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最終更新日: 2023.01.31

リスティング広告のシミュレーションとは?出し方やツールを紹介

リスティング広告のシミュレーションとは?出し方やツールを紹介

「リスティング広告のシミュレーションは本当に行うべき?」「リスティング広告のシミュレーションを効果的に行うポイントを知りたい」など、WebマーケティングやWeb広告運用を担当する人は、このような悩みをお持ちのことも多いのではないでしょうか。

広告シミュレーションとは、広告運用にかかるコストや広告による成果などを予測することです。シミュレーションの結果はリスティング広告を運用する上での判断材料にできるほか、運用後の成果分析・比較対象として役立ちます。

そんなリスティング広告のシミュレーションですが、効果的に実施するためには施策について事前に理解を深める必要があります。よく知らないままに進めると、精度が低く広告運用の参考にできない結果になる恐れが大きいです。

この記事ではリスティング広告のシミュレーションについて、実施する目的や具体的なやり方・ポイントなど、Web広告運用担当者が知っておきたい情報を紹介します。

石田 哲也

監修者

Twitter:@te2319
株式会社ニュートラルワークス 取締役CMO。1984年生まれ。高校卒業後にISD株式会社を起業。その後、株式会社オプトでWebマーケティングを学び、株式会社メタップスなど複数のベンチャー企業にて事業立ち上げを経験。前職はワンダープラネット株式会社でゲームプロデューサーとしてスマホゲームアプリの制作に従事。2018年に地元の神奈川へ戻り、ニュートラルワークスに入社。SEO/Web広告運用/サイト分析・改善など、Webサイトの運用改善~ゲームアプリ制作や数十万フォロワーのSNSアカウントの運用経験などWebビジネス全般を守備範囲とする。

■経歴
2003年 ISD株式会社/起業
2009年 株式会社オプト/SEMコンサルタント
2011年 株式会社メタップス/シニアディレクター
2013年 ライブエイド株式会社/執行役
2016年 ワンダープラネット株式会社/プロデューサー・BizDev
2018年 株式会社ニュートラルワークス/取締役CMO

■得意領域
Webサイト改善
SEO対策
コンテンツマーケティング
リスティング広告

■保有資格
Google アナリティクス認定資格(GAIQ)
Google 広告検索認定資格
Google 広告ディスプレイ認定資格
Google 広告モバイル認定資格

QUERYY(クエリー)編集部

執筆者

株式会社ニュートラルワークス

QUERYY(クエリー)編集部

QUERYY(クエリー)は、株式会社ニュートラルワークスが運営するデジタルマーケティング情報メディアです。

目次

リスティング広告のシミュレーションとは?

リスティング広告のシミュレーションとは?

リスティング広告のシミュレーションとは、リスティング広告の運用コストや広告による成果などを予測することです。この章ではリスティング広告のシミュレーションについて、作成する目的や、実施に際して必要な数値を解説します。

リスティング広告のシミュレーションを作成する目的

リスティング広告のシミュレーションを作成する目的は、大きく2つ挙げられます。

どれだけの成果が得られるかを推定するため

一つは、設定された予算でどれだけの成果が得られるかを推定するためです。

例えば、同じような広告運用の進め方でも、予算の大きさによってできることや得られる成果が異なります。予算が小さければ広告出稿できる期間が短く、もしくは1日あたりの広告表示回数が少なくなります。しかし予算が大きいからといって、必ずしも成果も大きくなるとは限りません。

設定された予算によって見込まれる成果を推定することで、予算の無駄遣いを防ぎ、効率的な広告運用を期待することができます。

どれほどの予算が必要かを推定するため

もう一つは、希望する成果を出すために、どれほどの予算が必要かを推定するためです。先ほどは予算から成果を推定する目的を紹介しましたが、この視点は反対に、ゴール(成果)から予算を逆算する方法です。この方法では、目指す成果に適したバランスの良い予算設定が期待できます。

