日本国内の個人消費者向け物販分野のEC市場規模は、2020年時点で12兆円を超えました。過去5年間で約1.7倍に成長したこととなります。
日本国内の消費者向け市場におけるEC化率で見ても、過去10年間ほどは毎年0.5%前後づつ右肩上がりで伸び続け、2020年の時点で大きく増加し8.08%となりました。そして、さらに成長が見込まれている分野でもあります。
参照:経済産業省「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」P6
個人消費分野でのEC化率は、アメリカでは10%を、中国では35%を超えています。
日本のEC化は、まだまだ成長する余地が大きく残っています。それに加えて、新型コロナウィルスの流行によって、実店舗での売上が相対的に落ちこみ、ECサイトの重要性はより一層高まりました。
家電業界においても、ECの普及とコロナウィルス流行の影響は非常に大きなものとなっています。
まず、コロナウィルス流行により高まった巣ごもり消費は、家電市場全体にとって追い風となり、家電業界最大手のヤマダ電機は2021年3月度中間決算で、経常利益75.2%増としています。その他の主要家電量販各社もほとんどが大幅増益でした。
家電はもともとEC化率の高い分野でもあるので、コロナ禍による需要の変化、購買行動の変化により、家電分野のECはさらに普及していくものとみられています。
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目次
家電ECサイトの市場規模・市場動向
マーケティングリサーチ会社GfKの「2021年 家電・IT市場動向」によると、2021年の日本国内の家電小売業界の市場規模は7兆1,700億円ほどです。
その中で、経済産業省「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」によると、生活家電、AV 機器、PC・周辺機器等の2020年時点でのEC化率は37.45%と、消費者向けEC化率の平均8.08%の5倍近くとなっています。
実は家電はECサイトとの相性が良い商材なのです。
経済産業省「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」p.52より
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/210730_new_hokokusho.pdf
家電は型番や製品名での指名買いが多い商品です。同じ機能を持つ家電を探す際にも、カタログのスペックを比較して選びやすいジャンルでもあります。そして量産品なので、どこのお店で買っても品質は変わりません。
また、実店舗で商品を見て購入しても、大きなものは配達してもらう必要がありますので、実店舗で買ってもECサイトで買っても、手元に届くまでの時間に違いはありません。
これらの理由から、家電はECサイトで購入されることが増え、EC化率が上昇しています。ここからは家電業界全体の市場から、ECに絞った市場の動向を見てみましょう。
家電業界全体の市場について
家電小売業界の日本国内市場規模は7兆円から8兆円ほどです。大きな市場ではありますが、80兆円近い食品の市場や、10兆円弱のアパレル市場よりは小規模です。
また、食品や衣服といった生活必需品に比べると、不況の影響も受けやすいと言えます。
今後の国内家電市場の予測は、必ずしも明るいものではありません。中長期的に見ると、今後の人口減少による市場規模の縮小に加えて、単身世帯の増加によって必要な家電が小型化し単価が下がることも想定されています。
必要な家電はある程度普及していることも、市場が大きく成長しないであろう予測を生んでいます。さらに、テレビやパソコンなどのように、コモディティ化した家電は単価が落ちていきます。
1台でさまざまな機能を持つスマートフォンが普及したことで需要を失った家電もあります。特に映像機器や音響機器はスマートフォンに取って代わられ、需要が縮小傾向にあります。
とはいえ、家電は耐用年数による買替需要があります。また、共働き世帯の増加により、時短を促す生活家電の人気が高まりました。自動調理器やロボット掃除機、食洗機の普及率は上昇しています。
