そしてDo(実行)のプロセスではアクションプランに対する達成度や不足要素、目標に対する成果や失敗などが数値で明確に見えてきます。これにより現状の課題や改善すべき点が明確になるのです。
ここからは、PDCAを失敗せずに回すポイントを見ていきましょう。
ポイント1.目標は数値で設定し、具体的な計画を立てる
最初のPlan(計画)のプロセスで、目標は数値で設定し、具体的な計画を立てるようにしましょう。PDCAが失敗する多くの要因は「目標が数値でわかりやすく示されていない」「計画がふわっとして具体性に欠けている」という点にあります。
「Web流入を増やそう」という目標設定より「広告バナー経由の流入を10%、動画広告経由の流入を20%増加させ、新規成約を10件獲得しよう」といった数的指標で目標を設定すると、アクションプランの計画も立てやすくなります。
ポイント2.無理のない計画を立て、計画通りに実行する
PDCAのすべてのプロセスで重要なのが、無理のない計画を立てることです。あいまいな計画・現状から飛躍しすぎた計画を立ててしまうと、Do(実行)のプロセスでどのような行動を取れば良いか分からなくなってしまいます。
たとえば現状で月間売上が500万円の店舗に対して「来月の月間売上5000万円」という目標を設定しても、適切なアクションプランを計画することは難しいでしょう。実効性の高い、具体的な目標・計画を立てることが大切です。
また、当初設定した計画通りにものごとを進めていくことも大切です。計画通りに実行していなければ、Action(改善)のプロセスでその計画の良し悪しを検証することができなくなってしまいます。
ポイント3.計画の進捗を定期的に確認し、評価する
PDCAのDo(実行)のプロセスで重要なのが、のちの検証のために活動記録を残すことです。PDCAでは計画の進捗を定期的に確認し、評価するAction(改善)が欠かせません。しかしPDCAは一般的に通常業務にプラスして導入されることが多いため、日々の記録を残したりPDCAを評価・確認する時間を取ったりすることが難しい場合もありますね。
PDCAの好循環を維持するために、毎週曜日を決めてPDCAを振り返る時間をルーティンに組み込むなどの工夫をしてみましょう。
ポイント4:4つのプロセスをしっかり意識する
PDCAサイクルをうまく回すコツは、4つのプロセスを意識することです。PDCAサイクルで失敗する例として、4つのプロセスを順番に通っていないことがあります。例えば、Plan(計画)とDo(実行)はできているのに、Check(評価)の段階で分析ができていないケースがあります。分析がおろそかになってしまうと、いくら計画を立てていてもうまく実行できません。
基本的なことではありますが、PDCAサイクルを取り入れる場合は順番にこなしていることを確認してください。
PDCAサイクルが古いと言われる理由
ここまでPDCAサイクルについて紹介しましたが、近年ではPDCAサイクルが古いと言われています。その理由は、Plan(計画)で時間がかかってしまい、スピードを出せないからです。IT技術の発達により、市場のニーズは刻々と変化しています。競合に打ち勝つには、ニーズの変化に対応できるスピード感が求められるようになったのです。
そこでPDCAサイクルを回していると、どうしてもPlan(計画)の過程で時間がかかってしまいます。するとせっかく計画を考えていても、Do(行動)に移す頃にはニーズが変化しているという現象も起こるのです。また、PDCAサイクルが古いと言われる理由を細分化すると、以下のように3つの理由が挙げられます。
- 改善までのサイクルに時間がかかる
- 新しいアイデアが生まれにくい
- PDCAを行うのが大変
ここからは、それぞれの理由について解説します。
改善までのサイクルに時間がかかる
PDCAサイクルを行うと、改善に到るまでに時間がかかってしまいます。それは綿密な計画に加えて、評価や改善にも手間をかけて取り組む必要があるからです。ところが近年のビジネスモデルでは、アップグレードを行って継続的にサービスを提供することが増えてきました。こうしたビジネスモデルは、そもそもPDCAの型にはまりにくく、合っていないのです。
新しいアイデアが生まれにくい
PDCAサイクルには、新しいアイデアが生まれにくいという側面があります。その理由は、PDCAサイクルがすでに実行した業務に対して評価と改善を繰り返していくモデルだからです。競合よりも魅力的な商品・サービスを作り出すには、時に前例のない取り組みが必要になります。ところがPDCAサイクルを回しているだけでは、新しい着眼点を取り入れる隙がありません。
PDCAを行うのが大変
そもそもPDCAサイクルを実行すること自体が大変だという特徴があります。それぞれの工程に時間がかかる上に、次のステップに移るには前の工程を完了させて置かなければなりません。スピードが求められるプロジェクトでは、PDCAサイクルが足を引っ張ってしまうこともあるでしょう。
組織の状態に合わせてPDCAを活用する
PDCAを効果的に取り入れるには、組織の状態に合わせることがポイントです。その理由は、KPIやそのための行動がまだ定まっていない状態でPDCAを行っても、うまくいかないことが多いからです。
例えば、新型コロナウイルスの影響により、多くの企業はこれまでとは異なる働き方を求められるようになりました。すると、どんな方法でプロジェクトに取り組むべきか探っている状態に陥るでしょう。そこでPDCAサイクルを回そうとしても、前例がないため改善のしようがないのです。こうした理由から、PDCAは組織の状態に合わせて活用することが効果的だと考えられます。