リスティング広告のシミュレーションを作成する理由やメリット

リスティング広告のシミュレーションを作成する理由やメリット

リスティング広告のシミュレーションを作成する目的についてお伝えしましたが、より具体的な理由・メリットとして、以下の3つが挙げられます。

  • 広告出稿の意思決定や判断材料になる
  • 広告設計を事前に検討してスムーズに運用できる
  • 配信後に分析して実績との乖離を埋めることができる

それぞれ詳しく解説します。

広告出稿の意思決定や判断材料になる

リスティング広告のシミュレーション結果は、広告出稿の意思決定や判断材料として有用です。

コストをかけても成果が期待できない施策を進めては、費用や労力を必要以上に消費するだけの結果になってしまいます。しかし、得られる成果や発生するコストの大きさなどは、曖昧な情報やイメージで予測できるものではありません。

リスティング広告のシミュレーションを行うことで、設定した予算内で得られる成果・希望する成果を得るために必要な予算額の推定が可能です。狙うキーワードにおける競合の数など、より具体的な戦略を立てるのに役立つ情報も得られます

シミュレーションによって説得力のあるデータを把握できるため、リスティング広告を出稿するか否かの意思決定や判断がしやすくなります。

広告設計を事前に検討してスムーズに運用できる

広告設計を事前に検討してスムーズに運用できるようになる点も、シミュレーションを行うメリットの一つです。

リスティング広告のシミュレーションを行うことで、大まかな予算やコストだけでなく、クリック率・単価など具体的な情報も推定できます。広告に関する客観的なデータが多くなるため事前の検討がしやすくなり、スムーズな広告運用が期待できるでしょう。

また、広告に直接関係する以外にも、以下のようにさまざまな情報が推定できます。

    • 必要となる在庫:コンバージョン数として広告によって獲得する売上を推定できれば、用意するべき商品の数の判断もしやすくなります
    • 狙うべきキーワード:クリック単価の高いキーワードは避けるなど、キーワード選定に役立ちます
  • 確保すべきリソース:広告は出稿がゴールではなく、その後の認知度向上やコンバージョン獲得などが目的です。これらの目的を達成するために確保するべきリソースの推定にも役立ちます

配信後に分析して実績との乖離を埋めることができる

シミュレーションの結果を活用できるのは広告の出稿前だけではありません。配信後に分析すれば、実績との乖離を埋めることもできます。

リスティング広告のシミュレーションで用いる数値は、あくまで予測に基づくものです。そのため実際に広告運用を進めた結果、シミュレーション内容と異なるのも、ある程度は仕方ないでしょう。

しかし「シミュレーションはあくまで予測だから乖離があって当然」と特に何もせずにいては、シミュレーションを活用できません。大切なのはシミュレーション結果と実績が乖離している原因を分析し、シミュレーションの進め方を改善することです。

実績に基づく数値を当てはめてシミュレーションしなおせば、より正確な推定が可能になります。シミュレーションの実施→広告配信→乖離の分析→改善したシミュレーションの実施→…のサイクルを回していけば、シミュレーションの精度が上がり、さらに効率的な広告の配信が可能になるのです。

リスティング広告のシミュレーションに必要な数値

リスティング広告のシミュレーションに必要な数値

リスティング広告のシミュレーションを行うために必要な数値があります。以下の代表的な8つについて、それぞれの目的とポイントを解説します。

  • 費用(広告予算)
  • インプレッション数(IMP)
  • クリック数
  • クリック率(CTR)
  • クリック単価(CPC)
  • コンバージョン数(CV)
  • コンバージョン率(CVR)
  • コンバージョン単価(CPA)

費用(広告予算)

リスティング広告のシミュレーションで、「設定された予算内でどれだけの成果が得られるか」を推定したい場合は、シミュレーションで「費用(広告予算)」を設定します。

◆目的

「費用(広告予算)」を設定した上でシミュレーションを行うことで、予算内で最大の効果を引き出す「クリック単価」の適正入札単価を見極めることができます

◆ポイント

自社で設定した費用(広告予算)にこだわりすぎずないことがポイントです。設定費用よりも少し低めの設定からシミュレーションしてみると、キーワードによっては設定費用より低い予算でも、一定以上の成果が見込めることがあります。「費用対効果」の視点を持ってシミュレーションを行いましょう。

インプレッション数(IMP)