買替需要が市場規模を下支えし、廃れるジャンルに変わって新しい需要が生まれることで、急速な市場規模の衰退は起こらないでしょう。
家電量販店を展開する企業では、数年前から郊外型店舗の出店を増やす傾向がありました。都市型店舗の主なターゲットだった、都市部で働く人たちの家電に対する需要が鈍化し、売上が伸び悩んだことが理由の一つです。
特にパソコンなどの情報家電の需要が減ったと言われています。また、仕事の帰りや外出のついでに都市型店舗で商品を見て、帰宅後にECサイトで注文するショールーミングと呼ばれる購買行動も影響しています。
それに対して郊外型店舗の主なターゲットはファミリー層です。週末に家族で買い物に来るファミリー層を取り込むために、郊外型店舗が増える傾向にありました。
コロナウィルスの流行以降、この傾向は強まっています。
都市部へ買い物に出かけるのを避ける人や、リモートワークをする人が増え、都市部の店舗はさらに客足が減りました。外国からの旅行者が皆無になったのも追い討ちをかけています。
都市部に比べると、自宅から自家用車で買い物に行ける郊外型店舗は、まだ来店者の減少幅が少なくすんでいます。家で過ごす時間が増えたことで、いわゆる巣ごもり消費が喚起され、むしろ家電業界には追い風にもなりました。
このような都市部から郊外へという実店舗のトレンドの移動とともに、ECサイトの活用も家電業界の関心事となっています。ECと相性の良い家電は、ショールーミングや、ECのみでの買い物が非常に重要なチャネルとなるためです。
家電業界のEC市場について
家電業界のEC市場の規模は2020年時点で約2兆3,000億円でした。EC化率は37.45%となっており、個人向け市場全体のEC化率8.08%と比較して非常に高い水準にあります。
主な産業分野のうち、家電よりもEC化率が高いのは、1分野しかありません。
書籍・映像・音楽ソフト(42.97%)です。これらも家電と同じくECとの相性が非常に良い分野と言えます。
ただし、市場規模で見ると、書籍・映像・音楽ソフト(約1兆6,000億円)と、家電業界には及びません。
市場規模が家電業界と同程度に大きいのは、衣類・服装雑貨等(2兆2,000億円)、食品、飲料、酒類(2兆2,000億円)、生活雑貨、家具、インテリア(2兆1,000億円)の3分野があります。
これらの業界のEC化率は、生活雑貨、家具、インテリア(26.03%)と、衣類・服装雑貨等(19.44%)は比較的高くなっていますが、家電業界ほどではありません。食品は3.31%と平均EC化率よりも低くなっています。
参照:経済産業省「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」p52
家電業界はECの活用においては進んだ分野と言うことができます。
この傾向はコロナ禍においてさらに進んでいます。外出が自粛され、家で過ごす時間が増えたことで、おうち時間を快適にするための消費が促されたためです。
需要が増えたのは一般的な生活家電だけではありません。
外食が減ったことで調理家電へ需要が移ったり、レジャーや旅行が減ったことでテレビなどのAV家電の需要が増えたり、リモートワークをする人が増えたためにパソコンなどの情報家電が必要になったり、さまざまな効果がありました。
政府による特別給付金の使途としても、家電が選ばれるケースが多かったと予想されています。1人10万円というまとまった金額が給付されたので、比較的高額な家電が購入されることも増えたためです。
このような影響により、家電量販企業はコロナ禍において全体的に好業績を上げています。
家電ECサイトの売上高ランキング
『月間ネット販売』の調査「ネット販売白書」によると、2020年の通販での家電業界の売上高ランキングは、以下のようになっています。
1位:ヨドバシカメラ(約2,221億円)
2位:ビックカメラ(約1,487億円)
3位:ジャパネットたかた(約790億円)
4位:上新電機(約717億円)
5位:ヤマダ電機(約700億円)
参照:通販新聞ダイジェスト
