あらゆる領域でIT化が進み、手作業で行っていたものが自動化されつつあります。企業の営業活動やマーケティングの分野も例外ではありません。営業やマーケティングでそれを実現するのが、MA(マーケティングオートメーション)ツールです。
今まで定型的な業務は、担当者が日常業務として処理してきましたが、それでは常に人手を要します。ルーティンワークを自動化するMAツールにより、コストと時間が削減できます。
また、デジタル化によって取得可能になった膨大なデータを駆使した処理は、MAツールなしでは捌き切れません。MAツールの利用によって、人的負担を減らすとともに営業活動の効率を高めることもでき、他にもさまざまなメリットがあります。
この記事では、MAツールの主要な機能や実現できること、導入することで得られるメリット、実際の活用方法などを詳しく解説します。
MAツールとは?
MAツールとは、マーケティングや営業活動の自動化を実現するツールのことです。新規顧客を獲得したり、見込み客を育成して商談に結びつけたりなどのマーケティング施策を効率化できます。
見込み客や顧客に対して、以下のようなことができます。
- 広告や自社WEBサイトと連携し、潜在顧客のデータを集めて見込み客を選りすぐる
- 見込み客に定期的に情報を提供し、商談の機会を作る
- 顧客に継続して自社商品やサービスについての情報を送る
- 顧客の行動に合わせてカスタマーサポートを申し出る
このような一連の営業活動を自動化することで、手作業による連絡漏れを防ぎ、デジタル特有のリアルタイム性を活かせます。見込み客や顧客との関係性を築いて、追加販売や利益の最大化を目指します。また、これらの業務に携わっている人手を削減して、人件費の削減や適切なリソース配分を可能にします。
細分化するニーズへの対応に対応することは、すでに人力では難しくなっています。膨大な情報を処理して、適切なタイミングで効果的にパーソナライズされた情報を配信するためには、システム化されたMAツールが必須とも言えます。
MAツールを導入する企業は増えています。そのため、MAツールのバリエーションも幅広くなりました。その中で自社のニーズにあったものを選定するためにも、MAツールについて理解しておくことが必要です。
【2024年】おすすめMAツールを比較!選び方や料金も紹介
MAツールの主要機能・できること
まずは、MAツールの主要機能やできることを紹介します。自社の業務に当てはめて想定してください。
マーケティング業務の自動化
MAツールはマーケティング業務を自動化するためのものです。主にリードナーチャリング(見込み客の育成)と、リードクオリフィケーション(有望な見込み客の選別)を行う機能が充実しています。以下のように、見込み顧客を育てていく機能です。
①見込み客の情報を蓄積する
②有望な見込み客を選別する
③有望見込み顧客を育成する
④商品やサービスを利用してもらう
ビジネスでは接点を持った相手が、すべて顧客になってくれるわけではありません。BtoBの分野では、展示会やセミナーで獲得した見込み客のうち、商談につながるのは15%程度と言われています。
BtoCのECでは、ECサイトにアクセスしてきた人のうち、実際に商品を購入するのは1〜5%程です。そのため、より可能性の高い見込み客を選別したり、継続的にアプローチを行うことが重要になります。
それらのマーケティング業務を自動化して人的コストを下げつつ、正確なデータ処理でコンバージョン率も向上させられるのが、MAツールです。ここからは、より具体的な機能についてご説明します。
リード管理
リードとは見込み客を指します。つまり、リード管理とは見込み客の情報を集めて一元管理する機能です。リード情報は、自社サイト、展示会、セミナーなど、さまざまな場面で獲得できます。それぞれの機会に得られる情報はまちまちです。企業名、氏名、役職、メールアドレスなどは、名刺交換で得られます。
また、対面することで、性別、年齢、業務の領域などの属性情報も得られます。会話する機会があれば、趣味や好み、業務上の課題などの個人的な情報もわかることがあります。
これらの情報がバラバラに管理されていたり、営業担当メンバーが個人的に収集している状態では、効率化ができません。そこで、MAツールで一元管理して、情報の統合と共有を実現します。
この情報統合作業を「名寄せ」と言うこともあります。MAツールを使えば、複数のソースからインプットしたデータを自動で名寄せして、1人の見込み客情報として見られるようにできます。
