マーケティングとは、自社の商品やサービスを適切なターゲットに届けるための計画のこと。企業の成長や発展に欠かせない概念です。物や情報の溢れる現代において、「良い物を作れば売れる」という考え方のままでは事業の成長はありません。無数にある商品やサービスの中から自社商品を選び、買ってもらえる仕組みを構築する必要があります。
ほとんどの企業には当たり前のように「営業部」があるのに対し「マーケティング部」を設けている企業はそれほど多くありません。なかには「マーケティング活動とは?」と疑問を感じている方もいるのでは。
この記事では、マーケティング初心者の方に向けて、基本的な考え方から具体的手法や用語まで詳しく解説しています。基礎からしっかり学んで、実践に活かしてみてください。
目次
マーケティングとは簡単にいうと「戦略」である
マーケティングを一言で表現するなら「戦略」という言葉がぴたりと当てはまります。「マーケティング戦略」という言葉を耳にすることもあるでしょう。ただし、言葉の響きからなんとなく理解したつもりでいたり、ズレた解釈をしてしまうケースもあるので注意が必要です。
マーケティングは「戦略」と「戦術」のふたつに分けて考えるのが重要です。よく似た言葉ですが両者に明確な違いがあることを知れば、マーケティング活動のやり方をより鮮明にイメージできるようになります。
マーケティングにおける「戦略」の定義とは
マーケティングにおいての戦略とは、企業の目標や、その目標達成に必要なリソースを把握することです。
戦略とはもともと軍事用語。「戦いに勝つ」という目標のために必要な資源や人員を集め、運用する技術のことを指していました。この考え方はビジネスにおいても応用できるため、現在ではマーケティングの分野で活発に使用されています。
たとえば「顧客からの問い合わせ数〇%アップ」「経費〇%カット」「売上高〇%アップ」など具体的な数字目標を掲げます。その目標を達成するためにはどんな施策が必要か、施策を実行するにはどのくらいのコストと人的リソースが必要かなどを洗い出していくのが、マーケティングにおける戦略設計です。
企業の売上や規模の拡大は、一朝一夕にできるものではありません。中長期でマーケティングに取り組むことになるため、具体的な方法を決めるよりも先に戦略設計を行う必要があります。
マーケティングにおける「戦術」の定義とは
「戦術」は、戦略で導き出された施策を実行するときの具体的手法のこと。どんな武器を使って戦うかを決める、ということです。
現代のビジネスシーンにおいて「売上〇%アップ」という目標を達成するには、広告の配信やSNS運用、オウンドメディアの立ち上げ、チラシや試供品の配布などさまざまな方法が挙げられます。
ただ、たくさんの手法があるなかで、そのすべてに取り組むのは現実的ではありません。自社はどの方法を取り入れるべきなのかを考えることが大事です。自社が掲げるコンセプトや事業の目標、戦略を常に意識し、策を講じる必要があります。
戦略と戦術には明確な定義の違いがあるものの、2つは互いに関係しあっているものです。まずは戦略を立ててから、戦術を決めるという流れで行うのが非常に重要。また、戦術を決めるときは必ず、戦略設計時に立てた道筋を振り返りましょう。
コンテンツマーケティングとオウンドメディアの相性と成功率を上げる導入方法解説マーケティングとは「売れる仕組みを作ること」である
経営学者のピーター・ドラッカーは「マーケティングの目的は、販売を不要にすることだ」という明言を残しています。自社がターゲットとする顧客を十分に理解し、顧客が求めている商品やサービスが自然に売れる仕組みを作ることが重要だということです。
これまでは商品やサービスを売り込む「営業活動」を行うのが一般的でした。しかし今後重要なのは、顧客が自ら商品やサービスを知る機会を作り、自然と購入や契約に至る仕組みを定着させることにあるのです。
人気の商品やサービスには、必ずと言っていいほど売れる仕組みが構築されています。人気があるのは商品やサービスの質が高いだけでなく、集客・提供・口コミといった消費の循環システムが作られていることにあるのです。
