「クラウドを活用するために、AWSのEC2を運用してみたいけど、そもそもEC2がどのようなものかわからない」と、お悩みの方は少なくないでしょう。
この記事では、AWS EC2のサービス概要や導入メリットを詳しく解説します。
加えて、EC2で重要となるインスタンスについても解説しているので、「EC2を導入するとどのようなメリットがあるかわからない」「EC2で出てくるインスタンスについて知りたい」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
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AWS EC2とはどんなサービスか?
AWSのEC2とはどのようなサービスなのか、下記の観点で解説します。
- AWSとは
- AWS EC2とは
- クラウドサーバーとレンタルサーバーの違い
- AWS EC2の代表的な機能
AWSとは
AWSとは「Amazon Web Services」の略で、通販サイトで有名なAmazonが提供しているクラウドコンピューティングシステムのことです。利用者の用途に合わせてさまざまなサービスを提供しているため、クラウドを活用していくのであれば欠かせないサービスといえます。
似たようなサービスとしては、AWSの他にMicrosoft社が提供する「Azure」、Google社が提供する「GCP」があげられます。AWSは、これらのサービスの中でも利用率が最も高いため、多くの企業で活用されています。
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AWS EC2とは
AWS EC2とは、クラウド上で構築できる仮想サーバーのことです。企業でシステムを運用するときには、多くの場合でサーバーが必要となります。
クラウドが登場する前は、サーバーやOSなどを物理的に購入し、自社内で運用するオンプレミスの形態が一般的でした。しかし、サーバーの導入や構築に時間がかかるため、保守運用にコストがかかる問題点があります。サーバーをAWS EC2で構築できれば、物理的にサーバーを準備する必要がなくなり、素早い構築が可能です。CPUやメモリなどのスペックをあげたいときも、オンプレミスであれば部品の調達をしてから実際に入替作業をしなければなりません。クラウドであれば、コンソール上から簡単にスペックを変更できるため、運用保守のコストを大幅に下げられます。
クラウドサーバーとレンタルサーバーの違い
AWS EC2はクラウドサーバーに分類されますが、レンタルサーバーとどのような違いがあるかわからない方も多いのではないでしょうか。
クラウドサーバーとレンタルサーバーの違いは、独自に作るか、すでに作られたものを使うかといった違いがあります。クラウドサーバーは、前述したとおり仮想上に自社専用のサーバーを構築できるため、利用者を制限しながら自社独自の運用が可能です。
一方で、レンタルサーバーはすでに構築されたサーバーを複数の利用者がレンタルして使うため、自社独自の運用ができません。レンタルサーバーへのアクセスが集中すると、他の利用者が運用するサービスにも影響を及ぼしてしまうため、自社だけの影響範囲に留まらないといったデメリットがあります。クラウドサーバーは、自社専用のサーバーを構築できるため、他の利用者に影響を及ぼす心配がありません。
AWS EC2の代表的な機能
AWS EC2にはさまざまな機能がありますが、そのなかでも代表的な機能として下記があげられます。
- インスタンス
- セキュリティグループ
- キーペア
インスタンスとは、AWS上で動く仮想サーバーのことです。一つのインスタンスが一つのサーバーを表しており、構築時にはWindowsやLinuxなどのOSを選択したり、メモリやCPUを選択したり、ストレージ容量などを選択して作成します。
セキュリティグループは、AWS上にプライベートなネットワークを構築できる機能です。自社内で運用するのであれば、社内ネットワーク以外からのアクセスを制限したほうがセキュリティ的に安全といえます。セキュリティグループを活用すると、AWS内に独自のネットワークを構成できるため、セキュリティの向上にもつながります。
キーペアとは、インスタンスにアクセスするときに認証情報として必要となる鍵の情報です。インスタンスの構築後は、OSに直接アクセスをして色々な設定をしていきます。アクセス時には、IDとパスワードだけではなく、構築時に作成したキーペアの情報も認証情報として必要です。仮にIDとパスワードが流出したとしても、鍵の情報がないとログインができないため、キーペアの管理を適切におこなう必要があります。
AWS EC2を利用するメリット
AWS EC2には、以下4つのメリットがあります。
1.システム構築の時間を短縮できる
2.冗長化が短時間でできる
3.スペックの変更を柔軟にできる
4.従量課金制なので費用を抑えられる
それぞれ解説します。
1.システム構築の時間を短縮できる
AWS EC2でサーバーを構築すると、物理的な準備や設定作業が簡易的になるため、システム構築までの時間を短縮可能です。
クラウドではなく、自社にサーバーを構築する場合、サーバーを物理的に手配しなければなりません。手配後は、OSのインストールや各種設定をオフライン上で実施する必要があるため、数時間はかかってしまうでしょう。
