日本のEC市場規模は勢いよく成長しています。経済産業省のEC市場調査レポートによると、2019年時点の日本国内の個人消費者向け物販分野のEC市場規模は10兆円を超えています。過去5年間で約1.5倍に成長したこととなります。
EC市場の拡大は、企業にとってのECサイトの重要性を改めて認識させることにもなりました。さらに新型コロナウィルスの流行によって、実店舗での売上が落ちてしまう企業が増えたことで、ECサイトの重要性はより一層高まっています。今やECサイトは販売チャネルとして必須のものと言えます。
ただ多くの企業にとって、ECサイトはいまだに新しいチャネルでもあります。ECサイトの構築や運営について豊富な経験を持った人材は多くありません。ECサイト担当者は、様々な悩みを抱えながら業務をこなしていることが多いようです。
ECサイトを構築した後に多く見られる悩みのひとつが、広告などへの予算の投下によって集客もできるようになったものの、それでも売上が思うように伸びないというものです。ECサイトにアクセスしてくれたお客様が、買い物をしてくれないのです。
「CVRが向上しない」という問題は無視してはいけません。同じように、お金をかけて集客をしても、CVRが低ければ売上は伸びず、広告費が無駄になってしまいます。
とはいえ、CVRを改善したくてもどうすれば良いかわからないというEC担当者も少なくありません。ECサイトごとに全体を見直して問題点を洗い出す必要があるためです。
この記事では、CVRとは何かという説明から、CVRが低くなってしまう要因、具体的な改善施策と事例までご紹介いたします。
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目次
CVR(コンバージョン率)とは
CVRとは、Conversion Rateの略です。「コンバージョン率」あるいは「コンバージョンレート」と言われることが多くなっています。
コンバージョン率は、そのWEBサイトにアクセスしたユーザーのうち、何パーセントが「最終行動(ゴール)」に至ったかを表す数値です。
最終行動(ゴール)は、コンバージョンとも言います。そのため、最終行動を取った人の割合がコンバージョン率、CVRとなります。WEBサイトの目的や運営方針によって異なりますが、WEBサイトがユーザーに取ってもらいたい行動をコンバージョンと言います。
ECサイトであれば商品を購入すること、サブスク型の動画配信サイトであれば会員登録をすること、保険のWEBサイトならば資料請求すること、など様々です。このため、ECサイトではCVRを購入率と言うこともあります。
ECサイトの売上はこの式で表せます。
売上 = ECサイトを訪れた人数 × CVR
1000円の商品を売っているECサイトの場合、
- 100人がECサイトを訪れて、1%が購入したら、購入者は1人なので、売上は1000円です。
- 100人がECサイトを訪れて、10%が購入したら、購入者は10人なので、売上は10000円になります。
ECサイトへの集客人数は変わらなくても、CVRが向上すれば売上を伸ばすことができるのです。そのため、ECサイトの売上を増やすために、集客とともに最重視すべき指標がCVRと言えます。
CVR(コンバージョン率)の計算方法
ECサイトでのCVRの計算方法は、下の式で算出できます。
CVR(%) = コンバージョン数 ÷ ユーザーアクション数 × 100
コンバージョン数とは、ユーザーが最終行動に至った回数です。ECサイトであれば、通常は商品を購入することを指します。
ユーザーアクション数とは、ユーザーの行動です。WEBサイトのPV数、WEBサイトにアクセスしたユニークユーザー(UU)数などがあります。
1人のユーザーが何度もECサイトを訪れたり、複数のページを回遊した場合には、PV数は大きくなりますので、ECサイトではUU数を使うことが多くなっています。
そのため、ECサイトでは一般的にCVRはこのように算出されます。
CVR(%) = 購入回数 ÷ UU数 × 100
例えば、ある日あるECサイトAに、10000人のユーザーが訪れて、100回の購入があった場合のCVRはこのようになります。
100(回) ÷ 10000(人) × 100 = 1(%)
同じ日に別のECサイトBには、1000人のユーザーが訪れて、50回の購入があった場合のCVRはこのようになります。
50(回) ÷ 1000(人) × 100 = 5(%)
仮に同じ価格の商品を売っていた場合、購入回数だけをみると、ECサイトAの方が100回なので2倍になります。ただし、CVRはECサイトBの方が高くなっています。そのため、効率はECサイトBの方が良いと言えるでしょう。
ECサイトにお客様を呼び込むために、1人当たり10円の広告費が必要ならば、ECサイトAは10万円、ECサイトBは1万円使っていることとなります。その場合、ECサイトAは売上は2倍だけれど、広告費は10倍費やしていることになるわけです。
ECサイトAのように、集客は上手くいっていて、UU数は伸びている。でもCVRが低いという場合には、CVRを向上させる施策を優先して実行べきです。
逆にECサイトBのように、CVRは高いものの、UU数が少ない場合には、まずECサイトにアクセスしてくれるユーザーを増やすための集客施策を優先すべきです。
このように、売上の金額やコンバージョン数だけを見ていると、やるべきことを間違えてしまう場合があります。そのため、CVRを理解することが大切なのです。
CVR(コンバージョンレート)とは?計算式、業界別の平均CVRも解説
Webマーケティングに関わる人にはCVR(コンバージョンレート)は必ず知っておくべき用語です。では、CVRはどう計算されているのか、何%くらいが平均で低い場合はどう改善すればいいのでしょうか?CVRを基本的なところから解説します。
平均CVR(コンバージョン率)はどれくらい?業界別に解説
運営しているECサイトのCVRの算出方法はわかりました。ただ、その数字を見ただけでは、CVRが高いのか低いのかわかりません。
そこで、Adobeの調査によるECサイト全体の業界別平均CVRを参考に、自社ECサイトのCVRが健全かどうか確認しましょう。
https://www.ecmarketing.co.jp/contents/archives/1008 より
【全体】ECサイトの平均CVR
先のグラフの通り、CVRは業界ごとに大きく異なります。これは、業界ごとにユーザーのどのような行動をコンバージョンとするかの考え方が異なるためでもあります。
ECサイトのように「購入」をコンバージョンとする業界もあれば、保険や通信講座などの比較的検討期間の長い商材を扱う業界では「資料請求」がコンバージョンとみなされることもあります。
また、動画配信サービスなどでは、無料会員登録をコンバージョンとすることもあります。
実際にお金を使う必要があるか、個人情報をたくさん入力する必要があるか、メールアドレスなどだけで簡単にできるか、ハードルの高さによってCVRに差が出るのは当然です。