まずはこの仕組み作りという考え方を理解することが重要でしょう。インターネットやスマートフォンの普及により「自然に売れる仕組み」は以前よりも作りやすくなっています。すでに成功を修めている企業の売れる仕組みも参考にしながら、自社独自のマーケティング戦略・戦術を決めていきましょう。
マーケティング活動のプロセス
マーケティング活動には、どんな業種や形態にも共通する一定のプロセスがあります。ここではマーケティングを進める上でのベースとなる流れを紹介しますので、具体的なイメージを湧かせてみてください。
市場調査
初めに市場調査(マーケティングリサーチ)を行います。市場調査では主に以下のような点を中心に調べましょう。
- 商品やサービスのターゲットはどんな人か
- ターゲットの人たちは何を求めているか
- ターゲットの人たちが認知しやすい場所
- ターゲットの人たちが購入しやすい方法
このような点について、実際の市場の声を調査します。企業側の想像や思い込みではなく、市場の声を実際に聴くことが重要です。
たとえば、市場データ、口コミ、アンケート調査、SNSなどさまざまな方法によって生の声を拾います。現代では消費者の口コミ情報はインターネット上で簡単に調べられるので、現場からのフィードバックを重要視していきましょう。
また、市場調査を行うときには仮説を立てることも重要です。いきなり情報収集を始めるのではなく、社内である程度の仮説や見立てを立てておきます。
- 市場はこのような状況にあるのでは?(現状仮説)
- このような商品であれば売れるのではないか?(実行仮説)
このような仮説に実際の調査結果を照らし合わせることによって、マーケティングの問題点や改善の糸口が見えやすくなります。
クラスター分析とは?事例や手法を分かりやすく解説広告宣伝活動
続いては、自社の商品やサービスを知ってもらうための広告宣伝活動です。どれだけ優れた商品やサービスを作っても、人に知ってもらう機会がなければ購入者は現れません。適切なターゲットに商品やサービスの情報を届けていきましょう。
宣伝活動では、マーケティングファネルを理解しておく必要があります。ファネルとは漏斗(ろうと・じょうご)を意味する言葉です。人が商品やサービスの存在を知ってから実際に購入するまでの購買行動を、段階ごとに表しています。
- ①認知
- ②興味・関心
- ③比較・検討
- ④購入
まずは商品やサービスの存在を知り、興味や関心を持ちます。購入を検討したり他社商品との比較をしたりして、最終的に購入に至るという流れ。上から順に顧客数は減少していくため、漏斗のような形、つまり「ファネル」になっているというわけです。
商品やサービスを買ってもらうためには、認知の数を増やすことから始めます。認知される数が増えれば増えるほど購入数も増えることになるため、認知活動は効率よく多くの人に知ってもらえる方法を選びましょう。
Web広告の仕組みを解説!広告の種類/特徴/効果的な運用方法とは Web広告にはさまざまな種類があります。Web広告の初心者の方には広告の種類が多すぎて、どの広告にいくら出稿すればいいのかわかりませんよね?Web広告の種類と特徴、Web広告出稿時にやるべきことをわかりやすく紹介します。効果検証
市場調査や宣伝活動を行った後は、効果検証をしながらPDCAサイクルを回していきます。マーケティングは「一度やったら終わり」ではありません。戦略設計で定めた目標が達成できているかどうかを確認し、達成できていない場合はファネルの見直しを行います。
先ほどのファネルを元に検証することが重要です。購買数が少ないのは、認知・興味関心・比較検討のどこに課題があるのかを分析し、改善していきましょう。
このマーケティングの一連のステップには、手間と時間がかかります。効率よく効果的にマーケティングを進めるには、専用ツールを使って自動化していくのも良い方法です。
たとえば、既存顧客のセグメントや情報分析を行うツールや、顧客のリード化を自動で行うツールなど、マーケティングのプロセスごとにさまざまなツールが普及していますので、必要に応じて導入を検討してみてください。
