MA(マーケティングオートメーション)のシナリオ作成は、MAを利用するにあたって欠かせないものです。
しかし、MAのシナリオをどのように作成すれば、成果につなげられるのか、いまいちコツがつかめていない方も多いのではないでしょうか。
コツが掴めずに放置してしまうと、いつまでもユーザーを次の行動に促せず、売上につなげられません。MAツールは、決して安いものではないので、お金も無駄にしてしまいます。
今回この記事では、成果を出すための事前準備やシナリオ作成方法、ポイントを紹介します。高度なMAツールだからこそ、しっかり基礎知識を身につけることが重要です。
実際にペルソナやカスタマージャーニーをもとにシナリオを組み直すことで、リードナーチャリング(見込み顧客の育成)が成功して、成約率を高められるでしょう。
まずは、MAにおけるシナリオの基礎知識から押さえていきましょう。
MAにおけるシナリオとは
MAにおけるシナリオとは、見込み顧客から購入までの流れを想定した上で、見込み顧客のフェーズやニーズに合わせてコンテンツを配信する台本です。
MAのシナリオを作成する目的は、企業が描いたカスタマージャーニーマップを実現すること。見込み顧客には、初回購入のためのリードナーチャリングが欠かせないですし、初回購入客には2回目購入を促すタイミングでオファーすることが欠かせません。
このように顧客ライフサイクルに合わせて、適切にユーザーを初回購入やリピート購入につなげるにはシナリオが必要なのです。
また、適切なタイミングで適切なコンテンツを配信するには、自動化は必須です。コンテンツが配信される条件を設定して、見込み顧客を購入に導きましょう。
それを実現するのがMA(マーケティングオートメーション)ツールです。
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MAツールのシナリオ機能
マーケティングの自動化を実現するために、MAツールのシナリオ機能を使いこなす必要があります。ここでは代表的なMAのシナリオ機能を4つ紹介します。
実際にシナリオを作成するときに、機能を知らなければ使いこなせません。1つずつ紹介します。
メールの自動配信
メールの自動配信とは、事前に設定しておいた配信条件を満たすと、メールが自動配信される機能です。配信条件は、顧客のアクションに応じて設定できます。
この機能があるおかげで、担当者はPCの前に張り付くことなく、適切なタイミングでコンテンツの自動配信が可能になります。
例えば、サービス資料をダウンロードした見込み顧客がいたとしたら、数時間後にサービスのデモ動画のURLが記載されたメールを送信できたり、トライアルの案内メールを送信できたりします。
MAツールによっては、SMSやLINEなど別のチャネルから自動配信できるものもあります。
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シナリオの分岐
シナリオの分岐とは、自動配信したメールに対して、ユーザーのリアクションごとに、次回のアクションを分岐させられる機能です。
例えば、ユーザーにサービスの購入を促したとします。サービスを購入すれば、サポートのシナリオに切り替え、購入しなければ数日間のクロージングメールが自動配信するというような設定ができます。
ユーザーのリアクションごとにシナリオを変更できるので、購入してくれたユーザーにクロージングメールを何度も送ってしまうようなミスも防げます。
また自動配信メールが開かれなかったら、何度か同じメールを配信するアクションも可能です。
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フェーズごとのシナリオ作成
フェーズごとのシナリオ作成とは、顧客ライフサイクルのような、顧客フェーズごとにシナリオを作成できる機能です。
顧客ライフサイクルとは、認知、興味、関心、比較・検討、商談などと顧客フェーズを分けて説明したものです。これらの顧客フェーズごとにシナリオを作成することで、適切に見込み顧客を購入へ導くことが可能になります。
例えば、関心の段階であれば、ホワイトペーパーやウェビナーなどの案内を配信、比較・検討の段階であれば、導入事例などのコンテンツを配信します。
顧客フェーズごとにシナリオを作成できるので、効率よくリードナーチャリングしていくことが可能になります。
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複数チャネルでのコンテンツ配信
MAツールを活用すれば、複数のチャネルでのコンテンツ配信が可能になります。
メール配信はもちろん、SMS、LINE、Webプッシュなどにも対応しているMAツールもあります。中にはオフラインとも連携していて、DMを印刷するところまで自動化できるものもあり、さまざまな方法でコンテンツを届けられるのです。