ECサイトや通販に限定した売上高のランキングではありますが、家電量販店の実店舗を数多く展開している会社や、テレビ通販など複合的な事業展開をしている企業がランクインしています。
1位 ヨドバシカメラ
ヨドバシカメラは、ECの分野では家電業界で1位の売上高となりましたが、店舗を含む売上全体では業界5位となっています。業界1位のヤマダ電機の半分以下の売上しかありません。それでもECサイトで特徴的な展開で成功し、通販分野では1位となりました。
ヨドバシカメラのECサイトの一番の特徴はWEBに特化した利便性です。
商品検索がしやすく、購入手続きが簡単、配送も無料で競合他社のECサイトよりも早く届きます。インターネットやECサイトでの買い物に慣れた人を取り込む戦略を取った形です。
ヨドバシカメラは、ECサイトの弱点を克服するとともに、ショールーミングと呼ばれる消費者の行動を取り込みました。
ECサイトの弱点は、配送料と届くまでの日数です。ヨドバシカメラはそこを強化しました。配送料を無料にして、翌日に届けられる地域を全国へ広げたのです。
また、実店舗で商品を見るだけで購入せず、その後ECサイトで購入する、ショールーミングと呼ばれる消費者の行動を上手に利用しました。
ショールーミングは、実店舗では接客するだけで売上にならないので、できるだけなくしたいと考えられていました。
しかしヨドバシカメラは、店頭でECサイトのURLを紹介するなど、実店舗のお客様をECへ誘導してショールーミングを促したのです。
しかも、注文が簡単で届くのも早いので、競合他社の店舗でショールーミングをしたユーザーも取り込むことに成功しました。複数のECサイトを比較したときに、ヨドバシカメラを選ぶ人が多かったのです。
この戦略はヨドバシカメラだから取れたものとも言えます。実店舗数ではヤマダ電機やビックカメラに劣るので、ECサイトを軸に実店舗を含めたビジネス全体を組み替えることで、通販分野でのシェアを積極的に獲得できたのです。
ヨドバシカメラと同じように、業界内ではリーダーとは言えない企業がECサイトを運営する際や、最初からECサイトを軸としたビジネス構築を目指す際に参考となるでしょう。
2位 ビックカメラ
https://www.biccamera.com/bc/main/
ビックカメラはコロナウィルスの影響もあり、池袋の店舗の一部を閉店するなど苦戦した部分もありました。しかし、ECサイトは大きく成長しました。
2020年4月のECサイトの会員登録者数は、前年比で3倍にもなりました。コロナ禍で実店舗へ行って買い物するのを自粛する人が多かったのですが、それをECサイトが補填した形です。
その成功要因の一つは、実店舗とECサイトのポイントの共有です。
コロナ禍で買い物や旅行に行けずに、貯めていたポイントの有効期限が切れてしまうという問題が多くの業界で聞かれました。
しかしビックカメラは、実店舗を利用していた人たちが貯めていたポイントをECサイトでも使えるので、オンラインでの買い物に誘導できたのです。
それと同時に、ECサイトは初心者にも使いやすい構成になっています。
これまで実店舗を利用していた人を囲い込むためには、ECサイトでの買い物に慣れていない人でもスムーズに使えるようにデザインする必要があります。
トップページの上部に商品検索ウインドウが設置されているのは家電ECサイトの定番ですが、ビックカメラのECサイトではカテゴリーも大きく表示されています。欲しい家電のジャンルをクリックしていくことで、型番や商品名がわからなくても、検索が上手くできなくても、商品ページまでたどり着けます。
ECサイトでの買い物に慣れている人にとってはカテゴリーページは邪魔にも思えますが、初心者にとっては使いやすいデザインです。
既存チャネルにECサイトを加える際に、実店舗とECサイトが別々の部門として出来上がってしまっては、効果を打ち消し合うことにもなりかねません。相互に好影響を与えられる形で構築する必要があります。
ビックカメラのECサイトの展開は、多くの既存顧客や会員登録を持つ企業が、新しいチャネルとしてECサイトを構築する際に参考になるでしょう。
3位 ジャパネットたかた
https://www.japanet.co.jp/shopping/