時代によって異なるマーケティング手法
マーケティングは、それぞれの時代によって手法が異なっています。時代背景や人々の価値観の変化によって、製品やサービスが売れる仕組みも変わるもの。時代に合った手法を取り入れ、購買プロセスの見直しを行うのが肝心です。
マーケティング手法は、第二次産業革命に始まり、これまで3回の大きなアップデートが起こってきました。マーケティング手法の変容を振り返ってみましょう。
製品中心のマーケティング
製品中心のマーケティング(マーケティング1.0)とは「どのように商品を売るか」という考え方による、基本的な販売手法。不特定多数の大衆に向けて、商品の特徴やベネフィットを伝えて売る方法です。
製品中心のマーケティングでは、目的が企業側の視点になっているという特徴があります。製造管理やコスト削減など、よりたくさんの製品を効率的に製造することが第一の目的となっていたのです。
この背景には、第二次産業革命による大量生産・大量消費があります。製品中心のマーケティングでは、顧客より企業が優位な立場にある時代でした。
とくに需要が供給を上回っていた1900年代は「価格を下げれば売れる」という考え方が浸透していたのも事実。企業は安価で大量にものが売れる仕組みを作ることで、需要をコントロールできた時代でした。
現代でも古典的なマーケティング分析方法として知られる4P理論やSWOT分析など、この時代の考え方から生まれた基本のフレームワークが活用されています。
プロダクトマーケティングとは?マーケティングとの違いや意味、手法を解説消費者中心のマーケティング
大量生産・大量消費のマーケティング1.0によって、人々の健康や公害問題などが取り沙汰されるようになりました。
製品が売れても消費者に悪影響を及ぼすのでは意味がありません。そこで消費者中心のマーケティング(マーケティング2.0)へと考え方が見直されるようになったのです。この時代では、安全・安心という視点による消費者ニーズを満たしていくことが重要視されるようになりました。
1970~1980年代にはIT技術も進歩し始めたため、顧客のセグメントやパーソナライズなどを細かく分析できるようになります。ターゲットをより絞ったメッセージ性の強いマーケティングも可能になっていったのです。さらにこの時代には、顧客分析だけでなく競合他社との差別化も重要視されるようになりました。
消費者中心のマーケティングからは、STP分析や3C分析、ファイブフォース分析などが生まれ現在でも広く活用されています。
製品に対する価値中心のマーケティング
インターネットの普及によって、製品に対する価値を中心としたマーケティング(マーケティング3.0)が重要視されるようになりました。1990~2000年代にインターネットマーケティングやペルソナの活用が広まり、現代のウェブマーケティングにも引き継がれています。
インターネットが一般に普及したことで、消費者が商品やサービスに関する情報を自由に取得できるようになったのがこの時代。消費者は、企業のブランドイメージや社会的ポジション、他社との差別化など、製品そのものの価値だけでなく「企業のビジョンや社会的価値」も重視して商品を選ぶようになったのです。
企業は、製品や顧客の管理に加え自社の「ブランド管理」も意識したマーケティングをする流れになっていきました。ここで生まれたのは企業価値を評価するためのフレームワーク、3iモデルです。自社のブランドを3つの観点から評価し「他社とは異なるビジネスモデル」によって勝ち残っていくことが求められるようになりました。
自己実現を中心としたマーケティング
自己実現を中心としたマーケティング(マーケティング4.0)では、商品やサービスを通じて顧客が自己実現を果たせるかどうかを重要視します。これは、マーケティングの権威であるフィリップ・コトラーが提唱するもっとも新しい理論です。