例えば、メールが開封されなかったら、SMSやLINEを配信するように設定しておくことも可能です。SMSであれば、契約更新のお知らせやウェビナーのリマインドとして使うなど、用途に合わせてコンテンツ配信できます。
MAのシナリオ作成に必要なもの
MAのシナリオ作成には、事前に準備しておくべきものが5つあります。
全てを完璧にそろえて、シナリオ作成を始めるのは難しいかも知れません。しかし、準備しておくと、シナリオ作成をスムーズにできたり、MAで思い通りにお客様を誘導できたりします。
それでは1つずつ確認していきましょう。
顧客データ
まずは、顧客データを多く集めましょう。顧客データには、数値として表せる定量データと、数値として表せない定性データがあります。
定量データは売上や販売数、Webサイトのアクセス数などです。定例データは、アンケートやインタビューによって集められた商品を選んだ理由や改善要望などの声などです。
このような顧客データを集めていけば、セグメンテーション分析やRFM分析に活かせます。また、後ほど紹介するペルソナの設定やカスタマージャーニーマップを作成をするためにも、顧客データは欠かせません。そのため、事前に顧客データを集めておきましょう。
セグメンテーション分析とRMF分析については、以下の記事を参考にしてください。
セグメンテーション分析
セグメンテーションとは?マーケティングでの活用方法、セグメント分類のコツ、ポイントを紹介
RFM分析
RMF分析とは?顧客分析の手順と施策例、活用事例をわかりやすく解説
ペルソナ
ペルソナとは、架空のユーザー像・人物モデルのことです。
ペルソナを設定することで、顧客のイメージを明確にしておきましょう。顧客の人物像を捉えた上で、MAのシナリオを設定すれば、適切に見込み顧客を購入やリピート購入へ導くヒントとなるでしょう。
MAのシナリオでは、顧客のフェーズごとのニーズに合わせて、適切なタイミングでコンテンツを配信することが求められます。
そのとき、ペルソナを設定しておくことで、適切なコンテンツを配信することにつながるため、しっかり設定しておきましょう。
ペルソナについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
ペルソナとは?役割と定義、設定ポイントを解説
カスタマージャーニーマップ
カスタマージャーニーマップとは、ユーザーが商品やサービスの認知・検討・購入・活用までの一連の流れを顧客のフェーズごとに分けて、図式化したものです。
カスタマージャーニーマップを作成すべき理由は以下のとおりです。
- ユーザーが行動する流れの全体像が把握できる
- チームで共通認識を持てる
- 優先すべき課題を洗い出せる
MAでシナリオを作成するのに、カスタマージャーニーマップを作成しない理由はありません。
ここまで説明してきたとおり、MAでシナリオを作成するというのは、カスタマージャーニーマップを実現するものでもあります。必ず作成しておきましょう。
カスタマージャーニーマップについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
カスタマージャーニーマップとは?目的と作り方、事例を解説
コンテンツ
ペルソナ、カスタマージャーニーマップに合わせて、顧客フェーズごとに必要なコンテンツを準備しておきましょう。
コンテンツを準備しておくことで、MAのシナリオ作成がスムーズになります。MAのシナリオを作成するときに制作してもよいのですが、今すぐ作成できないようなものも中にはあります。
例えば、BtoB商材を扱う場合、サービス資料、お役立ち資料、導入事例、導入シミュレーションなどが必要になるでしょう。
もちろん新規でコンテンツを作るだけではなく、MAのシナリオに組み込む前提で既存のコンテンツをブラッシュアップすることも準備に含まれます。MAのシナリオを作成する前に準備しておきましょう。
各種オファー
オファーとは、売り手と買い手の取引条件を提案することです。マーケティングや広告の分野でいうところの、特典と言い換えることもできます。例えば、初回限定クーポン20%OFFや定期契約したら毎月10%OFFなどです。
BtoBの場合だと、リードジェネレーション時に、オウンドメディアからお役立ち資料のダウンロードをオファーとして、リード情報を顧客からもらいます。また、新規購入では、トライアル期間をオファーとして、購入を促します。
顧客が行動する理由を意図的に作るためには、オファーが欠かせません。オファーを準備せずにシナリオを作成してしまうと、適切にユーザーに行動を促せません。
顧客フェーズごとに、どのような行動をしてほしいのか明確にして、その見返りとなるオファーを準備しておきましょう。
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MAシナリオの作成手順
ここまででMAシナリオの基礎やMAツールの機能、シナリオ作成のための事前準備について説明しました。次は実際の作成手順を紹介します。
カスタマージャーニーをもとに、見込み顧客がたどりそうな道筋を想定して、シナリオを組んでいきましょう。