インプレッション数(IMP)は広告が表示された回数を意味します。シミュレーションでは、狙いたいキーワードを入力することで、推定のインプレッション数が自動で表示されます。

◆目的

認知度向上を目的とした広告の場合、多くのユーザーに見てもらうことが大きな目的であるため、インプレッション数の最大化が優先されます。

◆ポイント

認知度向上ではなく、具体的な集客やコンバージョン獲得が目的の場合は、インプレッション数よりも、クリック率・コンバージョン率の方が重要です。それは、クリックしてもらう数を増やすよりも、見込み客に絞って広告配信を行うほうが費用対効果もよく、効率的な広告配信になるからです。自社のマーケティング戦略が、インプレッション数にあるのか、しっかり精査しましょう。
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クリック数

クリック数は表示された広告が、実際にクリックされた回数を指します。

<計算式>

クリック数=インプレッション数(表示回数)×クリック率(CTR)

◆目的

リスティング広告の課金方式は、広告がクリックされることで広告費が発生する「クリック課金型」です。シミュレーションで「クリック数」が高いことがわかれば、広告費用の総予算の増額を検討するなど、クリック数に対する自社の広告戦略を早めに練ることができます。

◆ポイント

計算式にあった「クリック率」とは、この後に解説する数値のことを指します。クリック数と関連が深い数値で、どちらも、集客やコンバージョン獲得において重要視されています。

クリック率(CTR)

クリック率(CTR)は広告が表示された回数に対して、実際にクリックされた回数の「割合」を示しています。

<計算式>

クリック率(%)=クリック数÷インプレッション数×100

◆目的

前述した「クリック数」は、単純にクリックされた回数をカウントした結果です。表示された広告が、どれだけ集客につながっているかを正しく推定するためには、表示された回数に対する割合=「クリック率」を確認する必要があります

◆ポイント

クリック率(CTR)の重要性を具体例で解説しましょう。例えば、AとBのリスティング広告で「クリック数」が同じ10回という場合です。Aの広告ではインプレッション数が100回。Bの広告のインプレッション数が20回だとすると、CTRとしては、Bの広告が断然費用対効果が抜群と判断できます。このように、単にクリック数だけではなく、CTRの指標をシミュレーションすることは欠かせない要素といえるのです。
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クリック単価(CPC)

クリック単価(CPC)は広告の1クリックあたりの費用です。リスティング広告のクリック単価はオークション形式で決定されます。クリック単価が高いほど、需要が高い・競合が多いことを意味します。

<計算式>

トータルの広告費用=クリック数 × クリック単価

◆目的

クリック単価が高い分野では、それなりの予算をかけないとリスティング広告による成果が得られない可能性があります。クリック単価のシミュレーションを使ってトータルの広告費を試算してみましょう。

◆ポイント

シミュレーションの結果、クリック単価が高額であると推定された場合は、予算を再検討したり、単価の低いキーワードへ変更することも有効です。また、配信エリアやターゲットを絞って広告単価を下げる工夫も手段の一つになるでしょう。
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コンバージョン数(CV)

コンバージョンとは、リスティング広告を配信する「目的」として、ユーザーにとってもらいたいアクションのことを指し、その目的を達成できた回数をコンバージョン数(CV)と呼びます。リスティング広告に限らず、Webマーケティングの分野で多く使用される言葉です。

◆目的

例えば、「会員数の増加」を目的にリスティング広告を出稿するのであれば、「会員登録」をコンバージョンとして設定します。リスティング広告がクリックされ、ユーザーが「会員登録」というアクションまでたどりついたときに、「コンバージョン」が獲得できたこととなり、その回数をコンバージョン数(CV)とします。

◆ポイント

コンバージョンは、自社のサービスや商品、目的によって設定するアクションが異なります。代表的な例を紹介します。

  • 商品の購入
  • 資料請求・問い合わせ
  • 会員登録
  • イベントなどの申し込み
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コンバージョン率(CVR)