情報を統合して一元化することで、見込み客の管理が効率的になります。また、営業チーム全員で情報を共有することで、連携した見込み客の育成が可能になります。
スコアリング
スコアリングとは、見込み客それぞれが取った行動に対して、スコアを加算していく機能のことです。例えば、以下のように行動に対するスコアを設定しておきます。
- 自社サイトで商品やサービスの情報ページを見た:2点
- メールアドレスを登録して資料をダウンロードした:10点
- ステップメールを1通開封するごとに:3点
- メールマガジン配信を停止した:-5点
これらのスコアの合計によって、見込み客の関心度を測る手がかりとします。見込み客のスコアによって、実際に商談の機会を持つためのアプローチをすべき相手の優先順位をつけることができます。また、関心が高まっていない見込み客に商談というハードルの高いアプローチをして、態度を硬化されるリスクを避けることもできます。
キャンペーン管理
MAツールを使えば、さまざまな条件で絞った見込み客だけを対象にした、多くのキャンペーンを同時に運用できます。例えば、以下のような条件とオファーの組み合わせが考えられます。
- メールアドレスを登録して資料をダウンロードしたユーザーに対して、ステップメールを送信する
- スコアが30を超えたユーザーが自社サイトの価格ページにアクセスしたら、自動的に割引オファーを表示する
- 商品ページを離脱しようとしたら、チャットでの問い合わせに誘導する
- ショッピングカートに商品がある状態で離脱した人に、リマインドメールを送信する
複雑な条件で絞り込んだユーザーごとに別々のアプローチするのは、手動でも不可能ではありませんが、非常に煩雑な作業が発生します。また、WEBサイト上で自動的に表示を切り替えることは、手動ではできません。
メールマーケティング
メールマガジンの配信は、多くの企業が行なっているリード育成方法です。しかし手作業では、メーリングリストにあるすべての見込み客に対して同一のメールを送るか、購入・未購入で分ける程度のセグメント化が一般的です。
MAツールを使うことで、さらに細かいセグメント設定が可能です。見込み客の属性や行動をキーにして、その人に適したメールを配信することができます。例えば、以下のようなメールが考えられます。
- メールアドレスを登録したばかりの見込み客に対しては、自社の紹介や、商品やサービスの詳細説明
- 一連のステップメールが終了した人に対しては、クーポンやオファー
- 購入者や利用者に対しては、利用している商品やサービスに関するイベント情報
- 資料をダウンロードした人に、その感想を求め、商談を進める
メールマガジンは一般的な手法なので、ほとんどの人が毎日たくさんのメールを受信しているはずです。その中で開封して読んでもらうためには、パーソナライズされた内容のメールが必要なので、MAツールの利用は効果的です。
また、メールの到達率、開封率、CTRなどの効果測定も可能です。ひとつのセグメントに複数パターンのメールを送り分けて、どちらが効果が高かったかを測定するA/Bテスト機能もあります。これらの機能を活用して、メールマーケティングの精度を高め、効果を向上させることが可能です。
コンテンツマーケティングのメルマガ活用!メルマガのコツを解説
社内アラート
社内アラート機能とは、見込み客があらかじめ設定していた行動を取った際に、営業担当にアラートを送信するものです。一般的にはメールが使われていますが、より即時性の高いslackやLINEを使えるMAツールもあります。
例えば、資料をダウンロードした人がいれば、すぐに電話でアプローチできます。タイミングを逃さずに営業担当が接触できるので、話せる確率が高まります。ダウンロードしたばかりの資料を見ながら追加の説明をしたり、感想を聞いたりすることが可能です。
また、以前資料をダウンロードした人が、しばらく時間を置いてから再び自社サイトを訪れたら、本格的に導入を検討し出した合図かもしれません。見込み客の行動をリアルタイムで取得することで、商談や成約といった次の段階に引き上げるチャンスを的確に掴むことができるのです。
自社サイトのパーソナライズ
MAツールでは、ユーザーの行動や属性によって、WEBサイトのコンテンツを出し分けることもできます。その人に見てほしいコンテンツを表示することができるので、興味を惹ける可能性が高まります。
また、見込み客の行動履歴やスコアによって、読んでほしい資料のダウンロードページへ誘導したり、商談のオファーをしたりといった、次の段階への育成も可能です。