ジャパネットたかたはテレビ通販で有名な企業です。ECサイトだけでなく、テレビ、カタログ、折り込みチラシなどを幅広く使って、通販の売上を生んでいます。
特にコロナウィルスの影響が大きかった2020年は、巣ごもり消費での家電需要の伸び、外出自粛による通販の伸び、その両方の追い風を受けて前年比15%増の過去最高売り上げとなりました。
ジャパネットたかたのECサイトの特徴は、その商品数です。多いのではなく、少ないのです。
かつては他の家電量販店のECサイトと同じく、多くの商品を揃えていました。しかし、2016年に商品数を約8,500点から約600にまで絞り込み、大きな方向転換を行いました。
2021年4月時点では700点を超えていますが、それでも家電業界の他のECサイトに比べると非常に少なくなっています。
ジャパネットたかたのECサイトは、この方向転換によって成功しました。
商品を絞り込んだ分、ひとつひとつの商品説明は詳しく、動画も使って丁寧に行えるようになりました。
テレビやチラシとの連携も深くなり、コールセンターでもECサイトの問い合わせでも、シームレスな応答ができるようになりました。
もともとテレビショッピングなどで商品の紹介と説明を丁寧に行い、欲しくなってもらうのを得意としていた企業です。そのジャパネットたかたらしさを、ECサイトにも適用した形になります。
ジャパネットたかたの事例は、企業が持っている多くのチャネルを同じ方針で運営する際に参考になります。
厳選した商品だけを販売しているセレクトショップが、ECサイトではロングテールを活かして商品数を増やし続けても、費用対効果は上がらないことが多いでしょう。それよりは、ECサイトも自分たちの強みを生かした設計にすべきです。
また、テレビショッピングを通じて蓄積した動画作成のノウハウも活かされています。
商品説明のパターン、時間、撮影方法など、統一されたフォーマットで量産し、商品の魅力を伝える構成です。ECサイトの運営方針にかかわらず、商品説明に動画を使いたい場合にも参考になります。
4位 上新電機
上新電機は関西を中心に家電量販店を展開しています。実店舗を含む売上全体では、家電業界で7位と、ヤマダ電機の1/4ほどに留まっています。
しかし、EC通販部門ではヤマダ電機を超える売上高となりました。つまり、上新電機の売上全体におけるECサイト経由の比率が高い、ということです。
コロナ禍においてもその傾向は強まり、2020年には実店舗での売上高はほぼ横ばいでしたが、ECサイト経由の売上は前年比で20%以上も増えました。
上新電機のECサイト展開で特徴的なのは、楽天市場やyahoo shoppingといった、ECショッピングモールの積極的な活用です。
楽天では「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2019」で「Joshin web CD/DVD店」がジャンル賞を受賞、「Yahoo!ベストストアアワード2019 年間ベストストア」では総合第2位を獲得しています。そして、2020年からは実店舗でも楽天ポイントとの連携を開始しました。
自社で集客を行える知名度のある企業は、ショッピングモールの活用に消極的なことが少なくありません。デザインや商品ページの構成などが自由にできなかったり、売上に応じて手数料が必要なので利益幅が減ったり、購入した顧客の情報が開示されなかったりする部分があるためです。
とはいえ、ショッピングモールの集客力は大きなものです。特に、ビジネスを展開しているエリア以外では知名度が低い企業にとっては、素早く展開するための足掛かりとなります。
上新電機は、楽天市場やyahoo shoppingを上手に利用することで、売上を拡大したと言えるでしょう。
特に家電のような、商品名や型番を検索する人の多い商材を扱う場合には、上新電機の手法は参考になります。ショッピングモールの抱えている会員へアプローチできることは魅力的です。
また、インターネット検索では自社ECサイトよりもショッピングモールの商品ページが上位に表示されることが多いので、企業としての知名度で競合に劣っていても勝負ができます。
5位 ヤマダ電機
https://www.yamada-denkiweb.com/
