ECサイト

最終更新日: 2024.04.01

3年間で顧客数10倍!急成長したShopifyのマーケティング戦術

3年間で顧客数10倍!急成長したShopifyのマーケティング戦術

Shopifyは世界トップクラスのECプラットフォーム。3年間で顧客数を10倍に伸ばしたという実績を誇る企業です。この記事ではShopifyのプロダクト担当最高責任者 グレイグ・ミラー氏によるマーケティング戦略のインタビュー内容をまとめています。

三木 五月

監修者

Twitter:@satsuki_miki
神奈川県の湘南でデジタルマーケティングの会社を経営しています。湘南をシリコンバレーのようにしたく、社員一丸で突っ走っています! 座右の銘は「好きこそものの上手なれ」。成熟した文化、自然豊かな湘南で一緒に働いてくれる仲間を絶賛募集中です。フルリモートOKです。詳しくは採用ページをご覧ください。

QUERYY(クエリー)編集部

執筆者

株式会社ニュートラルワークス

QUERYY(クエリー)編集部

QUERYY(クエリー)は、株式会社ニュートラルワークスが運営するデジタルマーケティング情報メディアです。

目次

Q1:Shopifyとは何かについてご説明いただけますか?

Shopifyは当初、ECショッピングカートという形でスタートしましたが、時代の変化に伴って現在のECプラットフォームに変化しました。

ECプラットフォームとは、自分のサイトで商品を売りたい人に向けたサービスです。Shopifyに登録すれば、誰でも簡単に自分のネットショップをオープンさせることができます。独自ドメインでのサイト開設が可能なのはもちろんのこと、カスタマイズも簡単です。サイト上で商品を販売するだけでなく、POSシステムを使えば実店舗での販売もできます。

Q2:現在までで、どれくらい成長しましたか?

私がShopifyに入社した当初は、13,000人の顧客数でした。そこから3年間のうちに13万件にまで成長し、10倍の成果上げることができたのです。現在は100万件の店舗を運営支援しています。

Q3:成長チームを結成したときのことを教えてください。

私がShopifyに入社したとき、マーケティング部門はとても少人数でした。それに加えて、メンバー全員が何をすべきか、何を目指したらよいのかわかっていない状態だったのです。マーケティングをするということはわかっているのですが、ゴールの設定やメンバー同士の目的合意がされていない状態です。

私は、早い段階でこのチームを内部改革することにしました。そこででます、マーケティングチームという名称から「成長チーム」という新しい呼び方に変更したのです。成長チームという名前にすることで、マーケティングの経験がない社員や知見の浅い社員でもチームに入りやすくなるという流れも生まれました。

初期メンバーは当初3人だけだったので、人数も増やしました。デザイナー・開発者・解析者などを参加させたのです。成長チームという名称にすることで、メンバーそれぞれも自分自身のやるべきことが明確になったようです。それと同時に、一般のマーケティングチームの既成概念を取り払うことにもつながりました。

マーケティングチームに入るということが、どういうことなのか誰も答えられないケースは多いのではないでしょうか?しかし「成長チーム」とすることによって、その不明瞭な部分がはっきりしてくるのです。

Q4:私のマーケティングチームにいる同僚は、開発者やデザイナーをチームに引き込もうとするんですが、結局みんなソフトウェア開発チームに引き戻されます。これはどうやって解決すれば良いでしょうか?

チームでやっていく時間が長くなればなるほど、チーム内の目標は部門ごとの成長ではなく、会社規模での成長になってきます。すると、マーケティングチームに入りたがる社員の数は増えていくはずなんです。逆に、他のチームへ異動していく人は少なくなります。

これはなぜでしょうか?我々の成長チームに入ったデザイナーの話を例にとって説明してみます。まず彼らに、自分たちが行った仕事によってどの程度の変化が見られたのかをABテストを使って示しました。すると、自分たちの会社への貢献度がはっきり可視化されるため、デザイナーのモチベーションが高まったのです。それからはチームから人が抜けていくという問題が起こらなくなり、むしろ入りたがる人が多すぎて困るほどになったのです。

当然、入りたての頃は苦労もしますし努力も必要です。私の場合、当初Shopifyという会社そのものがマーケティングの重要性を意識していない状態でした。「あの競合他社は、マーケティングに力を入れているから生き残っているんだろうな」「マーケティングをやっている企業もあるよね」という程度の軽い認識です。