このWEB広告から自社サイトへ流入したユーザーにはこのコンテンツを表示する、メールマガジンで提示した内容の続きをWEBで表示するなど、コミュニケーションのシナリオ設定もできます。
まだメールアドレスの登録が済んでいない、名寄せもできない匿名ユーザーであっても、クッキーの利用によってパーソナライズできるMAツールもあります。パーソナライズ機能によって、リードナーチャリンクの促進や、CVRの向上、関係性の強化などが期待できます。
ランディングページやフォームの作成支援
MAツールには、ランディングページやフォームを簡単に作成・修正する機能があります。
ランディングページに含まれている要素を省略・追加したり、順番を入れ替えたりするだけでも、滞在時間やCVRは改善できます。
フォームに関しても同様です。入力項目やエラー条件の設定を調整することで、入力が面倒だったり、入力形式エラーの理由が理解できなかったりして離脱してしまう人を減らすことができます。
本格的なランディングページの制作時には、デザイナーやコーダーなどの複数のメンバーが関わります。しかしその修正や、簡単なものの作成ならば、マーケティング担当者が1人で行う方がスピーディーでコストもかかりません。より効率的な運用や、素早い改善を行うために、MAツールに備わっている機能です。
CRM・SFAツールとの統合
CRM(Customer Relationship Management)は、日本語では「顧客関係管理」とも言われます。顧客情報を一元管理して、各顧客に最適なアプローチを行い、関係性を築くことを通して、利益の向上を目指す考え方です。
SFA(Sales Force Automation)は、「営業支援システム」とも言われます。営業担当が見込み客に接触し、商談を行い、受注に至るまでの状況を可視化し、詳細に管理しサポートする手法やシステムです。
どちらもMAツールと要素、目的が重なっている部分が多くあるため、互いに連携し、統合した方がより効果が高まります。MAツールよりも先にSFAツールが導入されていたり、営業部門とカスタマサポートでは、使用しているCRMツールが異なっていたりすることもあるでしょう。
その場合には、各ツール間でデータを共有し、アウトプットも連携できるよう設計されているものを選びましょう。連携できるツールはMAツールによって異なりますので、導入時に相性を確認する必要があります。
APIとの連携
API(Application Programming Interface)とは、あるソフトウェアやシステムと、別のソフトウェアやシステムを連携させるためのプログラムのことです。
MAツールの中には、APIを使って他社のソフトウェアやシステムと連携させられるものもあります。この機能によって、異なるプラットフォーム間でも情報共有が可能です。
例えば、以下のようなことが可能です。
- 自社ですでに稼働している基幹システムと連携して、MAツールにデータをインポートする
- ECモールの注文情報とMAツールの顧客情報を連動させる
- 特定の行動を取った見込み客の情報を、紙媒体のDMを発送する業者に自動でエクスポートする
APIを活用することで、MAツールだけに限らず、幅広い手法を含めたマーケティング施作を実施・効率化することが可能です。
レポーティング
レポーティングとは、MAツールを使って実施したマーケティング施策の結果を計測し、効果測定をレポートにまとめてアウトプットする機能です。
例えば、以下のような項目がレポート可能です。
- メール配信数、開封率、クリック率
- ランディングページのCVR
- マーケティング施策ごとの見込み客獲得数、そこからのCV数
- 見込み客数、スコアや段階ごとの人数
従来は、メールマガジン配信システムやGoogleアナリティクス、自社の売り上げ管理システムなど、複数のツールから数値を抜き出して集計する必要がありました。MAツールが自動的に収集して可視化してくれます。
マーケティング施策は実施して終了となるものはほとんどなく、結果を計測して改善するPDCAサイクルを回すことが必要です。MAツールを導入することで、データの集計やレポート作成にかかる労力を削減できますので、改善施策により多くの時間を使えるようになります。
MAツールが重要な理由や必要性
ここまでMAツールでできることを説明してきました。では、なぜ今MAツールが必要とされているのでしょうか。ここでは、MAツールが重要な理由や必要性を紹介します。
営業スタイルの変化
まず、営業スタイルが変化したことが挙げられます。大局的には、アウトバウンドからインバウンドへの変化です。
アウトバウンド