EC2であれば、インターネット上でサーバーの準備やOSのインストールが完了するため、数分程度で構築できてしまいます。サーバーの構築ができれば、該当のシステムを使うためのミドルウェア等の環境設定やコンテンツを配置すれば完了するため、サービス公開までの時間を早ければ1時間かからずに完了するでしょう。
2.冗長化が短時間でできる
AWS EC2は、一度設定したインスタンスを複数運用する設計も可能なため、サーバー冗長化を短時間で実現できます。冗長化とは、サーバーに異常が発生したときに代理としてすぐに手配できるよう待機させておくことです。
クラウドを活用しない場合は「Hyper-V」や「VMWare」などのアプリケーションを活用して仮想基盤の構築し、物理的に2台のサーバーを用意して、同じ環境を事前にセットアップする必要があります。しかし、これらの方法は技術的なアプローチが必要となり、設定に時間がかかってしまうでしょう。
AWS EC2をはじめとしたクラウドサービスでは、一度構築した仮想サーバーをコピーすることができるため、複数台の構成にすることが可能です。また、ロードバランサーと呼ばれる機能を活用すると、サーバーの負荷が増えたときにそれぞれのサーバーに処理を分散させることもできるため、サーバーダウンする確率を減らすことができます。
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3.スペックの変更を柔軟にできる
AWS EC2は、インターネット上でメモリやCPUなどの変更を簡単に実施できます。スペックは、システムの運用をするうえで欠かせない要素の一つです。
自社の商品を宣伝するWebサイトの場合、新商品のリリースやセールのタイミングでアクセスが集中すると予想されるため、事前に高いスペックで対応したいと思うかもしれません。しかし、自社の環境で物理的にサーバーを構築している場合、メモリの購入や増設のために一時的にサービスを停止する必要が生じます。
AWS EC2であれば、コンソール上で簡単にサーバーのスペックを変更できるため、利用用途に応じて柔軟に変更できるのが魅力的です。
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4.従量課金制なので費用を抑えられる
AWS EC2は従量課金制を採用しているため、サービスを利用しない期間に停止しておけば費用を抑えられます。従量課金制とは利用した分だけ費用が発生する料金形態のことです。
自社でサーバーを構築すると、初期費用として物理サーバーのコストがかかってしまいます。長期間運用するほど、コストは安くなっていきますが、途中でトラブル等が発生してしまうと思わぬコストがかかってしまう場合もあるでしょう。
AWS EC2は利用した分だけ料金が発生するため、初期費用を抑えつつ、利用しないシーンではサービスを停止しておくことでコストを削減できます。
AWS EC2でおさえるべきインスタンスの基本知識
AWS EC2を利用するのであれば、インスタンスは抑えておきたい知識です。ここでは、インスタンスを詳しく解説しましょう。
インスタンスとは
インスタンスとは、AWS EC2で構築する仮想サーバーを指します。AWS EC2を利用するうえでインスタンスは必須です。インスタンスは、立ち上げるときにCPUやメモリなどのスペック選定や、WindowsやLinuxなどのOSを選択します。スペックを選定するときには、利用するユーザーに合わせてさまざまなインスタンスタイプが提供されています。
インスタンスタイプの構成
インスタンスタイプは、以下の4つで構成されています。
1.インスタンスファミリー
2.インスタンス世代
3.インスタンスの追加機能
4.インスタンスサイズ
それぞれについて解説します。
1.インスタンスファミリー
インスタンスファミリーとは、インスタンスタイプの先頭の文字を表すモノです。インスタンスタイプが「c5d.xlarge」の場合、先頭の「c」がインスタンスファミリーを指します。
インスタンスファミリーは以下の5種類に分かれています。
インスタンスファミリー | カテゴリ | 内容 |
---|---|---|
T / M / A | 汎用 | 比較的安価でバランスの取れた構成 |
R / X / z | メモリ最適化 | 高いメモリの構成 |
P / DL / Gなど | 高速コンピューティング | グラフィック処理などに強い構成 |
I / D / H | ストレージ最適化 | 大容量のストレージ構成 |
C | コンピューティング最適化 | 計算能力に優れた構成 |
どのようなサーバー構成にしたいかによって、インスタンスファミリーを選択しましょう。
2.インスタンス世代
インスタンス世代とは、名前のとおりインスタンスの世代を表す部分です。「c5d.xlarge」の場合「5」がインスタンス世代を表します。数字が新しくなるほどインスタンス自体も新しい世代となり、新しくなるほど性能が高く安価になっていく傾向があります。
3.インスタンスの追加機能
インスタンスの追加機能とは、通常のインスタンスに機能を追加することです。「c5d.xlarge」の場合は「d」が追加機能を表します。追加機能には下記があげられます。
インスタンスの追加機能 | 詳細 |
---|---|
d | 標準に対してストレージを内蔵 |
a | AMDのCPUを搭載 |
n | 標準に対してネットワークを強化 |
e/s | 上記以外(CPUやメモリなど) |
「d」の場合は標準よりもストレージが充実しているため、データ容量が大きくなりそうなシステムを想定している場合に活用したいところです。
4.インスタンスサイズ