ですから、マーケティング部門も技術職などと同じように「自分が本気になれば人がついてくる」という精神で仕事ができるようになることが重要です。そのようなモチベーションをもつよう、社員を教育するには「個人がそれぞれの違いを発揮し、何かを生み出すことができる」という事実を理解してもらう必要があります。マーケティングの目標は、顧客にサイトへの登録を行ってもらい、商品を購入し実際に使ってもらうまでの一連のプロセスがあります。顧客をゴールまで到達させるのは、商品を作ることよりも難しいでしょう。かなり踏み込んでいかなければならないことが多いため、社内の教育にもっと力を注いでもよいのではないでしょうか。

Q5:成長チームと商品開発チームの線引きが曖昧になったりしませんか?聞いていると、本来は商品開発が行うようなオンボーディングや商品を使ってもらうための対策を、成長チームが行っているように感じるんですが。

確かにその通りだと思います。多くの企業では、マーケティングと商品開発の部門に線引きをしていますよね。しかし、私にとってのマーケティングとは「買ってもらうプロセス」だけのことを指しているわけではありません。顧客に購入してもらって初めて商品になるという考え方をするので、個人的にはマーケテイングと商品開発の間に妙な線引きはしないのです。

Shopifyの成長チームの場合、商品開発部門へのアクセス権限があります。成長チームは本来マーケティングチームですが、日々商品の中身を変更することもできます。皆、会社規模の成長のために動いているからです。ひとつの商品を手にする顧客にとって、商品を作る人がマーケティング部門であっても商品開発部門であっても、その違いなどどうでもいいはずですよね。社内で同じ考えを共有し、目的合意していることが重要なのだと思っています。

Q6:ではその壁をどう壊していけばいいでしょうか?マーケティング部門と商品開発部門があるんですよね、、ちょっとしたプロジェクトを行うだけでその壁は崩れていくものなのか、もう組織文化自体を変えることが求められるんでしょうか?

私の経験上、部門ごとの壁を壊すのはとにかく積み重ねでしかないと感じます。一夜ですべてが変わることはありません。

Shopify.comのサイト運営が始まった当初、サイト構築はデザインチームの領域だったので、サイト内の変更をお願いしても「いったん考えさせてください」という返事ばかりでした。そこで、いくつか変更を依頼して、その変更に対してどのような変化がみられたかを提示することにしたのです。「商品ページのタグはこうしてみては?」「コンテンツはこのようにして欲しい」など、要望を出します。変更が受け入れられた場合、結果的にどのような変化が表れたかというビフォーアフターを提示していくのです。アナリティクスの解析結果を、A/Bテストのような形で報告していきます。具体的な数字の増加を「証拠」として見せることで信頼を得ていくことができます。少しずつ信頼を獲得すれば、逆に今度は向こうから「他に何か改善できることはないか?」と聞かれるようになり、次第に壁がなくなっていくのです。

これはサイト構築だけでなく、商品に対しても同じことがいえます。最初は商品開発とマーケティング部門もはっきりと区切られていたのですが、私はその枠を飛び越えて発言するようにしました。「商品の違う箇所をテストしませんか?」「ユーザーが登録するときに最初に目にするページのテストが必要だと思います」などと。実際にテストした結果良好な結果が出たため、その後も継続的に試していったのです。

やはり、一朝一夕に線引きがなくなったわけではありません。認めてもらえるまでには時間がかかりましたが、その手助けになったのはデータでした。データは多ければ多いほど、第三者目線の指標として説得力が増します。

Q7:では成長に向けたプロセスはどのようなものかお話しいただけるでしょうか?ファネルとして考えたときにそれぞれの段階がありますが、商品とはあまり関係のない、上の段階から始めていくのでしょうか?それぞれの段階を改善するときには、全体の見直しになるか、各段階それぞれで対応していくのかどちらでしょう?

私が重要視しているのは、一番簡単な方法を考えるということです。一番簡単な達成方法、一番簡単な改善方法はどれか? という観点でファネルを見ていきます。基本のマーケティングファネルには、各段階ごとのステップがありますよね。顧客は①サイトに訪問してもらう②店舗に興味をもってもらう③商品を見てもらう④購入してもらう、という各プロセスを通ります。その中で顧客は、特定の段階だけで離脱するのではなく、各プロセスごとに離脱しているのが実際です。つまり、各プロセスごとに改善の余地があるということです。