ECサイトの平均CVRは1%〜2%と言われています。商品を探して、他のサイトと比較して、会員登録をして、支払いを行う、という多くの過程があるため、ECサイトのCVRは比較的低くなります。
とはいえ、CVRは各ECの特性や集客の状況、商品単価やジャンルによっても変わります。そのため、平均値との差を見て一喜一憂するのはあまり意味がありません。冷静にECサイトの状況を分析して、CVRの改善施策を継続して行うことが重要です。
【業界別】ECサイトの平均CVR
まずはECサイトのカテゴリー別のCVRを把握しておきましょう。
https://blog.hubspot.jp/conversion-rate-average より
多くのジャンルはECサイトの平均CVRと言われる1%〜2%ほどの範囲になっています。
しかし、美術工芸品(4.01%)、ペットケア(3.53%)、産業用エレクトロニクス(2.70%)では、比較的CVRが高くなっています。これらのジャンルは、専門性が高いこと、ユーザーが他のチャネルでも情報を集める傾向が高いことが影響しているでしょう。
美術工芸品は基本的に一点ものです。そのため、特にファンのついている作家の作品は、いわゆる指名買いが多くなります。買うものがあらかじめ決まっている場合が多く、取り扱っているECサイトも極端に少ないので、CVRは高くなります。
産業用エレクトロニクスも、非常に専門性の高いジャンルです。導入する製品については、ECサイトを訪れる前に、必要な機能や仕様を絞り込んでいることがほとんどです。そのため、実際にECサイトにアクセスしたユーザーのCVRは比較的高くなります。
ペットケアも、ECサイト外で情報を集めてから購入するユーザーの多いジャンルです。また、ペットへの愛情から信頼できる商品を購入する傾向があるので、欲しい商品が決まれば代替品の比較検討をしないジャンルでもあります。この商品が欲しいと決めてからECサイトにアクセスすることが多いので、CVRも高くなります。
逆に平均CVRが低いジャンルは、ベビー・子供用品(0.87%)、飲料食品(1.00%)が目立っています。ベビー・子供用品は、成長する子供に合わせて使うものがほとんどなので、使用期間の短いことが特徴です。
そのため、同じ機能であれば安いものを選ぶ傾向が強まり、多くのECサイトを比較して安いものを買う傾向があります。また、最近ではメルカリなどのフリマアプリで購入する人も増えてきました。これらの理由からCVRの低いジャンルとなっています。
飲料食品は、価格弾力性の高いジャンルです。つまり、安いECサイトを探して購入する人が多いのです。たくさんのECサイトを見てまわり、購入するのは1カ所なので、全体のCVRは低くなります。
ファッション・アパレルECサイトの平均CVR
ファッション・アパレルの平均CVRは4.2%です。ECサイトの中ではCVRが高い業界です。
その理由は指名買いの多さと、リピート率の高さです。ファッション・アパレルの商品を知る機会は複数ありますが、多いのはテレビなどのマスメディア、雑誌などのメディア、そして近年増えているのがインスタグラムなどのSNSです。
商品を知って欲しくなった人が、その商品名からECサイトを探して訪れますので、CVRは高くなります。文字を主に使用するWEB検索では、同じようなデザインの服を探しにくいことも、指名買いが増える要因です。
そして、ファッション・アパレルは、気に入ったブランドや店舗のものを買い続ける傾向が強いジャンルでもあります。アクセサリーが欲しい時はまずこのブランドのECサイトをチェックする、服が欲しい時はまずこのセレクトショップのECサイトをチェックする、と決まっている人は少なくありません。リピーターが増えると、さらにCVRは高くなります。
家具・インテリアECサイトの平均CVR
家具・インテリアの平均CVRは1.55%と、ECサイトの中でも平均的な数値となっています。これは、同じインテリアジャンルのECサイトの中にも、さまざまな性格のショップがあることを示しているでしょう。それと同時に、ユーザーの購買行動も多様です。
量産品が多いジャンルでは、どのECサイトで購入しても同じ商品が届きます。そのためユーザーは、より安く買えたり便利に買えたりするECサイトを探すことが多くなります。一方、一点ものが多いジャンルや差別化が進んでいるジャンルでは、ユーザーはその商品を購入することを決めてからECサイトへ訪れることが増えます。
インテリアは、その両方を含むジャンルだと言えます。一般的なデザインの量産されているインテリアもあれば、流通量の少ないアンティークものもあり、職人がこだわって造った一点ものの家具もあります。それぞれを分けて見てみるとCVRには差が出ますが、ジャンル全体としては、平均的な数値になります。
このようなジャンルでは、運営しているECサイトや商品の特徴を把握して、セグメントやターゲットを絞って考える必要があります。
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飲料・食品ECサイトの平均CVR
飲料・食品の平均CVRは1.00%です。他のジャンルのECサイトに比べても低い方になっています。
その原因は、代替性の高さ、価格弾力性の高さにあります。
例えば、自宅で飲むためのお茶を購入する場合、どの産地のどのブランドのお茶を買うか決めている人は多くありません。その時々の検索結果によって、あるいはセールを行なっているお茶を探して購入する人が多数です。このように、商品を買うときに同等の品であればどれでも構わないという傾向のあるものを、代替性が高いと言います。
また、あるお茶が複数のECサイトで売られていることもあります。その場合には、最も安く買えるECサイトを利用する人が多くなります。たまたまその日セールをやっていたり、ポイント還元率が高かったりといった理由で、購入するECサイトが変わることも少なくありません。
このように、少しでも価格が変わると売れ行きに大きな影響ができる商品を、価格弾力性が高いと言います。
代替性と価格弾力性、両方が高いため、飲料・食品ECサイトは競争が激しくなりがちです。ユーザーも多くのECサイトを並行して使いますので、CVRは低くなります。
家電ECサイトの平均CVR
家電の平均CVRは1.72%です。ECサイト全体の中でも、平均的な水準と言えます。家電も飲料や食品と同じく、代替性が高く、価格弾力性も高いジャンルです。
しかし、平均CVRは飲料・食品の1.00%に対して、家電は1.72%と高くなっています。その原因は、家電を買う際に想起されるECサイトの数にあると考えられます。
飲料・食品は、ネットスーパーでも、ECモールに出店している小売店からでも、メーカーのECサイトでも購入することができます。