インターネットが普及する以前の営業スタイルは、主にアウトバウンドでした。BtoCなら企業側から、BtoBならサービス提供側から、潜在顧客にアプローチしていく形です。テレアポや飛び込み営業などを繰り返し、見込み客を見つけ出し、その後も頻繁にコンタクトを取り、商談へとつなげていました。
企業から外へ営業を行う形なので、アウトバウンドと呼ばれます。今でも行われている営業手法ですが、非効率なやり方という認識になりつつあります。
インバウンド
インターネット普及後は、誰でも情報へのアクセスが簡単になったため、消費者や利用者が自ら情報収集するようになりました。そのため企業側もインターネット上に自社の情報を公開して、潜在顧客や見込み客に見つけてもらうことを重視するようになりました。
利用者の方から企業側にアクセスしてくる形なので、インバウンドと呼ばれます。より多くの潜在顧客に自社の情報に触れてもらい、その中から最大の見込み客を得るために、MAツールが有効に機能している必要があり、重視されています。
顧客の購買プロセスの変化
営業スタイルの変化は、顧客の購買プロセスが変化したことと一体であるとも言えます。
インターネット普及後は、顧客側も受け身で営業されるだけでなく、自ら積極的に情報収集するようになりました。必要な情報を集めて比較検討した上で、意思決定の最終段階に近くなってから、実際にベンダーを読んで直接話を聞くように変わりました。そのため、ベンダーにとっては接触機会が減っています。
購買プロセスがトップダウンからボトムアップへ変化したことも重要です。従来は管理職がキーマンとなり、導入するサービスを決定することが多くありました。そのため、営業担当がキーマンとの関係性を築くことが重視されました。
しかし、現在では現場の担当者が導入の意思決定に大きく関わります。日常業務も多く抱えていることに加えて、ネットリテラシーも高い世代のため、効率良く情報を提供してくれる相手を好む傾向があります。
また、キーマンの独断ではなく複数の参加者の合議で意思決定がなされるので、営業担当も複数の相手に適切な情報を提供しなければなりません。
これらの変化から、幅広い情報を多くの接点で、見込み客に提供する重要性が高まっています。営業担当者が手作業で処理できる範囲を超えるため、MAツールを導入する必要性が認識されてきています。
ログデータの取得や分析技術の向上
営業担当者が手作業で行う営業の限界は、実はMAツールが普及する以前から発生していました。潜在顧客に対するテレアポや、飛び込み営業の結果は共有されることなく、各営業担当者が持つ属人的なデータとして埋もれてしまっていました。その結果、多くの機会を逃していたのです。
それらの情報をすべて統合して、一括管理することをMAツールが可能にしました。営業チームとしてより効果的に動ける体制を作れ、コストをかけて取得した情報をより効率的に活用できるようになりました。
この機能は、インターネット上での営業活動をはじめとするデジタルデータの領域ではさらに顕著になります。ログデータを取得して分析する技術が向上したことで、以下の内容をすべて把握できるようになりました。
- 見込み客がどのメールを読んだか
- どの資料をダウンロードしたか
- どの製品やサービスに興味を持っているか
見込み客へのアプローチを適切に行うことで、営業担当者の手間は減り、成果は出やすくなるため、MAツールの需要が急増しています。
顧客の情報リテラシーの向上
かつての営業スタイルでは、営業担当者が見込み客を探し出し、その課題に対して解決策を提示し、商談を行うという流れが一般的でした。
インターネットの普及以前、見込み客は現在のように多くの情報を得ることができませんでした。営業担当から得られる情報で、意思決定をしていました。つまり、サービスを提供する側と受ける側で、持っている情報量に大きな差があったのです。
今ではインターネットで情報を得るのは、当然のことです。ビジネスに関わる世代も、ほとんどが高い情報リテラシーを持つようになりました。そのため、サービスの導入や商品の購入の検討段階においても、営業担当が一方的に情報を提供するという関係ではありません。顧客にとって役立つ情報を、的確に伝えることが必要です。
MAツールを使うことで、見込み客のニーズや課題を知ることができます。自社の商品やサービスを認知していない段階から、見込み客との接触を逃さずに機会を生み出せます。
MAツール導入のメリット・期待できる効果
MAツールを活用することで得られるメリットや、期待できる効果を説明します。
人為的なミスを減らせる