ヤマダ電機は、実店舗も含む全体での売上では業界首位、2位のビックカメラの倍近くの売上高を誇ります。実店舗数も日本で最多、2020年時点で678店舗を数えています。ビックカメラが44店舗なので、その規模の違いがわかります。
ただ、ヤマダ電機のEC分野での売上は業界5位に留まっています。これは、ヤマダ電機がECサイトの機能を、実店舗の補助として位置付けているためだと考えられます。
ECサイトで注文しておいた商品を実店舗で受け取れたり、実店舗のチラシに掲載されているセール内容がECサイトでも同時に展開されたり、オンラインとオフラインを連携させたサービスが行われています。
ECサイトのデザインも、実店舗を再現した形になっています。セールコーナーがあったり、新生活やテレワークといったキーワードで関連商品を紹介したりと、専用のページが用意されています。目当ての商品を検索して購入するだけでなく、実店舗でディスプレイされた商品を見るようにECサイトで買い物をすることができます。
このECサイトの作り方は、ECサイトのターゲットを、従来からのヤマダ電機の顧客に絞っている形と言えます。実店舗を軸としてビジネスを構築し、その補助としてECサイトを置いて、実店舗を利用している顧客に追加の利便性を提供するものです。
しかし逆に、ECサイトで独自に新規顧客を開拓するのに積極的ではないとも言えます。その結果がEC部門では売上高が5位に留まっている理由でもあるでしょう。
ヤマダ電機のECサイト運営は、実店舗などを主要チャネルとして持つ企業の参考になるでしょう。物販や飲食店、あるいはカタログ通販や訪問販売など、上手く行っている既存のビジネスを大きく変化させることなく、顧客の利便性を上げて、追加の売上も生み出すことができます。
また、将来的にはECがビジネスの軸となる可能性はあるものの、ECサイトをオープンする段階で一気にビジネス全体を作り替えるのはリスクも大きくなります。まずは、時間をかけて積み上げたビジネスを毀損させることなく、EC部門を立ち上げる際にも参考になる形です。
家電ECサイトに必要な機能
家電は型番商品と呼ばれます。いわゆる量産品のことで、JANコードや製品番号など、メーカーによって設定されたその商品を示すコードが用意されている商品です。
商品名が認知されていることも多く、型番で検索すれば間違いなく探すことができます。
そのため、ECサイトとの相性の良い商材と言えます。ただし、その分だけ競合も多くなりやすい分野です。
家電は、同じ商品が、たくさんの会社のECサイトで売られています。価格や送料、配達にかかる時間などがECサイトによって異なるので、ユーザーは複数のECサイトを跨いで見てまわり、比較検討して購入するケースがほとんどです。
多くのECサイトを見るため、サイトの構成や操作性がわかりにくかったり、ページの表示速度が遅かったりするだけで、離脱されてしまうことがあります。また、購入を決断するために後押しをする、プラスアルファの機能を充実させる必要もあります。
家電ECサイトに必要な機能を見てみましょう。
ユーザビリティ(UX)
ユーザビリティとは、ECサイト全体の使いやすさを表します。ユーザーにECサイトの操作の仕方がわからないと感じさせてしまうと、すぐに離脱されてしまいます。
とはいえ、家電のECサイトは商品数も商品ジャンルも多くなる傾向があるため、ECサイトにアクセスする人の目的はさまざまです。
商品を探して情報を得たい人、値引きやキャンペーンを確認したい人、買うものは決まっているので素早く購入手続きを済ませたい人、などなど。各ユーザーの行動それぞれに合わせて、ユーザビリティを向上させなければなりません。
デジタルメディアのリサーチを行なっているトライベック・ブランド戦略研究所の調査によると、家電を扱うECサイトのユーザビリティランキングは以下のようになっています。
1位 ビックカメラ
2位 楽天市場
3位 Amazon
4位 ヤマダ電機
5位 楽天西友ネットスーパー
商品数が多いECサイトなので、トップページの構成が明確で、ユーザーを正しく誘導するサイトが評価されます。