しかし、家電は有名大手量販店のECサイトで購入することがほとんどです。ECモールで購入した場合も、ほとんどは有名大手量販店のECモール店舗からの購入です。家電も飲料・食品も、検索して最も安いECサイトで購入する人が多い傾向は同じです。
しかし、飲料・食品のECサイトが10以上も出てくるのに比べて、家電は5つ程度に収まります。比較検討対象が少ない分だけ、それぞれのECサイトのCVRは上がります。従って、ジャンルとしての平均CVRも高くなるわけです。それだけ淘汰の進んだジャンルだと言うこともできます。
ECサイトのCVR(コンバージョン率)が低い要因
ここまで、ECサイトのジャンル別平均CVRを見てきました。ジャンルが同じでも各ECサイトごとに状況は異なるので絶対的なものではありませんが、これをひとつの目安とすることはできます。
運営しているECサイトのCVRが、各ジャンルの平均CVRよりも低い場合には、その要因が存在するはずです。ここではCVRが低くなってしまう要因としてよく見られる例をご説明します。
コンセプト・デザイン・デバイス環境がターゲットユーザーのニーズとマッチしていない
ECサイトのCVRが低くなる原因は、ECサイト側とユーザー側になんらかのズレが生じていることがほとんどです。まず、ECサイトがユーザーのニーズに合っていない場合があります。これは、ECサイトを構築する際に、ユーザーの目線を意識せずに設計・デザインしてしまうことで起こることが多いものです。
ECサイトのコンセプトとデザインは、企業側が押し付ける形になってしまうとユーザーに受け入れてもらえません。
例えば、もともとリーズナブルでコストパフォーマンスが良いために人気になっていた商品があるとします。しかし、自社ECサイトを構築した際に、高級感にあふれたデザイン性の高いECサイトが作られることがあります。
企業側としてはブランド感を醸成してユーザーのロイヤリティを高めたいという意図があるのですが、ユーザーの持っている商品感とずれてしまいます。
このようなECサイトでは、トップページやカテゴリーページで離脱するユーザーが多くなる傾向があります。ECサイトのイメージが期待に合わなかったり、欲しい商品が見つからなかったりするためです。
また、デザイン性が高すぎて画面遷移ボタンが見つからない場合にも、同様に想定外の離脱が増えます。googleアナリティクスなどの計測ツールを使って、ユーザーの行動を確認してみましょう。一般的なECサイトよりも離脱率が高かったり、滞在時間が短かったりするかもしれません。
また、ユーザーがECサイトにアクセスする際に使用しているデバイスの想定を間違えている場合もあります。例えば、PCでの利用を想定して大きな画面に最適化したECサイトを作ったものの、アクセスの大半はスマホだった場合には、ユーザーの操作性は非常に悪くなってしまいます。
これもgoogleアナリティクスなどの計測ツールを使えば、ECサイトにアクセスしているユーザーの使用デバイスやブラウザなどがわかりますので、確かめることができます。
集客するユーザーがターゲットユーザーとズレている
ECサイトは作っただけではお客様は見にきてくれません。集客施策を行う必要があります。多くのECサイトでは、リスティングなどのWEB広告や、SEO対策を行って、集客人数を増やす努力をしています。
しかし、この際にECサイトのターゲットとなるユーザーとずれているユーザーを集客してしまっていることがあります。この場合、集客したユーザーに向けたECサイトを作れていませんので、やはりCVRは低くなります。
例えば、ロードバイク専門のECサイトを運営している場合、そのターゲットとなるのはロードバイク愛好者や、ロードバイクに興味のある人たちです。値段が高くても、軽くて早い、高性能の自転車を購入してくれる人にECサイトにきてもらう必要があります。
しかし、リスティング広告を通してロードバイクのECサイトにアクセスしてくるユーザーの多くが、いわゆるママチャリや、価格の安い折り畳み自転車を探している人だったら、ロードバイクは購入しません。ECサイト側が集客したいユーザー層と、実際にECサイトにアクセスしているユーザー層がずれてしまっているのです。
WEB広告を出している場合には、その設定とクリックされているキーワードなどを確認してみましょう。ロードバイクの例であれば、「自転車」という幅の広いキーワードが多くクリックされていたり、「自転車 安い」などのターゲットとして適当でないキーワードのクリックが増えているかもしれません。
その場合、自転車は欲しいけれどロードバイクには興味がない人が多く含まれてしまっていることとなります。
また、SEOも同様です。googleアナリティクスのサーチコンソールで検索キーワードを確認して、実際に集客されているユーザー層が的確か見てみましょう。
Googleサーチコンソールとは?使い方と登録方法や設定を解説
Webサイトの集客状況を分析する際にGoogleアナリティクスと同じくらい役立つのがGoogleサーチコンソールです。サーチコンソールへの登録方法やGoogleアナリティクスとの連携方法について、わかりやすく解説します。
離脱しやすいサイト構造設計になっている
ECサイトで買い物をするには、複数のページを移動しなければなりません。トップページや商品ページからECサイトに入ってきて、複数の商品ページを回遊し、買い物カゴを経由して、会員登録を行い、購入手続きをするという、文字にすると長い工程が必要です。
この途中で操作方法がわからなくなると、ユーザーは離脱してしまいます。せっかくコストをかけて集客して、商品も気に入ってもらえても、コンバージョンに繋がらないということも起こってしまいます。
さまざまな事例がありますが、ほとんどは内部リンクが足りないか、正しい内部リンクがユーザーにとってわかりにくいか、どちらかです。
検索エンジンで欲しいものを検索して、ECサイトの商品ページにたどり着いたユーザーは、その商品だけを見るわけではありません。他の商品を見たいと思うこともあります。トップページを見てみたい、注文方法や送料などを見てみたいと思うこともあります。
しかし、それらのページへのリンクが見つからなかったら、多くのユーザーはECサイト自体から離脱してしまうでしょう。
または、商品を購入したいと思ったのに、購入に続くボタンなどのリンクがわかりにくいECサイトもあります。購入したいのにトップページに移動してしまったり、会員登録のために必要事項を入力したのに登録ボタンとキャンセルボタンが押し間違えやすいデザインになっていたり。ユーザーは面倒だと感じたら、離脱してしまうでしょう。
これらの問題を確認するには、専門のコンサルタントなど、ECサイトを見慣れている人に導線を確認してもらう方法もあります。
また、そのような経験の不足を補うためのツールも多く開発されています。
googleアナリティクスでECサイト内の各ページを解析して、離脱率が非常に高くなっているページがあれば、そこに何か構造上の問題があるかもしれません。