MAツールを使えば、営業に関するあらゆるデータを収集して一元管理できるようになります。それによって、営業担当者間での情報連携不足や、手作業でのデータ集計の誤りによるミスを減らすことができます。
MAツールを導入せず、手作業での処理が多い場合に起こりやすいミスには、以下のようなものがあります。
- 複数の営業担当者が、別々に同一の見込み客に対してアプローチしてしまう
- すでに断られた見込み客に対して、短期間で再度コンタクトを取ってしまう
- 新製品を既存顧客に紹介する際に、誤った対象を候補にいれてしまう
いずれも顧客の自社に対する心象を悪くしてしまい、成約に至る可能性を減らしてしまうミスです。また、逆にアプローチすべき対象を取りこぼしてしまうミスも起こり得ます。これらのミスを減らすことで、無駄な営業活動を減らし、成約率も向上させられます。
人件費削減につながる
営業活動を行うためには、多くのデータを記録・蓄積・処理する必要も生じます。
- 潜在顧客リストから見込み客を洗い出す
- 見込み客に提供した資料やメルマガ配信内容を記録・集計する
- 見込み客に提供した見積もりの内容を保管する
- 顧客の自社商品やサービスの利用状況を記録する
これらの作業を別々の担当者が、別々のツールを使って処理している企業は多いでしょう。しかし、それでは情報の共有ができません。
または情報を共有管理するために、情報の入力・管理をする専任の担当者を置いているかもしれません。その場合、余計な工数や人件費がかかっているとも考えられます。
これらの情報は、MAツールを導入すれば一元管理できるようになります。それまで個々のツールに入力していたものを、MAツールに連携させれば良いのです。情報の照らし合わせや、二重に入力する手間がなくなり、その作業に費やしていた人件費も削減できます。
本質的なマーケティング活動に専念できる
MAツールで、データの連携・抽出・集計といった作業を自動化することができます。アプローチするリストの作成やパフォーマンス分析などは、営業担当者にとっては余計な作業です。それ自体が成果や売上を生むものではありません。
MAツールを使ってこれらに費やす工数を削減できれば、その節約できた時間で本質的なマーケティング活動を行うことができます。さらに多くの見込み客を見つける方法や、見込み客との関係をより強く構築する方法など、マーケティング本来の仕事に取り組む時間を増やせるのです。
また、営業担当者がマーケターとしての視点や知識を強化することにもつながります。特に営業担当者が足りない、マーケティング専任の担当者を置くことができないといった、人手不足に悩む企業にとって有益です。
営業活動が効率的になる
営業活動には多岐にわたる業務が含まれています。その中には、単純なルーティンワークも多く存在します。MAツールを使って自動化できる業務が増やすほど、営業活動全体の効率が向上します。
毎日の営業活動の中で自動化できる代表的な業務には、以下のようなものがあります。
- リストの潜在顧客にメールを送信し、開封してくれた人を見込み客として抽出する
- 自社WEBサイトで資料をダウンロードしてくれた人にステップメールを配信する
- 既存顧客リストの属性を分類して、対象となった相手に新サービスを紹介するメールを送る
- 問い合わせの中から有望な見込み客を洗い出し、アポイントを取るための電話をかける
これらの中で、営業担当が集中して取り組みたい部分は限られています。メールの中身のブラッシュアップや、実際に見込み客へ電話をかけることです。その他はMAツールで自動化した方が、素早く正確に処理されるでしょう。MAツールを使うことで、営業担当の負担を減らし、効率的な営業活動が可能になります。
見込み客を資産にできる
従来の営業活動では、多くの見込み客の情報は使い捨てにされていました。潜在顧客のリストに対して営業担当者がアプローチを行い、反応があったら見込み客となります。
この後、実際に成約して顧客にならなければ、見込み客としての情報は残りませんでした。潜在顧客と顧客のリストは継続して活用されても、見込み客リストはその都度作成されるものだったのです。
しかし、MAツールは情報を統合して、見込み客の情報も蓄積していくことができます。どの商品やサービスに対して、どの程度の興味を持ったかの記録と、その過程で得られた属性情報が残ります。すぐには顧客とならなくても、見込み客のリストとして継続利用できます。
このリストに対しては、さらに育成を継続したり、新しいサービスのターゲットになりうる属性の見込み客を抽出したりといったことが可能です。つまり、売上を生むことができる、資産として見込み客を蓄えることができるのです。