組織の状態を表す4つのステージ
組織の状態は、以下のような4つのステージに分類できます。
ステージ |
状態 |
転換のサイン |
探る |
KPIやそのための行動が定まっていない |
勝ちパターンの発見 |
回す |
方針や戦略などがある程度決まっている |
組織の硬直化 |
手放す |
決まったことをやることに弊害が出てくる |
安定した成長 |
仕込む |
成長が続いていて順調に回っている |
行き詰まり |
上記のような4つのステージを経過することで、勝ちパターンを見つけ、形式に当てはめられます。さらに外的要因などによってその形式に問題が出てくるようであれば、また「探る」の状態からサイクルを回していくことができます。
上記4つのうち、もっともPDCAに適しているのは「回す」です。このステージは、方針や戦略がある程度明確になっているため、何に対して改善を行うべきかが定まっているからです。
例えば、「探る」というステージでは、非対面による営業方法を一通り試しているとします。こうした試行錯誤を経て、SNSによる営業方法がもっとも効果的だと判明すると、「回す」というステージに突入します。ここでやるべきことが判明しているため、このSNSによる営業方法をさらに磨き上げることができるのです。
PDCAサイクルのデメリット
PDCAにはいくつかのデメリットがあり、各プロセスで失敗につながる要因があります。詳しく見ていきましょう。
Plan(計画)が上手くいかない理由
Plan(計画)のプロセスでつまずく要因は、具体性の欠如にあります。
- 現状把握や現状分析ができていない
- 設定した目標までのアクションプランが作成できていない
PDCAの基本は、計画と検証にあります。計画を実行し、それを検証することでまた新しい計画を立てていくPDCAサイクルでは、達成目標や数的指標を取り入れたアクションプランなど、具体性のある計画を設定できるかどうかが成否を分ける要因となります。
Do(実行)が上手くいかない理由
Do(実行)のプロセスでつまずく要因は、計画性の欠如にあります。
- とにかく根性で頑張ろう
- できることから優先で始めよう
このような計画性のない取り組み方は、良い結果を生みません。また、計画が長期になる場合、目の前の業務を場当たり的にこなす方法では、最終目標を意識できなくなってしまいます。短期目標を設定して計画を細かく分けるなど、PDCAを短めに区切る方法もおすすめです。
Check(評価)が上手くいかない理由
Check(評価)のプロセスでつまずく要因は、評価基準の欠如にあります。
このような抽象的であいまいな評価基準では、検証作業がうまくいきません。また、「〇〇君は優秀だから今回も上手くいっているだろう」などと評価者の個人的な主観によって検証結果がブレたり見逃しが発生すると、計画の進捗にも影響がでてしまいます。PDCAにおけるCheck(評価)は、数的指標や客観的な判断を用いて具体的な検証作業を行う必要があります。
Action(改善)が上手くいかない理由
Action(改善)のプロセスでつまずく要因は、実行力の欠如にあります。Check(評価)プロセスで具体的な改善点や課題が明確になっても、それに取り組む行動力やリソースが不足していれば、PDCAサイクルは途中で途切れてしまいます。
- 改善の可能性がある施策を試してみる
- 改善率が悪ければ、思い切って課題自体の見直しを行ってみる
問題に対して何らかのAction(改善)を行わなければ、最初のPlan(計画)は達成できませんし、次のPDCAサイクルを回すこともできなくなります。
PDCA以外に注目されている手法を4つ紹介
PDCA以外にも、以下のように注目されている手法が4つあります。
4手法の比較表
4つの手法には、以下のような違いがあります。
|
サイクル |
スピード感 |
OODA |
- Observe(観察)
- Orient(状況判断、方針決定)
- Decide(意思決定)
- Act(行動)
|
意思決定が早く、スピーディーに実行できる |
STPD |
- See(見る)
- Think(考える)
- Plan(計画する)
- Do(実行する)
|
事前準備に時間をかける |
DCAP |
- Do(実行)
- Check(評価)
- Action(改善)
- Plan(計画)
|
「Do」からスタートできるため、どのサイクルよりも早く行動できる |
PDR |
- Prep(準備)
- Do(実行)
- Review(評価)
|
プロセスが短いので、1サイクルが短い |
4つのサイクルについて知ることで、より効率的にプロジェクトを進めることができます。ここからは、4つの手法の中で特にPDCAと比較されることの多い「OODA」について解説していきます。
OODA(ウーダ)とは?各プロセスを解説
PDCAサイクルに変わって注目されている問題解決手法にOODAループ(ウーダ・ループ)があります。OODAは以下の頭文字を取ったものです。
- O:Observe(観察)
- O:Orient(状況判断、方針決定)
- D:Decide(意思決定)
- A:Act(行動)
OODAループはアメリカ空軍のジョン・ボイド大佐により提唱により提唱された意思決定と行動に関する理論で、以下のような流れで行います。
- 既存の品質管理や業務活動を観察し、データを収集する
- 観察をもとに状況を分析し、今後の方針を決定する
- 具体的な施策や行動などの意思決定を行う
- 実際に行動に移す
業務改善担当者やマネージャーなどがスピーディーに現状を把握し、改善策を実行するために用いられるのがOODAループなのです。