大前提として、カスタマージャーニーマップ通りに、一気にすべてのシナリオを作成することは難しいです。
ここから紹介するのは、あくまで1つの顧客フェーズに対して、1つのシナリオを作成する手順となります。一つずつ作成していきましょう。
ターゲットの設定
ターゲットは、ペルソナをもとに、どのようなフェーズの見込み顧客が、どのようなニーズを抱えているのか設定しましょう。誰のどんな課題に答えるのかを決めます。
ターゲットの設定方法は、3つの軸から考えていきましょう。
顧客ライフサイクル軸
認知、興味、関心、比較・検討、商談などの顧客ライフサイクル軸にターゲットを決めていきましょう。
また今すぐ客、そのうち客と定義することもあります。これは企業やMAツールによって名称や定義が多少変わります。使いやすいものを採用しましょう。
顧客ライフサイクル軸でターゲットを設定すれば、より顧客フェーズごとのニーズに応えられます。
顧客行動軸
顧客のリアクションごとにセグメントしてターゲットを設定することもできます。例えば、料金ページを見たり、ウェビナーに申し込みをしたりなど、リアクション別に行動を分類しましょう。
そうすることによって、以前配信したコンテンツを再配信するようなミスも防げます。
MAツールのトラッキング機能で顧客の行動データを集められるので、こちらの軸も利用してターゲットを設定できます。
顧客属性軸
顧客属性軸とは、ペルソナで設定したような、年収や勤めている会社の業種、年代など、顧客属性ごとに分類するものです。またBtoBであれば、業界ごとに分類することもできるでしょう。
例えば、店舗向けツールであれば、飲食店、美容室、治療院などで分類することで、それぞれ最適なコンテンツを配信できます。
以上の3つの軸で、組み合わせながら、ターゲットを設定していきましょう。
配信タイミングの設定
ターゲットの設定ができたら、顧客にアプローチする配信タイミングを設定しましょう。
ニーズを満たすようなコンテンツを作成しても、タイミングが悪ければコンテンツを見てもらえません。
配信タイミングを決めるポイントは3つです。
時間帯
メールやLINE、SMSなどさまざまな配信方法によって、開封されやすい時間帯を考えて配信しましょう。
ユーザーがメールなどを開封しない時間に配信するだけで、開封率とともに成約率も下がってしまいます。
ユーザーが開封できる時間帯にコンテンツを配信しましょう。
起点行動
資料ダウンロードや料金ページの閲覧など、ユーザーのリアクションによって配信するタイミングを決めましょう。
ユーザーのリアクション直後に配信することで、次のコンテンツを見てもらえる可能性を上げられます。また、ユーザーの離脱を防ぐことも可能です。
ユーザーのリアクションを起点として、コンテンツの配信タイミングを設定してください。
頻度
配信したコンテンツが100%開封されることはほとんどありません。その場合、開封していない方に対して、同じ内容を連続して配信する場合もあります。
その場合、どの頻度でどのようなコンテンツを配信するか考える必要があります。
ターゲットの設定を元に最適な配信頻度を探っていきましょう。
コンテンツの作成
次にターゲットと配信タイミングを設定した上でコンテンツを作成しましょう。コンテンツは、事前に準備したものもあれば、このタイミングで作成するものもあると思います。
必要なコンテンツはフェーズごとに異なります。
ここでは以下の3つの顧客フェーズごとに必要なコンテンツを考えていきましょう。
見込み顧客の場合
見込み顧客に対してのコンテンツは、サービス購入や導入に導けるようなリードナーチャリングできるものが望ましいです。
具体的には、サービス説明資料や、お役立ち資料、他社との料金や性能の比較表、導入事例、お客様の声、サービス導入の流れ、よくある質問、ウェビナーなどがあります。
Webサイトに掲載されているものも多いですが、適切なタイミングでそのページのURLを送信したり、PDFで情報をまとめて送信したりしましょう。
優良顧客の場合
優良顧客に対してのコンテンツは、関係性の維持やさらなる商品販売やサービス利用の継続を目的に作成されます。
具体的には、口コミや紹介、優良顧客向けのコミュニティやイベントへ誘引をしたりします。新たな新規顧客を生み出しつつ、優良顧客の心理的ロイヤリティを高めるコンテンツが望ましいです。
その結果、LTV(顧客生涯価値)を高めていけます。
休眠顧客の場合
休眠顧客に対してのコンテンツは、明確に復活する理由を作る必要があります。
一度は利用したり、興味を持ってくれた顧客なので、強い価値のあるオファーが欠かせません。
具体的には、見込み顧客に与えた以上のインセンティブの割引などをお知らせすることです。ただし、あまりにもインセンティブを与えると、収益が発生しにくくなってしまうので、割引額などは慎重に見極めるべきです。
以上のように顧客フェーズに合わせてコンテンツを作成してください。
配信方法を決める
最後にコンテンツを配信するチャネルを決めましょう。