値引きやキャンペーンなどのタイムリーな情報をわかりやすく伝えているか。ランキングやレコメンドでユーザーの興味を引き出しているか。商品を整理して検索しやすくしているか。といったことが、トップページでは大切になります。
ユーザーが操作方法を考えることなく、スムーズに目的を果たせるECサイトを理想として、ユーザビリティをデザイン・改善しなければなりません。
ページ表示スピード
ページ表示スピードとは、文字通りECサイトのページにアクセスしてから、そのページが表示されるまでのスピードです。
検索結果をクリックしても、なかなかページが開かないという体験は皆さんしているでしょう。そのストレスもわかるかと思います。
また、googleによるSEOの評価も行われています。ページ表示速度の遅いECサイトは、同じ商品を扱っているECサイトと比べても、検索表示順位が下位になる傾向が強まってしまいます。
ECサイトにおいてページが表示されるスピードは大切です。ECサイトを構築する際には、ページのデザインや画像、商品情報やボタンの配置などに意識がむかいがちで、表示スピードは軽視されることが少なくありません。しかし、ページ表示スピードが遅いと、さまざまな損失が生まれます。
商品情報を見るとき、複数の商品を比較するとき、いちいち待たされるとユーザーは待てずに離脱してしまいます。さらに、購入したいと思っていたものでも、待たされているうちに決意が削がれてしまうこともあります。
アクセス数が多いのに購入率が非常に低いECサイトがあった場合に、購入方法や入力フォームの改善などはすぐに着手されますが、実は一番の障害はページ表示スピードだったということも少なくありません。
ネットショップ担当者フォーラムの調査によると、ECサイトの売上TOP200位までの中での表示スピードランキング上位はこのようになっています。
1位 セブンスター貿易
2位 家電のSAKURA
3位 秋葉原アウトレットプラザ
4位 激安家電販売PCあきんど
5位 GIGA
聞き慣れないECサイトが並んでいるかもしれません。特徴は、すべてPCや家電を扱うECサイトだということです。
家電分野のユーザーはインターネットの扱いに慣れていることも多いので、その感覚やニーズに応えるために表示スピードを改善した結果と考えられます。
また、このランキングには、6位にビックカメラ、7位にヨドバシカメラが入っています。商品数が膨大になるのでECサイトのスピードを向上させるのは難しいはずですが、よく健闘していると言えるでしょう。
ページ表示スピードを向上させるのは簡単ではありません。サーバーの性能を強化するだけでなく、ページの要素それぞれのデータ容量を軽減させたり、表示させる順序を組み替えたり、独特なノウハウが必要です。気になる際はぜひ多くの実績を持つNetral Worksへご相談ください。
ページ表示速度の計測方法/改善策を解説!SEOに重要な理由とは
ポイント・クーポン
家電を購入するユーザーのほとんどは、複数のECサイトを比較してから、実際に購入するECサイトを決めます。そのため、家電の価格はもちろんですが、ポイントやクーポンといった要素も含めて検討しています。
また、競合ECサイトに負けないためだけでなく、購入をまだ迷っているユーザーの背中を押すための方法としても、ポイントやクーポンは有効です。
ポイントは、商品代金の○○%をポイントとして還元する、という機能です。お客様は、購入すれば10%のポイントがつくならば実質1割引で買えるものだ、と感じます。また、ポイントが利用できるのは次回購入時なので、リピートにもつながります。
今ではほとんどのECサイトが導入していますので、もし商品価格を大幅に安くできるのでない限り、導入は必須の機能とも言えます。
クーポンは、基本的にはお客様が追加の値引きを受けられるものです。○○%OFFという形と、○○円引きという形があります。クーポンの利点は、使える商品や場面を限定できることです。
新規顧客が初めて購入するときには、会員登録などの手間が必要なので離脱が増えます。それを防ぐために、初めてのお買い物で使える割引クーポンを発行することが多くなっています。
その他にも、在庫が増えてしまった商品を期間限定で値引きして販売するため、その商品でのみ使えるクーポンを発行する。などの柔軟な運用が可能です。
