサイト改善コンサルティング
本物のプロが、集客と売上に繋がるWebサイトに改善!
ターゲティングのよくあるご質問
- ターゲティングとは?
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ターゲティングとは、マーケティングの手法の一つです。市場を細分化し、ターゲット(対象)を絞り込んで分析し、戦略を立てることをいいます。
- STP分析とは?
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STP分析とは、S(セグメンテーション:市場細分化)、T(ターゲティング:市場決定)、P(ポジショニング:立ち位置の明確化)それぞれの英単語の頭文字をとった分析手法のことです。STP分析の中で最も重要といわれているのがターゲティングです。
- ターゲットとペルソナとの違いは?
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ターゲットは属性などの条件で分けた集団であり、ペルソナはターゲットの一人をより具体的にイメージした人物像です。より深掘りしたペルソナを設定することで、マーケティングが行いやすくなります。