MAツールにもよりますが、さまざまな方法でコンテンツを配信できます。
ここでは配信方法の種類をオンラインとオフラインに分けて、紹介します。
オンラインチャネル
オンラインのチャネルは、主に以下のとおりです。
- メール
- SMS
- LINE
- Webのプッシュ通知
- アプリのプッシュ通知
MAツールによって利用できる配信方法は異なるので、導入時にしっかり確認しておきましょう。
オフラインチャネル
時と場合によっては、オフラインチャネルで配信が必要な場面もあります。
オフラインのチャネルは、主に以下のとおりです。
- DM
- FAX
- インサイドセールス
オフライン配信は主にMAツールとの連携です。DMが必要な見込み顧客などを抽出して、DMを送りましょう。
MAのシナリオで成果を出すためのポイント
ここまでMAのシナリオ作成手順を紹介してきましたが、さらに成果につなげるためのポイントをまとめました。
どのシナリオから手を付けるべきかも紹介しています。1つずつ紹介します。
シナリオを複雑にしすぎない
シナリオを複雑にしすぎると、シナリオが進むにつれて、特定のアクションに対するユーザーが減ってしまいます。特定のアクションを行うユーザーが少なすぎると、母数が少なすぎてコンバージョンから遠ざかるのです。
そもそも見込み顧客数の少ないBtoBでは、シナリオを複雑にしないことが大切です。複雑にすると、シナリオ作成やメンテナンスのコストが高くなり、効果検証の難易度も上がるといったデメリットが生じます。
まず各顧客フェーズごとに、最低限のシナリオを作るところから始めましょう。
データを元にシナリオを改善する
MAのシナリオは、ブラッシュアップし続けることが必要です。MAツールを使えば、さまざまなデータを収集することができるので、そのデータを元にシナリオを改善しましょう。
特に開封率、クリック率、成約率などが落ちてきたときは、シナリオを見直すタイミングです。
MAシナリオを一度作成したからといってそのままにしないようにしましょう。必ず集まったデータの分析と評価を行い、次回の改善に活かすことが重要です。
定期的にデータを見直せるように、最低でも月次で数値を確認しましょう。
コンテンツの質にこだわる
顧客フェーズに合わせて作成するコンテンツは、質を追い求めましょう。コンテンツの質とは、どれだけ顧客のニーズに応えられているかです。
特にMAのシナリオに設定したコンテンツの質は見逃されがちです。なぜか開封率やクリック率ばかりに注目してしまい、肝心なコンテンツは作成したっきりのパターンがよく見られます。
顧客のニーズをしっかり捉えて、競合他社と似たようなコンテンツにならないように、独自のデータや取り組みなどをコンテンツに反映させましょう。
効果検証を続けて、コンテンツの質にこだわれば、高い成果が出せるようになります。
スタートまたはゴールからシナリオを作成する
MAツールの導入初期は、どこからシナリオを作成するか迷うと思います。その場合、リードジェネレーションなどのスタートか成約などのゴールから作成しましょう。
MAツールの運用方法によって、スタートとゴールはどの位置になるのかは、会社によって変わります。まずは運用目的のおさらいから行いましょう。
また最低限、スタートとゴールを押さえておけば、一貫したシナリオ作成につながります。あくまで目的は、カスタマージャーニーマップをMAのシナリオで実現することです。
MAのシナリオ作成するときは、ぜひ参考にしてください。
メールマーケティングのテクニックを使う
MAのシナリオ作成は、メールマーケティングと非常に似ています。メールの開封率、クリック率、成約率を上げる方法は、LINEやSMSなど別のチャネルで配信する場合にも活かせるでしょう。
特に質の高いコンテンツを作成しても、開封・クリックしてもらわないことには、意味がありません。
メールを活用する目的は、MAツールを利用する目的と似ています。テクニックなども充実しているので、メールマーケティングから学んだものをMAのシナリオに反映させるべきでしょう。
成果を出すために、メールマーケティングのテクニックを身につけましょう。
メールマーケティングとは?効果とやり方、おすすめツールも紹介
MAのシナリオを最適化して売上をアップさせよう
この記事では、MAのシナリオ作成の基本、準備、手順、成果を出すポイントを紹介してきました。
特にMAのシナリオで成果を出すためには、MAのシナリオ作成のために必要なものを準備することが重要です。
なぜなら、MAはマーケティングをオートメーション化するもので、マーケティングにはペルソナやカスタマージャーニーマップなどが欠かせないからです。また、カスタマージャーニーマップを実現したものがMAのシナリオになります。
MAのシナリオを最適化して成果を出すために、まずはカスタマージャーニーマップをきちんと作り込むことが重要です。もしそこまできちんと作り込めているのなら、顧客フェーズごとにシナリオを作成してみることです。ぜひ実践してみてください。