Observe(観察)について
「Observe」では、競合や市場を観察して、データを収集します。ここでポイントとなるのは、顧客にはどんなニーズがあるかを見極めることです。プランに執着せず、臨機応変に対応できるような柔軟さが必要です。
Orient(状況判断、方針決定)について
「Orient」では、「Observe」で収集したデータをもとに、方針や方向性を決定していきます。この工程でのポイントは、スピードを意識することです。早ければ早いほど、このループをスピーディーに進めることができます。
Decide(意思決定)について
「Decide」では、「Orient」で決めた方針に沿って具体的な計画や施策を決定します。このプロセスでは、以下2つの点をクリアしましょう。
これらについて決定したら、次のプロセスに移行します。
Act(行動)について
「Act」では、「Decide」で決定した施策を実行します。ただし、必ずしも施策にこだわる必要はありません。もし成功する見込みがなかったり、ニーズが変化していたりする場合は、「Observe」からループをやり直しましょう。
OODAのメリット・デメリットとは
OODAには、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
- スピーディな対応ができる
- 状況の合わせた柔軟な対応ができる
- 顧客のニーズに合わせた対応ができる
デメリット
- 情報収集が不十分になりやすい
- 組織がバラバラになりやすい
- 1人の責任が大きくなりやすい
ここからは、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
メリット1:スピーディな対応ができる
OODAを用いると、スピーディな対応ができます。それは、現場での判断で行動を起こせるからです。1回きりの行動ではないため、計画を上層部に判断してもらう必要がありません。こうした特徴から、早く目標を達成できます。
メリット2:状況の合わせた柔軟な対応ができる
OODAは他のサイクルに比べて状況に合わせて柔軟な対応ができます。上記でも解説したように、「Act」の段階で成功の見込みがなければ「Observe」からループをやり直せます。すると、その都度必要な計画を実行できるようになるのです。
メリット3:顧客のニーズに合わせた対応ができる
顧客のニーズに合わせて対応できることも、OODAのメリットです。OODAでは、計画を実行するごとに上層部の意思決定を待つ必要がありません。顧客のニーズを早く満たせると、市場競争にも勝ちやすくなるでしょう。
デメリット1:情報収集が不十分になりやすい
OODAはスピードが出せる分、情報不足になりやすいというデメリットがあります。市場観察から計画までのプロセスが早すぎて、組織で情報を共有できないことがあるからです。情報収集を十分にこなすには、単独で決定するのではなく、チームで共有して判断するように心がけましょう。
デメリット2:組織がバラバラになりやすい
OODAは個人で用いられるため、組織がバラバラになりやすいという側面もあります。それぞれがスピード感を持ってループを回してしまうと、組織の統制が取れません。そのため、方針は組織で統一するようにしましょう。
デメリット3:1人の責任が大きくなりやすい
OODAでは自己決定ができる分、1人の責任が大きくなりやすいという特徴もあります。1人でループを回すため、周囲の人が気付きにくいのです。そこでチームのリーダーはメンバーが1人で抱え込まないように気を配る必要があります。
OODAループとPDCAサイクルの違い
PDCAサイクルとOODAループには、どのような差があるのでしょうか。2点の具体的な違いを解説します。
1点目の違いは問題解決の流れです。PDCAではまず目標とアクションプランという計画を立てることから始まるのに対して、OODAではまず現状をありのまま分析することから始まります。
2点目の違いは問題解決の方法です。PDCAでは当初の計画を見直しながら改善点を考えるため、既存の施策やリソースの範囲内で改善策を見つける傾向があります。
対してOODAでは計画策定ではなく方向性を示しそれに沿った行動を考えるため、既存の施策に縛られない新しい解決策を見つけられる可能性が高いのです。
主に品質管理の世界で成果を出してきたPDCAサイクルですが、環境の安定した品質統制の世界ではなく外的要因の多いマーケティングやサプライチェーン、人事などの世界では「想定外」の事態が起こりやすく、PDCAの手法では対応できないことも多いのです。一方OODAループは外的要因が絡んだり想定外のことが起きたりする状況でも有効な手法といえます。
PDCAサイクルとは?のまとめ
PDCAサイクルはトヨタ自動車やソフトバンクなど大手企業ても取り入れられている手法です。ただし、中途半端な計画を策定すると失敗につながりますし、PDCAサイクルが会社内のすべての部門に適した問題解決手法というわけではありません。
部門や課題によってはOODAループなど別の手法を取り入れながら、自社の目標達成に向けて業務改善を「続ける」ことが大切です。また、PDCAサイクルやOODAループはWebサイト制作やリニューアル、ランディングページ制作にも活かせます。
ニュートラルワークスではどの打ち手をどう試し、その結果から成果に繋がるWebマーケティングをサポートしておりますので、お困りごとがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。