①のサイトに訪問してもらう段階では、やはり広告が有効なのでいろいろ試します。AdWordsのキャッチコピーを変える、入札するキーワードを変更するなどさまざまな施策がありますよね。ただ、実際に顧客にサイトを訪問してもらっても、サイト内にはページが複数あってそれぞれ訴求方法が違っているという点に目を向けることも重要でしょう。

多くのサイトでは、ひとつのコンテンツが突出していて他のページの詰めが甘かったり疎かになっていたりすることがよくあります。AdWordsの戦略がうまくいっていても、ランディングページの見直しをしていなければ顧客はサイトを離れてしまうのです。
だからこそ、ファネル全体を見て「何が一番簡単にできるか」「簡単に直すことができるのはどこか」を考えていくのです。ファネル全体を見通さないと、もっとも簡単な改善方法はわかりません。

トラフィックをこのような視点で見ていくことによって、サイトや商品はより強く成長します。私は自分自身でShopifyに登録し、すべてのフロー見直しを行っています。1年間で1,000回くらいは登録しているでしょうか。自分の目で動線を確認しながら試行錯誤を繰り返しています。

Q8:うまくいく方法を見つけても、何度も繰り返せば使い古しになるというリスクもありますよね。ミラーさんの戦略では、なぜうまくいくかをきちんと理解したうえで繰り返していると感じます。成功を重ねることと、繰り返しのやめどきをどこで線引きしていますか?

私は数字を重要視し、解析結果にこだわっています。私の基盤となっているのは、マーケティングではなくエンジニアリングです。実際マーケティングを学んだこともなく、書籍を読んだこともありません。ファネルに明確な評価基準があれば、各ポイントに対しての解析結果をみればある程度の答えは出ます。データをみれば施策へのリターンが少ないことや、別の箇所を見直す必要はあることにも気づけます。なんとなくで動くのではなく、データを根拠に用いることで無駄を省けるのです。

例えば、解析結果の数字が50%低迷したとします。まずは10%になるまで改善をしていきますが、力を注いでも10%が9%になるという変化では大きな効果が見込めないと判断できます。これ以上時間や労力を割く必要はないと、数字からしっかり読み取れます。解析データをもとに、今どこに時間を使うべきかという優先順位や、労力・金額などの見返りを予測しながら進めています。

Q9:一般的にマーケティングだと思われていないけれども、ミラーさんにとってはマーケティングだと考えていることは何でしょうか?何か例を出してもらえますか?

違いを認識することが、マーケティングの一種であると捉えています。ユニークであること、一般とは違うことなどです。他と違うということには、顧客を増やす可能性が秘められており、そこからいい結果につながると考えているのです。

例えば、Shopifyの利用規約には左側に弁護士による規約が書かれており、右側に専門用語の解説があります。ほとんどの企業ではこのような工夫は考えつきもしませんが、これも他と差をつけてサービスをよくするための工夫です。すると多くの人が「Shopifyの利用規約は素晴らしい!」「こういう人手間をかけてくれる人がもっといればいいのに」と、twitterで拡散するようになりました。

他には、Shopifyのログアウト画面も少しユニークです。普通は「サイトをログアウトしました」とだけ表示されることが多いです。しかしShopifyでは「良い朝・お昼・夜をお過ごしください」との表示がされます。表示語句の変更にプラスして、Shopifyの関連商品も表示させています。たったこれだけの変更ですが、評判はとてもいいです。Shopifyのログアウト画面がとても好きだという意見をよく耳にします。

「違う」ことをするには、会社全体にこのような考え方を文化として浸透させることが必要です。少し違った考えや変わった発想をもち、さらにもう少し踏み込んで、普通とは違ったアイデアを見出します。

サイト構築に全力を注ぐのは当然のことであり、そのエネルギーを会社全体に流していくことが大切です。会社を成長させる方法を経営陣だけが考えるのではなく、社員全員が考えるような状態にするのです。しかしそれは、がむしゃらに努力することとは違います。少しおもしろく変えてみることや、普通とは違うところに力を入れてみるなどの具体的行動を起こすことが重要なのです。

Q10:こういった努力によってマーケティングが成功したのは、他のグループと手を組んで行った結果なのか、それともグループは個別で動いていたのか、どちらだったんでしょう?