ここで言う自己実現とは、チャレンジ精神やクリエイティブ思考を自分に反映させることを意味します。企業が提供するものによって、顧客が実現したい未来を達成できる、もしくは価値観に共感できるかを重要視し、3.0の「製品に対する価値中心のマーケティング」を補完するような形でアップデートされています。
マーケティング4.0のわかりやすい例は、インフルエンサーマーケティングやコンテンツマーケティングの登場です。社会や顧客に向けてプラスの影響力を与える人物を起用したり、顧客のニーズを満たすコンテンツを配信したりする方法が広まっています。
代表的な3つのマーケティング施策の種類
マーケティング施策は、主に以下の3つの種類に分かれており、インターネットを活用する方法から、古典的な対面マーケティングまで幅広い手法があります。自社の目標達成にどの施策が適しているかを判断するために、まずは基本の3種類をしっかり理解してみましょう。
マスマーケティング
ターゲットとする顧客のグループ分けを行わず、不特定多数の人に画一的なPRをする方法です。マス(mass)は英語で一般大衆・形を持たない集まりなどの意味を持ち、マスメディアやマスコミなど、大勢の人に向けて同じ情報を届けるという意味で使われています。
マスマーケティングはもっとも古典的な種類ですが、現代でもテレビやラジオCM、新聞や看板広告などさまざまな場所で行われています。商品やサービスのジャンルは非常に幅広く、生活消耗品から自動車や住宅などの高額商品、投資やクレジットカードなどの金融商品まで。
身近な場所で繰り返し目にする宣伝広告によって、商品やサービスの認知度を高め、顧客の第一想起を獲得することに狙いがあります。
マスマーケティングは多くの人に届けることができるぶんコストが高くなるため、多額の広告費を投資できる大企業が取り入れる手法です。
ダイレクトマーケティング
ダイレクトマーケティングとは、ターゲットと顧客との双方向のやり取りをするマーケティング手法です。
顧客と直接コミュニケーションを取り関係性を深めることで販売促進する方法。ECサイトや通信教育、メルマガ登録や資料請求、SNSのアカウントフォローなども含まれています。
ダイレクトマーケティングでは、適切なターゲットを定め、その人の生活や心理に見合ったコミュニケーションをする工夫が必要になります。顧客からの反応をもらえるため、マーケティングの効果を測定しやすいというメリットが特徴です。
ITが進歩したことでコミュニケーションが取りやすくなっただけでなく、自動化できる部分も増えたため、多くの企業で活用されています。
マスマーケティングと比較しても費用対効果が高く、効果測定と改善のPDCAを回しやすいので中小企業にも取り入れやすい手法です。ただしダイレクトマーケティングは継続することや時間をかけて長期的に実践する必要があります。
ゲリラマーケティング
ゲリラマーケティングとは、商品やサービスに関する大きなインパクトを与えることで販売促進する手法です。サプライズ的な要素によって、顧客に強い印象を残すことでエンゲージメントを高めるのが目的。型破りなマーケティング手法とも言われます。
たとえば日本では、ブランドや製品に関する議論や討論を促すバズマーケティングや、都会の街中に突如設置されるストリートマーケティングやアンビエントマーケティンがあります。インターネットが普及したことによって、ゲリラマーケィングの活用の場や方法の選択肢も広がりを見せています。
ゲリラマーケティングは斬新な発想とアイデアが重要なマーケティングです。低コストで実践できるので、中小企業や小さなビジネスでも取り入れやすい方法。ただし瞬く間に情報拡散されることでリスクも伴います。企業が伝えたいメッセージが正しく伝わらないと炎上するおそれもあるため、慎重な計画が求められるでしょう。
マーケティング基礎用語
ここからは、マーケティングにおいて重要な基礎用語の解説です。大まかな知識を入れておくことでマーケティングの全容が理解しやすくなりますので、ひとつずつチェックしてみてください。
AIDA、AIDMAの法則