リスティング広告におけるコンバージョン率(CVR)は、広告がクリックされた数に対してコンバージョンに至った数の割合です。

<計算式>

コンバージョン率(%)=コンバージョン数÷クリック数×100

※コンバージョン数ではなく、セッション数(ユーザーの訪問数)を用いるケースもあります

◆目的

コンバージョン率は、コンバージョン数とは異なる数値です。例を挙げると、「コンバージョン数」が同じリスティング広告があったとしても、クリック数で割り出した「コンバージョン率」が低い場合は、クリックされたものの、コンバージョンが取れていない状態を示します。以下のような可能性を見据えながら、自社のマーケティング戦略に活用しましょう。

  • 広告をクリックした先のページ=ランディングページ(LP)に課題がある
  • 広告文と商品・サービスの内容に乖離がある

◆ポイント

シミュレーションの段階では正確な数値がわからないことから、参考にできる過去のデータや平均的な割合などを用います。そのため、多少の誤差は想定しておきましょう。
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コンバージョン単価(CPA)

リスティング広告における「コンバージョン単価(CPA)」とは、一つのコンバージョンあたりにかかる広告費のことをいいます。

<計算式>

コンバージョン単価=広告費合計÷コンバージョン数

◆目的

コンバージョン単価が、一つのコンバージョンで得られる利益を上回っている場合、リスティング広告は「赤字」と考えることができます。リスティング広告の出稿を判断する上で、重要な視点といえるでしょう。

◆ポイント

リスティング広告における「赤字」の視点には、一部で例外があります。それは、「リスティング広告を配信し始めてすぐのとき」「キャンペーンやイベント時期」など、ここぞというタイミングのときは、多少の赤字があっても出稿すべきときと考えることもできるからです。どれくらいの範囲であれば許容できる範囲なのか、シミュレーションでしっかり計画していきましょう。
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リスティング広告のシミュレーションを作成するタイミング

リスティング広告のシミュレーションを作成するタイミング

リスティング広告におけるシミュレーションの概要を理解したら、いよいよリスティング広告のシミュレーションを作成するタイミングについてみていきます。どんなタイミングでもいいのでは?と思うかもしれませんが、シミュレーションをより効果的に活用できる3つのタイミングとポイントについて解説します。

  • Web広告を初めて配信するとき
  • 新しいキャンペーンや広告を開始するとき
  • 運用中の広告の改善点を見つけたいとき

Web広告を初めて配信するとき

Web広告を初めて配信するときは、事前のシミュレーションが不可欠といえるでしょう。

シミュレーションをせずに初めてのリスティング広告出稿をした結果に起こり得る事態として、以下の例が挙げられます。

  • イメージや感覚で広告設定をしてしまい、想定より早く予算を使いきってしまう
  • ネットなどで見つけたデータを流用して広告設定をしてしまう(自社に合わない内容で思うような成果が出ない恐れ)
  • 意思決定や判断に用いる材料がなく、施策展開が滞る
  • 効果検証の基準がないため、理想的な成果が出ているのか判断ができない

Web広告に限らず、初めて展開するマーケティング施策については、経験に基づくノウハウや自社に蓄積されたデータが基本的には存在しません。そのため事前の準備が非常に重要となるのです。
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新しいキャンペーンや広告を開始するとき

すでにリスティング広告の配信経験があっても、新しいキャンペーンやリスティング広告の運用を開始するときは、事前にシミュレーションを実施しましょう。

リスティング広告はターゲット層や内容が少し変わるだけで、得られる成果や各数値が大きく変わります。事前にシミュレーションを実施せず、過去の広告運用実績をそのまま当てはめてしまうと、以下のような失敗につながりかねません。

  • 過去に広告を出稿していたキーワードとクリック単価が大きく異なるのに、同じ入札単価を設定してしまう
  • 競合が多いことに気付かず広告出稿を進めてしまう

過去の広告運用によるノウハウを活かしつつも、リスティング広告のシミュレーションは改めて実施するのがおすすめです。

運用中の広告の改善点を見つけたいとき

運用中の広告の改善点を見つけたいときも、シミュレーションの作成におすすめのタイミングです。

運用中の広告については、シミュレーションではなく、正確な運用結果に基づく数値を確認することができます。これら実際の数値とシミュレーションの結果を比較することで、理想よりも成果が出ていない部分、予想以上に成果が出ている部分を明確に判断することができます。