一概にはっきりさせることはできませんが、私たちが他のグループに対して仕掛けていったという部分もあります。プロジェクトに対して踏み込んでいったり、すでに完成したページに対しても見直しや改善の要求をしました。そうすることでクリエイティブな考えを浸透させたいと思ったのです。

自分たちは、チーム内で十分にこのようなことをやっていたので、今度は他の人も自発的に行動したり、意見したりするように仕向けたというのもあります。実は、少し変わった考え方をしたり、印象的なことをやったりするというのはそこまで大きな負担になることではないのです。Shopifyの場合は、元々実業家出身という人も多かったので、自発的な行動や斬新な発想が遺伝子レベルで組み込まれている人も多かったです。ですから、他グループと手を組むことと、グループ個々の動きと、両方の影響があったと考えています。

Q11:試す価値という点で、成功から失敗までのレベルがあると思います。失敗に対してはどのように対処しますか?またそこからどう立ち直りますか?

私は、自分の考えを行動に移すのは正しいことであり、仮にうまくいかなければ素直に謝ればよいという考え方をしています。以前eBayで働いていたときに「許しを請う」という言葉をよく耳にしていたんです。世紀の大失敗になるようなことはそうそう起こらないという心構えが重要だと考えているのです。

会社は、成長して規模が大きくなるにしたがってリスクをとることを怖がるようになります。中小企業は失うものがないので、もっと成長するためにリスクをも恐れません。私としては、社員にもこのようなモチベーションをもってほしいと考えているのです。皆がよい心構えでいられれば、社内で失敗があってもトラブルにはなりません。時間やお金を多少失っても、責められるべき問題ではないでしょう。

一方で、Shopifyの中でトラブルと捉えられるのは「何もしていない」ということです。「やるべきか」「やらないほうがよいか」を考えすぎてしまい、5分で終わる作業に何時間もとられてしまうこと。また、それを実装するとなれば何週間もかかるので、考えすぎることをやめましょうと話しています。

データを根拠としてまずはやり抜く。うまくいかなければやめればいいというシンプルな文化を、社内に浸透させることが重要です。ひとつのプロジェクトのプレゼン資料を作るのに丸1日費やしてしまう人ばかりの会社になっては困ります。来年や四半期の構想を漠然と語る人がいたら「明日は何をしますか?」「次回はどうしますか?」という直近の質問をするようにするなど、組織文化を変えていくことが重要だと思います。

Q12:まとめとしてアドバイスをいただけますか?私の友達がもうすぐ、成長中の企業のマーケティング担当になるんです。1~2文程度で大丈夫です。

大事なのは、仕事に集中することです。企業の中では、意識が他にもっていかれてしまうことも多いでしょう。しかし、あなたの仕事が会社を成長させることにつながるなら、それに集中してみてください。

Q13:こういったマーケティングを学びたい人向けに、参考にするべき企業は他にありますか?よく読むオンライン記事やぜひチェックするべきものなどを教えてください。

私はtwitterからアイデアをもらっています。twitterの投稿を読むのには時間を割いています。ただ、企業でもチームでも人でも、皆それぞれ適しているものは違うでしょう。ですから、学べるものからは何でもどんどん吸収して、できる限りのチャレンジをしていってほしいです。それがうまくいくようなら繰り返し実践し、失敗したらその失敗から何が学べた野かを考えてみてください。

まとめ

以上が、Shopifyのグレイグ・ミラー氏へのインタービューの全貌です。マーケティング戦略について語っていますが、エンジニア出身のミラー氏ならではの着眼点は見逃せないポイントになっているでしょう。マーケティングの域を越えて、組織改革や人材育成などについても役立つ内容でした。サイト構築や解析結果の分析など、専門的な知識を必要とする施策についても語られていますが、知識や経験に乏しい場合はWEBサイト製作の専門家にアウトソースするのもひとつの方法です。

ニュートラルワークスは、トレンドを抑えたデザインで徹底的に「成果」にこだわったECサイトを構築いたしますので、ぜひ一度ご相談ください。あなたは競合と差をつけることができ、それが更なる顧客獲得・売上増加に繋がります。Zoomなどのオンライン相談(無料)をやっておりますので、まずはこちらのお問い合わせページよりお気軽にお問い合わせください。ご連絡心よりお待ちしております。

監修者紹介

三木 五月

三木 五月

代表取締役社長

Twitter:@satsuki_miki
神奈川県の湘南でデジタルマーケティングの会社を経営しています。湘南をシリコンバレーのようにしたく、社員一丸で突っ走っています! 座右の銘は「好きこそものの上手なれ」。成熟した文化、自然豊かな湘南で一緒に働いてくれる仲間を絶賛募集中です。フルリモートOKです。詳しくは採用ページをご覧ください。