会員登録フォームや購入手続きフォームに、フォーム最適化ツールを導入してみるのも良いでしょう。エラーが起こりやすい項目や、ユーザーが間違えやすい項目があるかもしれません。また、各ページでのユーザーの動きを計測できる、ヒートマップツールというものもあります。
商品ページで本当に見てもらいたい箇所までスクロールする前に多くのユーザーが離脱していたり、画面上のボタンではない箇所がたくさんクリックされているなど、思わぬ問題が見つかるかもしれません。
ユーザーが求めている商品がない
ECサイトを訪れたユーザーが購入したい商品を見つけられなければ、当然コンバージョンには至りません。ただ、ユーザーが求めている商品がECサイトでもともと売られていない場合と、ECサイトで売られてはいるのにユーザーに見つけてもらえていない場合があります。
ユーザーが求めている商品をECサイトで取り扱っていない場合、その商品を販売するか、そのユーザーはターゲットではないとして集客方法を変えるか、2つの方法があります。どちらの方法を取るかはECサイトの方針次第ですが、ここでは商品を取り扱うことを想定します。
その場合には、ECサイトにアクセスしたユーザーのニーズを探る必要があります。サイト内検索ツールを導入して、ユーザーに検索してもらう方法もあります。多く検索されているものの、ECサイトに取扱のない商品が見つかるかもしれません。
また、チャットツールの導入事例も増えてきました。メールやフォームに比べて気軽に問い合わせをしてもらえるので、ユーザーの声を多く聞くことができます。
もう一つの原因である、ECサイトで売られているのにユーザーが見つけられない場合は、ECサイト側のおすすめの仕方に問題があります。
実際に人気のある商品とは別に、ECサイト側が売りたい商品ばかりを押し出してしまう例もあります。ECサイトの更新が滞っていて、季節やイベントなどによる需要の変動に合っていない例もあります。
googleアナリティクスなどでユーザーのページ遷移を計測したり、離脱の多いページを調べたりして、ユーザーが何を求めて、どのような期待を持ってECサイトにアクセスしているのかを考える必要があります。
ECサイトのCVR(コンバージョン率)を改善する10の施策
CVRを向上させるための改善施策には様々なものがあります。ここでは代表的な以下のCVR改善施策をご紹介します。
- サイトコンセプトの見直し
- TOPページデザインの変更
- モバイルファーストの対応(レスポンシブ対応&ページスピード改善)
- 集客方法・キーワード・露出先の精査
- サイト導線の見直し
- 商品画像・説明文の充実化
- 関連商品のレコメンド
- レビュー投稿を集める
- カート落ち防止対策
- チャット機能の導入
ただ、ECサイトそれぞれの特徴や状況によって効果は異なります。中には逆効果になってしまうものもあるでしょう。そのため、まずは運営するECサイトの問題を正しく把握することが大切です。前述のCVRが低くなってしまう要因を分析した上で、その要因を解消しCVRを向上させる対策を見つけましょう。
サイトコンセプトの見直し
ECサイトのコンセプトや全体の雰囲気が、扱っている商品のイメージに合っていなかったり、ECサイトに多く訪れているユーザー層向けになっていないことがあります。
また、ECサイトを運営している間に増設したページのデザインや構造にブレが生じ、統一感がなくなってしまうこともあります。そのような場合には、ECサイト全体のコンセプトを見直して、リニューアルするのが効果的です。
まずは、ECサイトのコンセプトを一言で表すキーワードを決めるのが一般的です。例えば、オーガニックな食材を販売するECサイトであれば「自然の美味しさ」といったような、一言でイメージがわくようなキーワードを設定します。
このキーワードをECサイトの軸として、取り扱っている商品を、誰に、どのように販売するのかを決めていきます。この際に、コンセプトをただ押し付ける形にならないように、ターゲット層やニーズを調査するのも重要です。そして、コンセプトに合わせて、ECサイトを構築しなおします。
サイトコンセプトの見直しによって得られる効果には、以下のようなものがあります。
- ブレが生じがちだったECサイトのデザインに統一感が生まれて操作性が向上する。
- 独自性を強めて、競合との差別化を図ることができる。
- ターゲットとニーズに最適化させ、カテゴリーキラーになれる。
ターゲットやニーズとECサイトのコンセプトが合致すると、流入してきたユーザーの直帰率が下がります。また、操作性が向上することで回遊性が上がったり、カゴ落ちが減る効果もあります。これらが総合されて、CVRも改善されます。
これらの改善効果は、googleアナリティクスなどですぐに確認することができます。もし効果が得られなかったら、さらに問題を探って改善を続けることとなります。大規模なコンセプトの見直しは頻繁に行うものではありませんが、そのコンセプトに沿ったECサイトになっているかは常に意識しておく必要があります。
完全リニューアルする場合には、ECサイトの規模にもよりますが、数百万円必要となるでしょう。ECサイトをオープンさせた時に近いコストや手間が必要だと考えておくと目安になります。
ECサイトのコンセプトとは何か、どのように設定すれば良いのか、詳しくはこちらの記事も参考にしてください。
ECサイトのコンセプト設計が必要な理由と設計方法・手順を解説
TOPページデザインの変更
ECサイトに訪れるユーザーは、必ずしもTOPページを最初に見るとは限りません。検索結果によって商品ページに直接アクセスすることも増えています。それでも、商品を見た後にECサイトをもっと見たいと思えば、多くのユーザーはTOPページを経由します。
また、ECサイトの店舗名やブランド名の認知が上がれば、TOPページへの流入も増えていきます。そのため、TOPページはECサイトの世界観を表現しているものでなければなりません。特に、ファースト・ビューと呼ばれる最初に表示される画面は最重要です。そこでユーザーの興味を惹けなければ、ユーザーはすぐに離脱してしまいます。
また、ECサイトやインターネット全体のデザインにもトレンドがあります。TOPページを長く変更しないでいると、なんだか古いというイメージを持たれてしまいます。特にファーストビューは定期的に更新すべきです。
もう一つのTOPページの大きな役割が、ECサイト全体の目次となることです。どのようなECサイトなのかを伝えるのと同時に、どのような商品があり、どこをクリックすればどのカテゴリーへ行けるのか、わかりやすく構築しなければなりません。
ECサイトを運営していく間に商品数が増えたり、カテゴリーの入れ替えや再構成があったりすると、この目次の役割となる部分が混乱しがちになります。ユーザーが迷子にならないよう、わかりやすい設計になっているか常に意識すべきです。
これらの改善効果も、コンセプトの見直しと同じくgoogleアナリティクスで確認することができます。TOPページでの直帰率や、回遊性が上がれば改善施策は成功です。