シミュレーション結果を用いて改善点を見つけられるのは、以下のようなケースです。

  • クリック率がシミュレーションによる想定よりも低い:そもそも広告自体に魅力がないと考えられます。タイトルや説明文の改善を検討する必要があります
  • コンバージョン率がシミュレーションによる想定よりも低い:クリックした先のページに問題がある可能性が大きいです。広告そのものではなく、遷移先ページの改善が求められます

シミュレーション結果と運用実績の比較は、問題を抱えている箇所を探す上で非常に有効なデータとなるでしょう。

リスティング広告のシミュレーションの出し方

リスティング広告のシミュレーションの出し方

この章では、リスティング広告のシミュレーションの出し方について、具体的なやり方を紹介します。大まかな流れは以下のとおりです。

  1. 広告出稿の目的や目標を決める
  2. ターゲットを選定する
  3. シミュレーションで用いる指標を決める

広告出稿の目的や目標を決める

はじめに、リスティング広告を出稿する目的や目標を決めます。最初は大まかなイメージ程度で問題ありませんが、最終的には以下のような具体的なゴールの設定が必要です。

  • 広告を通じて会員登録を獲得、会員数を100人増やす
  • 購入申込み数50件獲得
  • 80件の資料請求申込みを受ける

なお、シミュレーションで広告に設定できる予算を先に決める場合、具体的な数値(コンバージョン数)は設定できません。その場合は、会員登録や資料請求などコンバージョンの内容は具体的に、数値は大まかに設定します。

「設定した予算で得られる成果の推定」または「目的のために必要な予算の推定」など、自社がシミュレーションを行う目的に合わせて、広告出稿の目的や目標を決定しましょう。

ターゲットを選定する

続いてはターゲットを選定します。リスティング広告のシミュレーションでターゲット選定が必要な理由は大きく2つ挙げられます。

キーワードを選定する

リスティング広告は、ユーザーが検索したキーワードに連動して表示されます。そのため出稿するキーワードを決めるためには、ターゲット層がどのようなキーワードで検索するかを想定し、そのうえでキーワードの絞り込みや選定を行います。

必要なインプレッション数やクリック率を計算する

リスティング広告のシミュレーションでは、最初に設定した目的・目標を達成するために獲得したいインプレッション数やクリック率を算出することができます。

このとき、ターゲット層を広く設定し過ぎると、ニーズを抱えていないユーザーにも無駄に広告が表示されてしまうことになります。その結果として、クリック率やコンバージョン率の低下につながります。一方で、ターゲット層を絞り込み過ぎると、広告の配信対象が少なくなり、得られるインプレッション数が少なくなる可能性が高いです。

シミュレーションでは、このような塩梅を事前に試すことができるため、できるだけリアルに近いターゲット層を絞り込んでおきましょう。

シミュレーションで用いる指標を決める

続いてシミュレーションで用いる指標を決めます。先に、リスティング広告のシミュレーションで必要になる数値をいくつか紹介しましたが、「シミュレーションの作成」にあたって、実際に必要となる数値の項目は以下の4つです。

  • インプレッション数
  • クリック率
  • クリック単価
  • コンバージョン単価

これらの設定を行うためには、次に解説する「全体の広告予算」または「コンバージョン数」のどちらかを、事前に決定しておく必要があります。

全体の広告費用またはコンバージョン数を決める

シミュレーションを行うために、広告費用またはコンバージョン数を決めます。

◆広告予算を決めておく場合

「設定された予算でどれだけの成果が得られるか」を推定することが可能です。目標とするコンバージョン数に対し、自社が設定している予算で達成できるのかを、細かくシミュレーションしていき、希望する成果を出すために必要な予算の推定を行いましょう。

リスティング広告運用によって期待できるコンバージョン数の推定方法を紹介します。

  1. 推定したインプレッション数・クリック率・クリック単価・コンバージョン単価および広告予算を当てはめる
  1. その他の項目についてそれぞれ以下の計算式で算出する
    クリック数:インプレッション率×クリック率
    コンバージョン数:広告予算÷コンバージョン単価
    コンバージョン率:コンバージョン数÷クリック数×100