案件率・商談率の向上が期待できる
従来から営業活動では、利用できるさまざまなチャネルを駆使して見込み客を獲得してきました。広告出稿や、展示会への出展、セミナーの開催、SEO対策、コンテンツマーケティングなどが挙げられます。これは今でも変わりません。
ただ、従来はこれらの見込み客情報を人手を使って管理していました。そのため顧客の細かい属性や、接触状況まで常時付加していくことは不可能だったので、経験や勘に頼った営業活動となっていました。
MAツールを用いることで、見込み客を詳細に管理することができます。見込み客を獲得したチャネルや、検討段階なども含めたデータを使えば、漏れなくダブりなく、適切なタイミングでアプローチができます。
かつてはデータ処理が遅れて接触すべきタイミングを逃していたり、複数の営業担当が過剰に頻繁に接触して拒否されるものもありました。しかし、MAツールを使うことで、これまで育成できていなかった、見込み客への的確なアプローチができるようになりました。その結果、案件率や商談率を向上させられます。
見込み客と継続的にコミュニケーションが図れる
MAツールの強みは情報の管理とアプローチの自動化です。見込み客も一元管理して、条件に応じて一斉にメール配信や、電話連絡リストの作成ができます。抽出する条件とアプローチの方法には、以下のようなものがあります。
- 資料をダウンロードした見込み客に対して、一定のステップメールを連続配信する
- メールマガジンの新商品に関するページへのリンクURLをクリックした人に、詳細情報を送る
- 問い合わせフォームにアクセスした見込み客に対して、電話連絡するよう担当者に通知する
ターゲットとする条件に合った見込み客にメールを送る、特定の行動を取った直後にアプローチする、という方法が実現できます。
手動で行う場合にはターゲットの設定も難しく、見込み客リスト全員に同一のメールを送ることが多くなってしまいます。また、特定の行動を取った人をリアルタイムで抽出することは不可能です。MAツールを使うことで、見込み客一人一人に合った方法で継続してコミュニケーションを図れます。
MAツールの活用方法
実際にMAツールでは、具体的にどのようなことができるのでしょうか。MAツールの活用方法を段階別に4つ説明します。
見込み客の創出(リードジェネレーション)
見込み客の創出は営業活動の第一段階です。見込み客の創出とは、自社の商品やサービスをまだ認知していない層を含む潜在顧客の中から、興味や関心を持ってもらえる見込み客を見つけることです。
具体的な方法としては、大きくオンラインとオフラインの2種類に分けられます。オンラインではWEB広告出稿、WEBサイト運営とSEO対策などがあります。オフラインでは展示会への出店やセミナー開催などがあります。また、テレアポや飛び込み営業といった従来通りの方法を取る企業もまだ多く残っています。
これらの方法で見込み客を獲得したら、MAツールに情報を登録して管理を開始します。オンラインでの見込み客の創出では、MAツールと連携させることで自動的に情報を吸い出して登録できるものもあります。
オンライン展示会(Web展示会)のメリットデメリットや成功ポイントを解説
見込み客の育成(リードナーチャリング)
見込み客を獲得しても、当初は自社の商品やサービスへの関心はまだ薄く、すぐに成約や商談に結びつくことはほとんどありません。そこで、見込み客を育成する必要があります。BtoBでは導入までの過程が長くなりがちなので、見込み客の育成は特に重要です。
MAツールを活用して、見込み客のニーズに合わせて必要とされている情報を適切なタイミングで提供します。以下のような段階を経て、育成していくことが多くなっています。
①見込み客がアクセスしたコンテンツやダウンロードした資料からニーズを読み取り、その課題を鮮明にするための情報を提供する
②その課題を解決する方法を解説したホワイトペーパーを提供し、併せて自社のサービスが課題解決に有効なことを説明する
③自社サービスの導入事例を紹介し、他社が同様の課題を解決できたことを説明する
段階を踏んで順序よくコンタクトすることで、見込み客も情報を理解しやすくなります。このように徐々に関係性を構築していくのが、見込み客の育成です。
見込み客の選別(リードクオリフィケーション)
見込み客を育成して、自社の商品やサービスへの関心が高まったと判断されたら、実際に商談するためのアプローチを開始します。確度の高い見込み客をピックアップすることを、見込み客の選別と言います。