AIDA(アイーダ)の法則は、消費者の購買心理の流れを表すもっとも古典的なフレームワーク。アメリカの広告唱道者であるセント・エルモ・ルイスによって提唱された理論です。
- ①Attention(注意)
- ②Interest(興味・関心)
- ③Desire(欲求)
- ④Action(行動)
消費者が広告を目にしてから実際に購買に至るまでの心理を、段階ごとに分けたマーケティング理論です。1~4の各段階ごとにマーケティング目標を設定し、状況に応じて変化させていくのが重要と考えられています。
AIDAのDesire(欲求)とAction(行動)の間に、商品やサービスについて記憶するMemoryを追加したものがAIDMA(アイドマ)の法則になります。商品やサービスを強く印象付け、消費者の記憶に残すことが重要と考えられたことから生まれたフレームワークです。
AIDMA(アイドマ)とは?活用シーンとAISAS(アイサス)の違いマーケティングミックス(4P)
マーケティングミックス(4P)とは、商品やサービスを市場に届けるために効果的な戦略論です。Pから始まる4つの要素を組み合わせることで、抜けや漏れのないマーケティング施策を考えることができます。
- ①Product(製品)
- ②Price(価格)
- ③Place(流通)
- ④Promotion(販売促進)
商品やサービスを売るときに必ず必要になる4つの要素を、それぞれバラバラに考えてしまうことも少なくありません。しかしこれらは互いにかけ合わせて考えることによって、妥当性を検討しやすくなります。
たとえば、この製品(Product)はこの価格(Price)に見合っているか?この価格設定で実現できる販売促進の方法(Promotion)は何か?といったように、4つのPが互いに関与し合っているという視点を持つことで、整合性の取れた戦略設計を実現するのに役立ちます。
4P分析、4C分析とは?違いと事例、テンプレート紹介3C分析
3C分析は、外部と内部の両面からマーケティング戦略を考えるためのフレームワークです。
マーケティングでは、商品やサービス、販売目標といった企業の内部的要因だけでなく、市場の動向や競合他社の影響といった外部環境にも目を向ける必要があります。企業努力でコントロールできない外部環境に対して柔軟な対応が求められるため、この3C分析が非常に役立ちます。
- ①Customer(市場・顧客)
- ②Company(自社)
- ③Competitor(競合)
3C分析は「戦略的逆三角形」とも呼ばれ、自社の強みや弱みなどの特徴を発見するのにも役立ちます。外部環境と自社の特徴を比較することによって、成功要因(Key Success Factor)を導き出すことが可能。3C分析を基本に、4C、5Cとアレンジやバリエーションを加えながら活用されています。
3C分析とは?3C分析の基本から分析手法・テンプレートを紹介 マーケティングフレームワークの基本中の基本である3C分析について事例とともにわかりやすく解説します。3C分析を理解すればあらゆるマーケティング戦略、営業戦略を考える際に役立ちます。ゼロから学んでみませんか?5A
5Aは、消費者のSNS利用が活発化している現代の購買プロセスを体系化した理論。消費者が簡単にインターネットにアクセスし、情報収集や発信ができる接続性の高い時代におけるマーケティングフレームワークとして登場しました。
- ①認知(Aware):広告や口コミを見る
- ②訴求(Appeal):ブランドに惹かれる
- ③調査(Ask):評判を調べる・比較する
- ④行動(Act):商品を購入する
- ⑤推奨(Advocate):レビューや口コミを発信する
5Aの特徴は、現代のマーケティング4.0時代を象徴する消費者の行動パターンです。商品やサービスそのものの魅力だけでなく、企業のブランドやカルチャーに惹かれること。また消費者が自ら評判を調べたり、他社との比較をすること。さらに商品購入後は感想を自ら発信するという流れができています。
これまでの「企業と消費者」という1対1の関係が取り払われ、友人や家族、SNSのフォロワー、比較サイトなどさまざまなコミュニティを通じて消費が行われていることを理解し、自社のマーケティング戦略へ活かしていく考え方です。