また、ヒートマップツールを使えば、TOPページ内での離脱箇所も知ることができます。ファーストビューでイメージが合わずに離脱しているのか、その下のカテゴリーや商品へのリンクがわかりにくくて離脱しているかのヒントになります。
TOPページの変更は、1ページの修正あるいはファーストビューの制作と入れ替えのみで可能です。そのため、比較的安価に行えます。画像制作なら数万円から数十万円で済むでしょう。季節ごとなど更新頻度を決めておき、年間予算に含めておくとスムーズです。
TOPページやECサイトのデザイン、トレンドについて、詳しくはこちらの記事もご覧ください。
売れるECサイトのデザイントレンドとは?参考事例33選
モバイルファーストの対応(レスポンシブ対応&ページスピード改善)
ECサイトへのアクセスは、すでに70%以上がスマホからとなっています。それにも関わらず、いまだにパソコンでの表示を優先させているECサイトも少なくありません。PC向けのWEBサイトにスマホでアクセスした場合、ユーザーの操作性が非常に悪くなるので、よほど商品が欲しい人でなければ、すぐに離脱してしまいます。
そのため、ECサイトのレスポンシブ対応は必須です。レスポンシブ対応とは、WEBサイトにスマホでアクセスした場合にはスマホに最適化されたページを表示し、パソコンでアクセスした場合にはパソコンに最適化されたページを表示するように作ることです。
パソコン用のECサイトだけがある場合、デザインはそのままでスマホ用のページを付け足すならば、多くのECサイトでは数十万円で実施可能です。
レスポンシブ対応の効果は、ユーザーの行動にすぐに現れるでしょう。googleアナリティクスでデバイスごとの離脱率や回遊性を計測すれば、スマホのユーザーの数値が向上するはずです。
さらに、モバイルファーストの対応にはSEO効果もあります。
googleは数年前からモバイルファースト・インデックスという基準に移行しています。検索順位を、スマホ版のWEBページを元に判定ているのです。そのため、スマホ用のページのないECサイトは、検索順位が上がりにくくなってしまっています。
これらの評価基準は、Core Web Vitals(コアウェブバイタル)と呼ばれます。ユーザーにとって使いやすいWEBサイトとなっているかの基準としてgoogleが定めたものです。検索順位を上げるためには、これに従わなければなりません。
Core Web Vitals(コアウェブバイタル)について詳しくはこちらをご確認ください。
コアウェブバイタルとは?対策と確認方法、改善策を徹底解説
特に重要なのが、レスポンシブ化とページスピードです。
ページスピードとは、そのWEBサイトにアクセスしてから実際にページが表示されるまでの速さのことを言います。リンクをクリックしてもなかなかページが表示されないという経験は皆さんもしているでしょう。その速度が、今では検索順位にも影響しているのです。
ECサイトのレスポンシブ化とページスピード対策を行えば、即時的にはユーザーの離脱率や回遊性の数値が向上します。さらに数週間から数ヶ月のスパンでは、検索順位にも好影響が見られるはずです。
ページスピードの向上対策の範囲には、ECサイトのコーディングや、サーバーの性能なども含まれます。専門性の高い内容なので、自社内にノウハウを持っているECサイト運営者は少ないでしょう。この分野の改善策にも精通しているニュートラルワークスへお問い合わせください。
集客方法・キーワード・露出先の精査
ECサイトのほとんどは広告などで集客を行なっています。よほどECサイトの知名度が高いか、商品に固定客がついているのでなければ、自然検索流入だけで運営するのは難しいためです。
WEB広告には多くの種類がありますが、代表的なのがリスティング広告、ターゲティング広告、SNS広告などです。これらのWEB広告の種類や集客方法の基本については、こちらの記事も参考にしてください。
ECサイトの売上を伸ばすための集客方法!ポイントや企業事例を紹介
WEB広告を出稿して集客しても、その広告がECサイトのターゲットとしているユーザー層に適切に届いていないことがあります。すると、アクセスする人は多いのに購入する人はほとんどいない、CVRが低い状態になってしまいます。
その場合、集客方法を見直す必要が出てきます。具体的には、キーワードと露出先の精査をします。
キーワードは、直接的に商品を購入したい人を最優先で集客できるよう調整します。ロードバイクを扱っているECサイトならば、「自転車」と検索した人よりも、「ロードバイク 価格」などと検索した人の方が相性はよくなります。ブランド名を入れるのも効果的です。消耗品ならば「猫砂 送料無料」などと購入する際の条件に関するキーワードを追加すれば、購入したい人だけを集客することができます。
ただ、これらの設定では集客対象を絞ることにもなります。CVRは上がるものの、集客できる人数は減ってしまいます。各キーワードの費用対効果を見ながら、どこまで対象を広げるかは検討しましょう。
ターゲティング広告では露出先を調整します。例えば、20代から50代の女性を対象として広告を出していたものの、CVRが上がらなかった場合。実際に購入した人の属性を集計してみたら、30代から40代の人がほとんどだったとしましょう。それならば、露出先を30代から40代だけに絞ればCVRは向上します。自社のECサイトのターゲットとなるペルソナを設定して、その層に合わせた露出を検討しましょう。
WEB広告は即時反映させることができますので、すぐに効果も見られるようになります。また、調整自体には費用もかかりません。細かく常時調整を続けるのが理想です。
サイト導線の見直し
ECサイトは各ページの見やすさはもちろんですが、ページを移動する際の操作性や分かりやすさも非常に重要です。ユーザーがどのように移動して商品を見て、購入ページまで到達するかを想定して、迷子にならずストレスを感じずに誘導できるようにしなければなりません。
TOPページから各商品ページへの移動は簡単か。
商品をショッピングカートに入れてから購入手続きへ移動する際のボタンはわかりやすいか。
入力フォームのエラーメッセージは適切に表示されるか。
ECサイト内の導線がどこかで切れていると、それだけでユーザーは離脱してしまいます。
導線を見直す際には、まずECサイトを自分たちで使ってみましょう。商品をたくさん見て、問い合わせや購入手続きをしてみましょう。わかりにくいところはないか、予想と違うページに移動したリンクはないか、見たいページを探せないことはないか。もしあれば改善します。
また、googleアナリティクスで各ページの離脱率を定期的にチェックします。他と比べて離脱率の高いページがあれば、導線に問題があるかもしれません。ボタンの表示がずれていたり、見にくかったり、リンクがきれていたり、問題がないか重点的に調べるべきです。
常時改善を続けられる施策ですし、問題を解決するのにはページ改修費用程度しかかかりません。常に気づいたことがあれば改善していきましょう。