MAツールでは、この工程も自動化できます。見込み客の行動履歴によってスコアをつけて、一定数以上になったら選別する方法が一般的です。
- メールマガジンの開封:5点
- ホワイトペーパーのダウンロード:10点
- 自社のサービスを紹介する資料のダウンロード:10点
- 展示会で自社ブースを訪問:20点
上記のようにスコアリングして、「30点を超えたら営業担当から商談のアポイントを取るための電話をかける」のように設定しておきます。
MAツールで見込み客を一元管理できることを生かした方法であり、すべての営業担当でアプローチする基準を統一することも利点です。
ホワイトペーパーとは?作り方と目的、デザインサンプル事例
【BtoB】ホワイトペーパーのマーケティング事例7選!サンプル事例ご紹介
見込み客の管理(リード管理)
見込み客の管理とは、見込み客の情報をメンテナンスして最新に保ち、正確で使いやすいデータベースを構築し、全社で活用する体制を整えることです。
展示会やセミナーで集めた名刺をデータ化してMAツールに登録するといった、オフラインからオンラインへの情報変換も行います。
また、名刺に記載された社名から調べられる、企業規模や業種などの情報も付け加えておきます。名刺交換時の会話で分かったニーズや、決裁権を持つ人か否かといった情報も重要です。
これらの情報は自社内の各部門へも共有します。営業担当がアプローチする前に目を通せば、提案方法などの手がかりが得られるでしょう。今まで埋もれていた情報を活用するきっかけになることもあります。情報という資産を蓄えるために、見込み客の管理は大切です。
失敗しない!MAツール導入時の注意点
ここまでMAツールの機能や活用方法について見てきました。では、実際に導入する際に注意すべき点を確認しておきましょう。
自社のマーケティングについて整理する
MAツールの導入についてまず注意しておくべきなのは、MAツールはマーケティング業務のサポートをするものであることです。一からマーケティング戦略を組み立ててくれるものではありません。
複雑化して手作業では追い切れなくなった営業活動を統合して自動化できるものの、その営業シナリオの設定は導入時に行う必要があります。そのためには、自社のマーケティングについて整理して、戦略を組み立てておかなければなりません。
見込み客の獲得・育成・商談への誘導までに、現在行っている施策や得られている成果を改めて把握しておきましょう。顧客のペルソナを作成して、カスタマージャーニーマップを設計すべきです。自社のマーケティングについて整理しておかなければ、MAツールを導入しても使いこなせなず、思うような成果が得られないでしょう。
解決したい課題や目的を明確にする
自社のマーケティングについて整理したら、解決したい課題が見えてくるでしょう。さらに、MAツールを使えば今よりも緻密に行えるようになる領域や、これまで手が回らずできなかった業務も見つかるはずです。
それらの課題を整理して、MAツールを導入する目的を明確化します。また、運用後の目標も設定しておきます。例えば、見込み客の商談率を20%向上させる、といったものが代表的です。
MAツールを導入することが目的になってしまわないように、現状取得して活用しているデータの種類や量、自動化したい業務内容などを確認しておきましょう。MAツールと連携したい、すでに運用しているシステムがあれば、それも考慮しなければなりません。
その上で、効果を確認して改善していくPDCAサイクルまで、あらかじめ考えておきます。
MAツールを使う目的を明確にしてから、その目的を達成できるかという視点でツールを選定しましょう。
自社のビジネスに合ったMAツールを選ぶ
一口にMAツールといっても多くの製品があります。幅広く用意されている中から、自社のビジネスにあったものを選ぶ必要があります。MAツールは大きく分けると、BtoB向けのツールとBtoC向けのツールがあります。
BtoBでは、集めた見込み客を育成し、有望な見込み顧客を見つけるためにMAツールが使われることが多くなっています。有望な見込み客を営業担当者に渡し、商談につなげる役割を担います。そのため、多くの見込み客をセグメントしてアプローチできる機能や、見込み客の確度の高さを数値化するスコアリング機能が重視される傾向があります。
BtoCでは、潜在顧客や見込み客それぞれの興味や関心を探り、それに合わせた商品紹介やアプローチを行うことが多くなっています。そのため、マーケティング施策それぞれの効果測定ができる機能が重視される傾向があります。