Shopifyのクーポン発行方法については、下記のブログをご覧ください。
Shopifyのクーポンコードの発行方法を解説! 最適なクーポン施策のタイミングと成功のコツとは
配送料設定・同時購入制限
家電をECサイトで買う場合、ユーザーにとって商品価格も大切ですが、配送料も気になります。家電は大きなものも多いので、送料を含めた合計の費用で比較検討されます。
そのため、できる限り配送料は低く設定するのが、ECサイトを訪れた人の購入率を高めるために有効です。ヨドバシカメラは配送料の多くを無料にしたことで、競合よりもお得に感じるユーザーが増えて成功した事例です。
とはいえ、ECサイトを運営する側にとっては、配送料の負担も軽くはありません。配送料を安くできる商品や地域では低く抑え、高くせざるをえない商品や地域では別途設定する機能が必要です。
実情に合わせて細かく設定することで、利益の予測や確保がしやすくなります。
また、ECサイトは商品数が増えると、保管・発送する倉庫が複数になることもあります。その際には配送料の設定にも注意が必要です。多くのECサイトでは、○○円以上の購入で送料無料、といった設定をしています。
しかし、別々の倉庫の商品を同時に購入された場合には、発送も別々になります。その注文を送料無料にすると、利益が減ったり、ひどい場合には赤字になるかもしれません。
それを防ぐためのものが、同時購入制限機能です。同時に購入手続きができない商品を設定することで、上記のような配送料計算の混乱を防ぎます。
家電ECサイトにおいて取り組むべき差別化ポイント
家電業界は、商品をECサイトで買いやすいので相性が良いのがメリットですが、どのECサイトで購入しても商品は同じなので価格競争に陥りやすいというデメリットも併せ持っています。
ユーザーは家電商品を購入するごとに、複数のECサイトを比較検討した上で、その時々の価格や事情に合ったECサイトで購入する傾向があります。そのため、一度自社のECサイトで購入してもらったお客様でも、次回また購入してくれるとは限りません。
同じ商品を売っている以上、商品以外の部分でも自社のECサイトを選んでもらえる要素や、そのための工夫が必要となります。
購入後のサポート体制充実化
家電を購入する際には、価格の安さだけでなく、購入後のサポートも気になります。
特に大型家電では配送や設置、長く使う家電では保証内容が、比較検討時に重要な項目となります。ここで他のECサイトと差別化を図ることができます。
配送と設置については、その費用と届くまでの日数が大切です。
送料を含めた合計の価格はいくらなのか、実際に家に届いて使えるのはいつなのか。これらの要素が希望に合わなければ、商品価格が安くても比較時に振り落とされます。
ヨドバシカメラは、配送料を無料にして、翌日配送の地域を広げることで、強みを生み出しました。
家電を購入するとき、できればすぐに欲しいとなったら、まずヨドバシカメラのECサイトを想起する人が少なくありません。これが競合に対するアドバンテージになっています。
家電は消耗品ではなく、少なくとも数年間は使うことを想定して購入される商品です。そのため、単純に安ければ良いというだけでなく、購入後のサポート体制も気になります。
ヤマダ電機はECサイトでも実店舗で購入するのと同様の保証がつけられます。家電の多くは購入から1年間のメーカー保証となっていますが、ヤマダ電機は5年に延長することができるのです。その間は修理や交換が無料で受けられますので、価格にプラスされる価値と感じられます。
ブランディング
ブランディングは、ユーザーに「○○と言えば○○だ」と思い起こしてもらい、比較検討段階を飛ばしてすぐに購入段階に入ってもらう力があります。
家電を購入する場合、複数のECサイトで同じ商品が売られていることはお客様も知っています。しかし、いちいち複数のECサイトを見てまわって比較するのは面倒でもあります。
その時に、自分のニーズに合ったECサイトがわかっていれば、そこで購入することが増えるのです。
明日届くECサイトが良いと思えば、Amazonかヨドバシカメラをチェックするでしょう。楽天やビックカメラなどのポイント施策が有名なECサイトのポイントを多く持っている人は、まずそのECサイトをチェックするでしょう。