ただ、リンク切れなどの大きな問題でなければ、この対策でCVRが劇的に向上することはありません。それよりは、ユーザーの体験をよりよくする工夫を常に行う積み重ねが大切な施策と言えます。
サイト導線と動線の違いは?動線分析、導線設計のコツも解説
商品画像・説明文の充実化
ECサイトでは、お客様に直接商品を手にとって見てもらうことはできません。すべて画面を通して伝える必要があります。そのため、ECサイトの商品画像や商品説明文はできる限り充実させて、より鮮明に商品をイメージできるようにした方が、CVRが上がる傾向があります。
特に、アパレルや雑貨などの、商品イメージが伝わりにくいものの場合は重要です。色やサイズ感などが正確に伝わるように工夫するだけでなく、実際に使用しているところ、身につけている写真も用意した方が良いでしょう。最近は、体型の違う複数モデルが身につけているところを、そのモデルの身長体重などと共に表示するECサイトも増えてきました。
インテリアや家具は、その製品自体の写真や情報よりも、使用シーンがさらに重要です。部屋の中でどのような存在感があるか、使ってみるとどのように便利なのか、どういう生活パターンの人に合う商品なのか、といったことを伝えます。
商品画像と説明文は、徐々に改善していくことができます。最初に商品ページを制作して公開した後でも、わかりにくい部分が見つかったり、問い合わせがあったりしたら、それらの情報を追加します。モデルを使ったイメージ写真を追加するのも効果的です。
この施策はECサイト運営者だけで行える部分もありますので、常に気をつけて改善していくことが可能です。ただし写真の撮影や、特にモデルの使用には数万円の費用もかかりますので、売れ筋商品を優先して改善していくのでも構いません。
商品画像や説明文を追加・変更したら、必ずgoogleアナリティクスなどでページ変更前後のCVRやページ滞在時間の変化を確認しましょう。もし下がってしまったら、元に戻すこともできます。改善によってCVRが急上昇することは少ない施策ではありますが、繰り返すことで効果は確実に出てきます。
関連商品のレコメンド
ECサイトでは、おすすめ商品が表示されることがあります。「あなたへのおすすめ」や「この商品を買った人はこんな商品も買っています」といったものを見た覚えがあるかと思います。このような商品のおすすめをすることを、レコメンドと言います。
レコメンド機能にはいくつかのメリットがあります。まず、追加購入を促す効果です。それにより客単価を上げる効果があります。ただ、今回注目するのはCVRを上げる効果です。
ECサイトでは、ユーザーが多くのページ数を見て回るほど、ECサイトの滞在時間が伸びるほど、CVRが上がる傾向があります。そのため、ユーザーが興味のある商品を見てECサイト内を回遊すればCVRにも好影響があることになります。
特に検索結果から直接商品ページにアクセスしたユーザーの場合、その商品が意図したものかどうかの判断だけでECサイトを離れることになってしまいます。そこでレコメンド機能によって関連商品を見てもらうことで、検索意図により近い商品を見つけてもらえるかもしれません。
関連商品のレコメンドは、各商品ページに手作業で追加していくこともできます。この場合はページ修正の手間や費用程度しかかかりません。ECサイト担当者が自分で作業すれば手間のみ、外注しても1ページあたり1万円未満で作成できるでしょう。
ただし、この場合のレコメンドは静的な表示になります。WEB接客ツールなどのレコメンド機能を導入すれば、自動で関連商品を表示したり、さらにユーザーの属性によって出し分けたりすることも可能です。
ただし費用もかかります。ツールの導入には月額数万円かかるのが相場となっていますので、見込めるCVRの向上や追加購入による売上増を試算して検討しましょう。
関連商品紹介の効果は、まず離脱率や回遊性の改善によって確かめることができます。また、レコメンドされた関連商品のページへ移動したか、そのユーザーが購入に至ったかも追いかけることができます。
レコメンド機能、チャット機能などを導入できるWEB接客ツールについてはこちらで解説しています。
ECサイトの課題を解決するWEB接客ツールとは?
レビュー投稿を集める
商品の比較検討や購入するかを決める際に、その商品についてのレビューをチェックするのが一般的になっています。ECサイトでは、商品を触ってみたり試してみたりできないため、実際に購入した人のレビューが重視されるのです。レビューを参考にする人はECサイト利用者の70%以上と言われています。
そのため、多くのECサイトでは商品情報ページに商品レビューを表示しています。それらのレビューの評価がすべて低ければ別ですが、基本的にはレビューの数が多いほどCVRは向上します。この商品は売れている、この商品を使って満足した人が多い、と理解されるためです。
このようにCVRを向上させる効果があるので、レビューを集める施策は継続的に行うべきです。
しかし、レビューを自分から書いてくれるお客様は多くはありません。特に、期待した通りの満足を得られた場合にはレビューを書く動機にはなりにくく、満足できなかった場合やトラブルがあった場合の方が書く動機になりやすい傾向があります。そのため、レビューの投稿機能だけをECサイトに搭載して放置していると、悪評の方が多くなりかねません。それではCVR施策としても逆効果です。
商品を購入したお客様には、商品が届くころや、少しだけ時間が経って商品を使ったであろうタイミングで、レビューを書いて下さるようにお願いするメールなどを送ります。その際に、購入のお礼としてのクーポンを渡したり、レビューを書いてくれたらクーポンを発行することをお知らせします。そのクーポンが動機になり、より多くのお客様がレビューを書いてくれます。
レビューを集める方法自体はシンプルであり、メールを送るだけならばコストもほとんどかかりません。クーポンによる値引きなどのコストは、リピート施策として考えることもできます。そのため、基本的には常時行うべき施策です。
ただ、効果も急激には現れてはきません。少しずつレビューが溜まっていくと、いつの間にかじわじわとCVRも向上している、というくらいの感覚でしょう。即効性はありませんが、ぜひ継続して欲しいCVR改善施策です。
レビューについて詳しく説明している記事も参考にしてください。
ECサイトの口コミ(レビュー)の重要性と対策方法
カート落ち防止対策
カート落ちとは、ECサイトで商品をみてショッピングカートに入れるボタンを押したものの、それから購入手続きに移行しないこと、あるいは購入手続き中に離脱してしまうことを言います。ECサイト全体では、カート落ちの割合は実に70%近くにのぼると言われています。カートに商品を入れた10人のうち、3人しか購入に至っていないということです。これを改善できれば、CVRは大きく向上します。