<計算例:「コンバージョン数」のシミュレーション>

広告予算1,000,000円➗コンバージョン単価100,000円=コンバージョン数10

◆コンバージョン数(CV)が決まっている場合

目標とするコンバージョン数(CV)が決まっている場合は、「希望する成果を出すために必要な予算」を推定することが可能です。シミュレーションを作成する流れは、広告予算が決まっている場合とそれほど変わりません。

シミュレーションの流れは以下のとおりです。

  1. 推定したインプレッション数・クリック率・クリック単価・コンバージョン単価およびコンバージョン数を当てはめる
  2. その他の項目についてそれぞれ以下の計算式で算出する
    クリック数:インプレッション率×クリック率
    コンバージョン率:コンバージョン数➗クリック数×100
    必要な予算:コンバージョン単価×コンバージョン数

<計算例:「必要な予算」のシミュレーション>

コンバージョン単価200,000円×目標とするコンバージョン数15件=必要な予算3,000,000円

リスティング広告のシミュレーションツールの種類

リスティング広告のシミュレーションツールの種類

リスティング広告のシミュレーションは、ツールを活用するのが便利です。シミュレーションツールは大きく2種類に分けられます。それぞれの特徴やメリット・デメリットなどを解説します。

  • 媒体が提供する無料の公式ツール
  • 有料の広告シミュレーションツール

媒体が提供する無料の公式ツール

Google広告やYahoo!広告など、広告媒体が提供するツールです。シミュレーションツール単体で用意されているというよりは、広告サービスの機能の一環という位置づけです。

媒体の公式ツールを使うメリットとして、以下の2点が挙げられます。

  • 無料で利用できる:基本的に追加料金はかかりません。機能のひとつとして利用できます
  • 過去のデータに基づいた数値:過去のデータに基づいた分析ができるため、精度の高さが期待できます

広告媒体の公式ツールのデメリットは、該当の媒体でしかシミュレーションができない点です。複数の媒体でWeb広告を出稿している場合、それぞれの媒体で設定しなくてはならないため、シミュレーションするごとに手間がかかります。
Googleキーワードプランナーの使い方と代替ツールを紹介 Googleキーワードプランナーの使い方と代替ツールを紹介

有料の広告シミュレーションツール

広告媒体以外が提供する有料のシミュレーションツールを使う方法もあります。一言で広告シミュレーションといってもツールによって機能や特徴が異なるため、自社に合うものを選ぶことが大切です。

有料の広告シミュレーションツールの大きなメリットは以下の2点です。

    • 自社に合った方法で進められる:求める機能や操作性など自社の希望に合うツールを選べば、より快適な広告シミュレーションができます
  • シミュレーション以外の機能もある:単純な広告シミュレーションだけでなく、広告予算の管理や自動レポート作成など、便利な付加価値を提供されています

一方で以下のデメリットが存在します。

  • コストが大きくなる:有料のツールゆえに、シミュレーションに際してコストが発生します
  • ツール選びが手間となる可能性:理想に合うツールが見つからない・自社の目的と合わないなど、必要以上の手間が発生する恐れもあります

リスティング広告のシミュレーションを作成する際のポイントや注意点

リスティング広告のシミュレーションを作成する際のポイントや注意点

リスティング広告のシミュレーションを作成する際のポイント・注意点として、以下の4つが挙げられます。

  • 結果が大きく乖離しても精度にこだわりすぎない
  • シミュレーションを信用しすぎない
  • シミュレーションにはなるべく自社のデータを使用する
  • 実際に運用した後の効果検証も大切

結果が大きく乖離しても精度にこだわりすぎない

リスティング広告のシミュレーションでは、結果が大きく乖離しても精度にこだわりすぎないことが大切です。

広告シミュレーションでは、具体的な根拠に基づく数値を活用します。しかしあくまで過去の実績に基づくものであり、現在でも完璧に通用するとは限りません。

消費者の行動や競合他社の状況など、数値に影響する要素は時間の経過とともに変化します。これらの変化が生じた結果、シミュレーションに用いる数値が実態と大きく乖離する事態も起こり得るのです。