すべてのユーザーにとって最高のECサイトはありません。しかし、特定の目的を持ったユーザーにとって最高のECサイトになることはできます。自社のECサイトが何を強みにしているのか、どのような特徴が出せるのか、検討しましょう。
その特徴をアピールしてブランディングを行い、お客様に認知されるように努力すべきです。
ECサイトのブランディングの重要性と手順・方法
購入者ニーズに合わせた商品レコメンド
お客様それぞれに合わせた商品のレコメンドは、新規顧客を招き入れるためにも、リピート購入を促すためにも重要です。
Amazonや楽天市場などの巨大なショッピングモールでは、その商品数と顧客の行動データを活かして、商品レコメンドを行なっています。「この商品を買った人はこの商品にも興味を持っています」などと表示されるものが代表例です。ユーザーの購買履歴から、ニーズを推測して商品提案をしているわけです。
しかし、小規模なECサイトではそのような顧客行動データもなく、紹介する商品数も限られているかもしれません。ただ、その場合にも方法はあります。
まずは、生活の中での商品使用イメージなどを伝えるコンテンツです。
多くの家電ECサイトでは、「新生活家電」といった特定の状況を想定したページをつくって、複数の商品を同時に紹介しています。北欧、暮らしの道具店や無印良品などの特徴あるECサイトでは、「お部屋でくつろぐ」などのイメージから商品を紹介するページもあります。
次に、家電の中の消耗品の交換時期や、追加部品などをお知らせするレコメンドです。
空気清浄機を購入したお客様に、フィルターの交換時期をお知らせして、追加購入を促す。
スマートスピーカーを購入したお客様に、スピーカー経由で制御できる家電を紹介する。これらのレコメンドであれば、購入した商品しかわからなくても可能です。
やみくもに商品紹介を続けると、うるさがられて逆効果になってしまいます。お客様のニーズを予測して、それに合わせた商品のレコメンドを行いましょう。
レコメンドエンジンとは?仕組みと機能おすすめサービスを紹介
世界のEC市場規模
ここで、参考程度に世界のEC市場規模を見てみましょう。
参照:経済産業省「平成 30 年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)報告書」p160より
経済産業省によると、2018年の世界の小売市場規模は2,634兆円、そのうちEC市場規模は313兆円とされています。その中で、日本の占める割合はわずかに4%となっています。
家電ECサイトまとめ
ここまで、家電業界のECについて見てきました。家電業界はEC化が比較的早く進んでいる分野です。消費者もECサイトで家電を購入することに慣れており、市場規模も十分あると言えます。
また、コロナウィルス感染拡大の影響による生活様式の変化も追い風となり、家電ECはさらに拡大していく傾向が見られます。
家電ECサイトの売上高で上位を獲得しているのは、実店舗も広く展開する知名度の高い企業がほとんどです。
とはいえ、その順序は実店舗を含む企業全体の売上高に比例はしていません。つまり実店舗は少なくても、ECの分野に適応して売上を伸ばしている企業が複数あるということです。
そのような上手くいっているECサイトは、それぞれ特徴や強みを持っています。家電ECで売上を伸ばすには、そのECサイトならではの強みを活かしたブランディングが必要なのです。
しかしながら、ECサイト担当者は日々、幅広い業務を担当しなければなりません。
家電ECは商品数も増える傾向にあり、倉庫管理や発送作業も大変です。ECサイトを中長期的に改善していくためのさまざまな課題があることは自覚しているものの、それらひとつひとつに向き合って解決するだけの時間が取れないことも多いでしょう。
そのような状況でお困りでしたら、ECサイトの構築支援・運営支援を多数行なっているニュートラルワークスにぜひご相談ください。無料相談も受け付けております。
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