ユーザーがカート落ちをする理由はさまざまです。とりあえずメモがわりにカートに入れておいた、後で他の商品も購入する時に一緒に買うかを考えるといった、実は購入の意思が固まっていないこともあります。それらは仕方がないとしても、購入したいけれど離脱してしまうユーザーは絶対に減らしたいところです。
一般的なカート落ちの対策には、以下のようなものがあります。
- 決済方法を増やす
お客様にはそれぞれ使い慣れた決済方法があります。ECサイトではクレジットカードを使う人の割合が最も多くなっていますが、それだけでは十分ではありません。中にはクレジットカードを使わない人もいます。また、その日の都合によって変えたい場合もあります。そのため、決済方法は増やすほどCVRは上がる傾向があります。
ただ、飛躍的に伸びることはありません。また、導入にはECサイト改修費用もかかりますし、決済手数料が高いものもありますので、費用対効果を精査して決定しましょう。
- 購入手続き時の入力項目を減らす
お客様は本当に欲しい商品であれば、かなりの手間がかかっても購入してくれます。しかし、まだ迷いながら購入手続きに進んだ場合などは、少しでも面倒に感じると離脱する可能性が急激に高まります。
中でも最も面倒なのが、購入時の必要事項の入力です。住所や名前は商品を届けてもらうために必要だと分かっても、性別、年齢、さらにアンケートなど、ユーザーが不要と思うものはできるだけ削った方がCVRは高まります。
EFOツールと呼ばれる、入力フォームを最適化するためのツールを導入するのも方法の一つです。フォームの中のどの項目で入力を間違える人が多いのか、どの項目を面倒と感じて離脱しているのか、などを探ることができます。
入力項目を減らすだけならばフォームを改修するだけでできますので、費用も数万円で済みますから、まずは試してみることも可能です。場合によってはCVRが30%〜50%向上する事例もあります。その上で、CVR改善効果が高そうだと感じたら、EFOツールを導入して本格的に改善施策を行うこともできます。
- amazon payや楽天payを導入する
自社ECサイトにとって、お客様に会員登録をしてもらうのは非常に高いハードルです。ユーザーの多くはできるだけ登録するサイトを増やしたくないと考えています。また、近年は個人情報に関する意識の高まりも、その傾向に拍車をかけています。
そこで、amazon payや楽天payを導入するECサイトが増えています。これらは、amazonや楽天のアカウントを流用することで、自社ECサイトでは会員登録しなくても購入ができる仕組みです。ユーザーにとっては購入手続きがワンクリックで済むようになるので、カゴ落ちが減ります。CVRが50%程度向上する例もあります。
amazonや楽天と通信できるようにする必要がありますので、ECサイト改修費用は高めになります。とはいえ数十万円で済みますので、ユーザー数やカゴ落ち率によって導入するメリットは十分にあります。
Shopifyのカゴ落ち(カート放棄)対策を解説!例文も紹介
チャット機能の導入
ECサイトは基本的にお客様に動いてもらい、情報を探してもらい、買ってもらう仕組みです。ECサイト側は必要な情報をあらかじめ用意して、お客様が探しやすいようにしておきますが、お客様それぞれの希望や疑問に合わせてECサイト側から情報を追加して差し出すことはできません。そのため、導線や回遊性が大切なのです。
しかし、技術の発達によって、その弱点が克服されつつあります。代表例がチャット機能です。
チャット機能を使えば、ECサイトを訪れた人がチャットで問い合わせをして、リアルタイムで返答を得ることができます。これまではメールで問い合わせをしたり、FAQページを見たりするしかなかったので非常に面倒でした。
しかしチャットで即時対応できれば、離脱を防げます。
さらに、AIを活用したチャットシステムの性能が上がってきているので、担当者が常に返信する必要性も減っています。ECサイト担当者の手間を増やしたり、追加人員を投入することなく、チャットを使ってCVRを向上させられる可能性があるのです。
ただ、AIチャットツールはまだまだ発展途上とも言える段階です。質問の想定や、返答の作成には手間がかかりますし、すべてのECサイトでCVRが向上するという確証もまだありません。また、月額数万円から10万円程度の費用もかかります。まずは情報を集めて、自社のECサイトで効果を得られるか検討してみましょう。
レコメンド機能、チャット機能などを導入できるWEB接客ツールについてはこちらで解説しています。
ECサイトの課題を解決するWEB接客ツールとは?
CVR向上施策を上手く実践しているECサイト事例
ここまで見てきたように、CVR改善施策は非常に幅広く様々な方法があります。また、それぞれの施策はすべてのECサイトで同じ効果を得られるとは限りません。自社のECサイトの問題を把握して、それに合った改善方法を取る必要があります。
人員や予算も限られているECサイト運営の中では、効果が高い施策から優先して実施する必要があります。しかし、何から手をつければ良いかわからず不安になるケースも多いでしょう。ここではCVR改善施策が上手くいっているECサイトをご紹介します。自社の業態やECサイトの形態が近いものを参考にすることで、より効果的な施策から実践することが可能となります。
beams
ビームスはアパレルや雑貨などを中心に取り扱うセレクトショップです。1976年に創業し、現在日本国内で70店舗以上を展開しています。セレクトショップとしては老舗と言えますが、近年ではECサイトにも力を入れています。
主な客層はファッションに関して感度の高い20代から40代です。ファストファッションとは異なる「おしゃれさ」を武器として強固なファン層を持っています。
ビームスのECサイトの特徴は、実店舗に行ったような楽しさを演出している点です。その演出の主軸となっているのが、実店舗の店員さんによる商品説明などの情報配信です。
各店員がブログ形式で情報を配信しています。また、商品については動画で紹介したり、商品を単品としてだけでなくコーディネートや使い方も含めて提案したりと、色々な方法を使っています。商品ページに掲載している商品情報だけでは伝わりきらないことや、各店員さんが感じたこと、お客さんとの会話などで気づいたことをECサイトにも反映しているのです。
これらにより、実店舗を訪れていないECサイトのユーザーでも、商品について十分なイメージを持つことができます。ECサイトへの滞在時間も長くなり、動画に登場する店員さんへの親しみも持ってもらえます。十分な商品情報の配信によってCVRを高めている事例です。
試着のできないECサイトはアパレル分野には適さないと言われてきました。それに対してzozotownのように、体型や足の形を計測する技術開発で改善しようとするECサイトもあります。ただ、資金力がなければ先端技術の開発はできません。しかし、ビームスのように既存の資源をいかしてECサイトでも相乗効果を得られる方法もあるのです。