また、自社が出稿する広告や遷移先のページに問題がある場合、シミュレーションで出た数値を、実際の数値が下回ることもしばしばです。

このようにシミュレーションと実際の運用結果は、ちょっとした原因によって乖離することがあると認識し、運用後の結果の分析と検証を欠かさずに行いましょう。

シミュレーションに頼りすぎない

前述した内容と関連しますが、シミュレーションに頼りすぎないという意識も必要です。

リスティング広告のシミュレーションで用いる数値は予測によって算出されたもので、いわゆる「期待値」と呼ばれるものです。そのため、新しいキーワードや過去のデータ数が少ない数値などの場合には、精度が低くなる可能性があります。

また、インプレッション数やクリック率は、過去の良い経験がある場合、高めに見積もってしまう傾向があるため、シミュレーション結果よりも、実際の運用結果が悪くなる傾向があります。

シミュレーションは入念な予測に基づいた数値設定や作成が大前提ですが、頼りすぎない意識をもった上で活用することが大切です。

シミュレーションにはなるべく自社のデータを使用する

リスティング広告のシミュレーションには、なるべく自社のデータを使用しましょう。

一般的に、コンバージョン率の平均は2〜3%程度といわれています。しかし業界やキーワード、商品、サービスの種類などによってコンバージョン率の平均はまったく異なります。

米国のリサーチ会社であるContentsquareが2021年に実施した調査では、美容業界の平均コンバージョン率が3.2%である一方、自動車業界は0.4%でした。平均と言われている数値をそのまま適用するのは危険だとわかります。

同じ業界であっても、扱う商品やターゲット層によってコンバージョン率が異なるケースも珍しくありません。

このように、外部の「一般」とされるデータを用いてシミュレーションを行うと、実態と乖離する恐れが大きいです。データが蓄積されていない・広告配信が初めてなどの場合は仕方ありませんが、可能な限り自社のデータを使用することをおすすめします。

実際に運用した後の効果検証も大切

シミュレーションの結果を用いるのは広告出稿前だけではありません。実際に運用した後の効果検証も大切です。

広告の運用を始めることで、実績に基づく具体的な数値が算出されます。シミュレーションと乖離している部分を分析すれば、改善するべき点を効率的に把握できるでしょう。

リスティング広告の運用後は、実績に基づく数値を当てはめてシミュレーションを作成し直すことも効果的です。シミュレーションの精度が上がれば把握できる情報の正確性も高まり、効果改善への有用性が高まるでしょう
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ポイントを押さえたリスティング広告シミュレーションを実施しよう

ポイントを押さえたリスティング広告シミュレーションを実施しよう

リスティング広告のシミュレーションを行うことで、設定された予算内で期待できる成果または希望する成果を出すために必要な予算の推定が可能です。広告出稿の意思決定を行う上での判断材料になるだけでなく、広告設計の事前検討・スムーズな効果検証の実現も期待できます。

ただし、広告シミュレーションは有用な手段ですが、あくまで予測であり、実際の運用結果と乖離する恐れもあります。そのため、シミュレーションに頼りすぎないという意識も大切です。

リスティング広告シミュレーションのポイントを押さえることで、より効率的・効果的な広告運用につながります。さっそく活用して自社のWebマーケティング戦略の強化をはかりましょう。

監修者紹介

石田 哲也

石田 哲也

取締役CMO

Twitter:@te2319
株式会社ニュートラルワークス 取締役CMO。1984年生まれ。高校卒業後にISD株式会社を起業。その後、株式会社オプトでWebマーケティングを学び、株式会社メタップスなど複数のベンチャー企業にて事業立ち上げを経験。前職はワンダープラネット株式会社でゲームプロデューサーとしてスマホゲームアプリの制作に従事。2018年に地元の神奈川へ戻り、ニュートラルワークスに入社。SEO/Web広告運用/サイト分析・改善など、Webサイトの運用改善~ゲームアプリ制作や数十万フォロワーのSNSアカウントの運用経験などWebビジネス全般を守備範囲とする。

■経歴
2003年 ISD株式会社/起業
2009年 株式会社オプト/SEMコンサルタント
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Webサイト改善
SEO対策
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