インスタンスサイズとは、全体のスペックを表している要素です。「c5d.xlarge」の場合は「xlarge」がインスタンスサイズに該当します。
インスタンスサイズは最小が「nano」からはじまり、「micro」「medium」「small」「large」の順で大きくなります。しかし、すべてのインスタンスがnanoからはじめるわけではなく、インスタンスタイプごとに異なっています。インスタンスサイズは「CPU」「メモリ」「ネットワーク帯域」などの基本的なスペックを決めるため、システムの利用用途や規模に応じて適切なものを選択する必要があるでしょう。
インスタンスタイプの選び方
インスタンスタイプがどのように構成されているのかがわかったところで、どのような選定基準で選ぶべきか悩む方も多いでしょう。
インスタンスタイプは、運用するサービスの規模や用途に応じて適切なスペックを選定しなければなりません。以下に要望と選定基準をまとめました。
要望 | 選定基準 |
---|---|
CPUの性能を高くしたい | インスタンスファミリー「C」を選択 |
高いメモリを積みたい | インスタンスファミリー「R / X 」を選択 |
AMDのCPUを搭載したい | インスタンスの追加機能「a」を選択 |
安価に構築したい | インスタンスファミリー「T / M / A」を選択 |
インスタンスファミリーから選択をし、用途に合わせてインスタンスサイズを決めていくと良いでしょう。
AWS EC2の導入とインスタンスの立ち上げ方法
インスタンスは、以下の手順で立ち上げが可能です。
①AWSコンソールにアクセス
(ユーザーを作成していない方は「新しいAWSアカウントの作成」より作成)
②ルートユーザーを入力してログイン
③すべてのサービスから「EC2」を選択
④「インスタンス」を押下
⑤「インスタンスを起動」を押下
⑥OSを選択
⑦インスタンスタイプの選択
⑧セキュリティグループの選択
⑨「起動」を押下
⑩「新しいキーペアの作成」を選択し、キーペアの名前を入力したダウンロードを押下
⑪ダウンロードが完了したら「インスタンスの作成」を押下
⑫「インスタンスの表示」を押下後、対象のインスタンスが起動されていることを確認
インスタンスの削除手順
インスタンスは、以下の手順で削除が可能です。
①AWSコンソールにアクセス
②ルートユーザーを入力してログイン
③すべてのサービスからEC2を選択
④「インスタンス」を押下
⑤削除したいインスタンスを右クリックし「インスタンスを終了」を押下
※停止したい場合は「インスタンスを停止」を押下
AWS EC2の3つの料金プラン
AWS EC2には、主に下記3つの料金プランがあります。
1.オンデマンドインスタンス
2.リザーブドインスタンス
3.スポットインスタンス
それぞれのプランを解説します。
1.オンデマンドインスタンス
オンデマンドインスタンスとは、インスタンスが起動されている間に料金が発生する料金体系です。従量課金制はオンデマンドインスタンスに該当します。
事前に契約をしたり、前払いをしなくてもいいため、必要なタイミングでインスタンスを起動し、不要になったら停止するなどの運用が可能です。スペックについても、インスタンスの起動後に柔軟な変更が可能なため、スペックに応じた費用計算をしやすいのが特徴となります。
オンデマンドインスタンスは、以下のような要望を持つ方におすすめです。
- 柔軟にスペックを変更させたい
- 短期間での利用を予定している
- AWS EC2を初めて利用する
2.リザーブドインスタンス
リザーブドインスタンスとは、事前にスペックを決めて長期利用を条件にお得な料金で使用できる形態です。
オンデマンドインスタンスと比べて最大70%以上の割引が適用され、1年または3年の期間で契約できます。ユーザーは、最初に設定したインスタンスタイプを使い続ける必要があるため、同じサービスを提供し続ける場合に向いているでしょう。
リザーブドインスタンスと似たような料金形態で「Savings Plans」があります。Savings Plansは、1時間あたりに支払う金額を事前に決定し、その金額内で1年または3年の期間で利用し続ける料金形態です。オンデマンドインスタンスと比べて、インスタンスタイプの変更を柔軟にできることがメリットといえます。ただし、インスタンスタイプが固定化されてしまう反面、料金面でオンデマンドインスタンスのほうが削減できる可能性が高いです。
3.スポットインスタンス
スポットインスタンスとは、AWS側で使われていないインスタンスをオークション形式で落札することで利用できる形態です。対象のインスタンスは需要に応じて変化しますが、最大で90%OFFの割引価格で利用できます。
スポットインスタンスは、1時間あたりに支払える上限金額を設定し、それよりも低い価格のインスタンスがあれば使用可能です。一方で、インスタンスの金額が上限金額を上回ってしまうと、インスタンスが停止するため注意しなければなりません。
クラウド化をするならAWS EC2がおすすめ
AWS EC2は、クラウドで仮想のサーバーを構築できるサービスです。自社でサーバーを調達して構築するよりも、初期コストを抑えつつスムーズに導入ができます。スペックの変更も容易なため、システムを運用するのであればAWS EC2を活用するのがおすすめです。
少しでも気になった方は、今回の記事を参考にAWS EC2の構築からはじめてみましょう。
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