amazon
amazonは言わずと知れた世界的なECモールです。日本でも最も有名なECモールの一つであり、あらゆるものを取り扱っている巨大企業でもあります。
amazonが開業したのは、インターネットやECサイトがまったく認知されていないころでした。最初はインターネット上の本屋として開店し、その後売上を伸ばし、購入できる商品も増えていったのです。その過程で大きな役割を果たしたのが、ユーザーレビューです。
amazonは他のECサイトに比べると商品のイメージ写真や説明文が少ないのが特徴です。そのため、題名やスペックで判断しやすい書籍や家電に強いと言われます。
とはいえ、家電やパソコンであっても、ユーザーは複数の候補を比較検討して購入する商品を選びます。その大きな判断材料になっているのがユーザーレビューです。
amazonの商品ページでは、商品説明の次には多くのレビューが並んでいます。カタログ的な商品情報だけでは得られない、実際のユーザーによるリアルな声を見ることができるのです。
また、購入を検討している人が、購入した人に対して質問をすることもできます。
これらのレビューによって、ユーザーは商品への信頼を高めることができ、購入にいたります。レビューが商品を購入する背中を押す形になるので、CVRが高まります。
amazonは積極的にレビューを集めることで、現在のようなレビューの数、情報量を構築してきました。商品を購入したお客様には、後日その商品や販売店舗についてのレビュー投稿を促すメールが配信されます。また、自分が購入したことのある商品についての疑問が投稿されても、その通知が届きます。商品が気に入れば人にも勧めたくなる気持ちを利用した、UGC的な手法とも言えます。
もちろん、amazonは圧倒的な販売数があるため、レビューも大量に集められるとも言えます。しかし、どのようなECサイトであっても、地道にレビューとファンを集めていくことは可能です。
ダイソン
ダイソンはイギリスに本社のある家電メーカーです。サイクロン式掃除機を世界で最初に開発し、販売しました。その高い技術力とデザイン性が評価されて、掃除機としては非常に高価格であるにもかかわらず、世界中に広まりました。
現在はさらに技術力をいかした商品開発を続けていて、羽のない扇風機や強力なドライヤーなども商品ラインに加わっています。
ダイソンはECサイトに限らず、ビジネスすべてにおいてコンセプトが貫かれているのが特徴です。高い技術力で、生活を快適にする商品を発明・改善することを宣言し、実行しています。
また、ダイソンの製品はユニークで高性能であるだけでなく、購入したものがもし故障した場合には、72時間以内に回収・修理して返却するという保証も付いてきます。それだけのコストをかけてでも、顧客の利便性を守る姿勢を貫いているのです。
そのコンセプトはECサイトにも共通しています。製品と同様に高級感のある洗練されたデザインのECサイトというだけではありません。
ECサイトでもサポートを重視していて、トップページからでも簡単に問い合わせデスクに電話がかけられたり、チャットで質問ができたりします。また、ECサイトでの購入時に会員登録するのはもちろんですが、実店舗で製品を購入した場合でもオンラインで登録することでサポートを受けられるようになっています。
このように、徹底してコンセプトを統一し、それをユーザーに伝え続けることで、安心感や信頼感を持ってもらえます。だからこそ、他の家電製品に比べると高価であってもダイソンならばと購入する顧客が多いのです。
ナイキ
ナイキはアメリカのオレゴン州に本社のあるスポーツ用品メーカーです。しかし、その製品はスポーツの分野にとどまらず、日常使いのアパレルやファッショングッズとしても世界的な人気があります。
日本でも、バスケットシューズのブームを経験した40代から下の世代では、ナイキの知名度は非常に高くなっています。特にスポーツファンの間では、スポーツ用品と言えばまず思い浮かぶブランドとも言えます。
ナイキはその知名度を利用して、WEB広告の効率を大きく高めることに成功しました。
リスティング広告に出稿する際の検索キーワードを、指名キーワードを中心としたものに絞ったのです。指名キーワードとは、「ナイキ」や「エアジョーダン」など、会社名や製品名のことを言います。すでにそのブランドや商品を知っている人であることが確実なので、そのキーワードで検索した人がECサイトにきた場合には、CVRが高くなります。
さらに、ナイキは自分たちのことを好んでくれている顧客を選んでアプローチするような戦略をとっています。人権問題や環境問題をはじめとして、ナイキとして世の中にどのような姿勢で接するかをアピールすることで、それに賛同する人をひきつけたのです。
ナイキの主張することに関しての賛否はあるとしても、この行動によって、ロイヤリティの高い、ファンの多いユーザー層が形成されています。ECサイトのCVRは公表されてはいませんが、業績を見る限り非常に高いことが推測されます。
もちろん、ナイキのような知名度を持ち、同じ戦略を取れる企業やECサイトは多くはありません。しかし、ブランドの世界観を明確にすることで、規模はどうあれファンを生み出すことは可能です。
ECサイトCVR改善のまとめ
ECサイトの売上は、ECサイトを訪れた人数 × CVRで算出されます。
集客力が少なくてもCVRが高ければ、効率よく売上を形成することができます。逆に、集客力が高く、多くの人がECサイトにアクセスしていても、CVRが低ければ売上は伸びません。売上を伸ばす施策を考える際には、まず集客に目が向きがちですが、集客とCVRは両輪なのです。
それだけECサイトにおいてCVRは重要です。CVRを改善することで大きく業績を伸ばしたECサイトもたくさんあります。
CVRを改善するためには様々な施策があります。ただし、ヒット商品を生み出したり、大規模な予算をかけて集客を行ったりするのと異なり、地道な改善を続ける努力が必要なことがほとんどです。また、ECサイトの特色ごとに、効果のあるCVR改善施策に差があるのも難しい点です。
この記事でご紹介してきたように、まずECサイトのCVRが低くなってしまう要因がないか確認してください。そして、自社のECサイトに合ったCVR改善施策を探して実行してください。それを続けることで、必ずCVRは向上していきます。
とはいえ、CVRの改善は手間のかかるものでもあります。それに加えて、各企業のEC担当者は、CVR改善策を最優先して時間を使うことは難しくなっています。日常業務やバックエンドの業務も多く抱えているため、満足なリソースを割くことができないケースがほとんどでしょう。
そのような場合には、ぜひ専門家にご相談ください。ニュートラルワークスでは、各業界のECサイトはもちろん、企業の様々なWEBサイト構築支援・運営支援を行なっています。多くの実績がありますので、ECサイト・WEBサイトについてのお悩みを解決できます。無料相談を受け付けていますので、ぜひご相談ください。