なぜマーケティングが必要なのか
さまざまなマーケティング手法や戦略設計に役立つ考え方を紹介してきましたが、なぜこれらが必要なのでしょうか。マーケティングが必要な理由を改めて理解することで、現代のビジネスにおける成功ポイントが見えてくるかもしれません。
モノやサービスが勝手に売れる仕組みが作れる
効果的なマーケティングを実施できれば、営業をしなくても商品やサービスが勝手に売れる仕組みを作ることができます。商品やサービスを消費者自らが選び、購入する仕組みを作ることは、消費者だけでなく企業にもメリットをもたらすものです。
マーケティングを実践しない場合、商品が売れるかどうかを「運」に頼らざるを得ません。人通りの多い場所でのチラシ配りや、手あたり次第の客引きといったものがわかりやすい例でしょう。商品やサービスを求めている人がどのくらいいるか、そもそもそこに求めている人がいるかどうかもわからない状況で、一方的に商品を営業し続けるのは企業にとっても多大なロスを生みます。
マーケティングを行えば、無駄な営業や強引なセールスをしなくても適切な人に適切なタイミングで商品を届けられるようになります。消費者にとっても企業にとっても良い循環が生まれるのです。そのためにはより消費者のリアルな視点に立ち、常に消費者の心理や生活に寄り添ったものの見方を養っていく必要があるでしょう。
消費者や市場のニーズがわかる
市場データやアンケートリサーチなどのマーケティング調査を行うことで、消費者や市場のニーズを知ることができます。効果的なマーケティングを実施するには、徹底的に消費者を理解することが必要です。それと同時に、消費者を理解するためには市場のニーズを知らなければなりません。
現代では、消費者や市場のニーズが実に多様化しています。高度経済成長期のように、国民の誰しもが同じ物を求めるような時代ではなくなりました。性別・年齢・地域などの属性が同じでも、人によって悩みや課題、価値観などはバラバラ。多様化するニーズを理解し、顧客一人ひとりに最適化した方法やタイミングで商品をPRすることが必要です。
顧客のニーズに合わせた商品やサービスを開発・提供できる
商品開発も、マーケティングの一部。マーケティングでは念入りな市場調査を行いますが、それは売るためではなく、売れる商品を作るためでもあるのです。
マーケティングでは「誰に・何を・どうやって売るか」を考えますが、「何を」の部分は商品開発にあたります。消費者や市場のニーズを十分理解することができたら、そのニーズに合わせて商品やサービスの開発・提供が可能になります。新しい商品の発想やアイデアが生まれていく好循環を作り出すことにもつながるでしょう。
マーケティングとは「消費者が欲しいと思うもの」を「欲しいと思う人」に「適切なタイミングと方法」で提供するという、事業全体の流れを最適化することなのです。
社会の生活様式や価値観、流行などが目まぐるしく変化し、人々の悩みや課題も常に変化しています。このような激動の時代において、企業がマーケティングを行うのはもはや常識ともいえるでしょう。
マーケティングはすべての人に必要な知識
マーケティングとは、商品を効率よく販売・提供する仕組みですが、その前提には「良い商品」「顧客や市場が求める商品やサービス」であることが必須です。商品の企画・開発から販売促進に至るそのすべての過程で、マーケティングの考え方が必要になってきています。
もはやマーケティングは、経営者だけが考えるべき問題ではありません。商品を提供する側だけでなく、消費者もマーケティングを理解することが必要になってきています。「なぜ自分がこの商品やサービスを選んだのか」「この商品にはどのようなマーケティング手法が使われているか」など、日常のあらゆる場面で意識すべきでしょう。
納得できる商品を選ぶこと、気持ちよく購入できる商品やサービスを選ぶことなど、我々の暮らしをより心地よくしていくために、マーケティングの知見が幅広く活用できるはずです。