例えばメールマガジンでは、配信ごとに以下の項目を調整して効果の違いを比較し、改善していきます。
- メールのタイトル
- メール本文の内容や長さ
- メール本文中のリンクボタンの位置や色
- 配信時間
- メールの差出人の名前
比較する効果には、以下の項目があります。
- メール到達率
- メール開封率
- メールからWEBサイトに遷移した人数
- メールからのアクセスのCVR
自社のビジネスにそぐわないMAツールを導入してしまわないように、機能を確認し、使い方までイメージしてから導入しましょう。
こちらの記事ではMAツールの機能や料金をVtoB・BtoC別で紹介されています。
各サービスの口コミの確認や、資料の一括ダウンロードもできるので参考にしてみてください。
【2022年】MAツールの機能・料金を比較!BtoB・BtoC別のおすすめサービス|BOXIL
あらかじめリードを確保しておく
MAツールは、見込み客を育成して商談につなげるまでを担います。営業活動を自動化・細分化して、より効率的な見込み客の育成を行うことが目的です。そのため、MAツールの効果を引き出すには、ある程度の見込み客の数は必要です。
まだ見込み客のリストが少なく営業担当者が把握できている間は、手作業でもパーソナライズされたアプローチが可能でしょう。そのため、自動化することで営業担当の負担が減る効果が出せません。また、見込み客を細かくセグメント分けするほどの母数がいなければ、MAツールの機能を活用できません。その段階ではMAツールを導入しても、効果は低いと言えます。
MAツールを最大限活用するためには、見込み客の数が必要です。もし少なければ、まずは潜在顧客から見込み客を獲得することを優先すべきでしょう。
社内の人的リソースを確保する
MAツールとその役割はまだ新しいため、社内での担当者が曖昧になってしまうことがあります。マーケティング部門が扱うのか、営業担当の業務に含めるのか、専任の担当者を置くのか、組織によって誰に任せるのか難しいところです。
それ以前に、人的リソースに余裕がない企業も多いでしょう。日本企業の多くには明確なマーケティング部門がないとも言われています。もちろん専任のマーケティング担当者を置く余裕がない企業もあります。そのような状況で、デジタルツールに慣れていない営業担当者にMAツールの運用を任せようとしても、導入のハードルは高くなってしまいます。
MAツールを活用して営業効率を高めるための人材は、インサイドセールスやセールスサポートなどと呼ばれることが増えてきました。この役割を担う人的リソースの確保も忘れないよう注意しなければなりません。
使いこなせるまでに時間がかかる可能性がある
MAツールを導入しても、新しいデジタルツールなので、使いこなせるようになるまでには時間が必要です。また、見込み客情報の一元化や、顧客へのアプローチのパーソナライズなど、考え方自体も新しい要素があります。それらを理解してメンバーにも浸透させるのにも、手間取る場合があります。
さらに、時間をかけて見込み客を育成するのが基本的な考え方なので、商談や成約といった結果が出るのにも時間がかかる傾向があります。会社として体制を整えることに加えて、運用担当者のリソースやリテラシーも把握して、結果が出るまで根気強く運用しなければなりません。
【2024年】おすすめMAツールを比較!選び方や料金も紹介
MAツールのまとめ
MAツールは、企業がマーケティングや営業活動をする上で非常に有用です。特に見込み客を獲得してから、そのニーズや段階に合わせたアプローチをして育成し、商談や成約につなげる過程で力を発揮します。
手作業では不可能なほどにターゲットを細分化したアプローチや、リアルタイムで見込み客の行動を検知した適切なタイミングでのアプローチが可能となります。従来の手法では取りこぼしていた見込み客も育成できるケースが生まれます。
また、従来はそもそも見込み客として見られていなかったリストからも成果を得られます。これらにより営業効率を向上させることができます。
また、MAツールを使いこなせるようになれば、従来手作業で処理していたものを自動化することができます。手動での作業を大幅に減らすことで、手作業によって生まれるミスや、人的コストの削減にもつながります。
ただし、MAツールの導入には注意点もたくさんあります。自社のビジネスやマーケティングを把握して、適したMAツールを選ばなければなりません。また、MAツールの効果を最大限引き出すための準備も必要です。
正しく理解して使えば大きな効果を得られるMAツールですので、導入と活用を視野に入れることをおすすめします。