ECサイトの制作やリニューアルに利用できる補助金について、このようなお悩みをお持ちの方は少なくありません。
補助金は、事業者の費用負担をおさえる有用な制度です。ECサイト制作やリニューアルには大きなコストが発生するため、使える補助金があれば申請するのがおすすめ。
そこで本記事ではECサイト制作やリニューアルに利用できる補助金について解説します。記事をお読みいただくことで、補助金制度の内容、選ぶポイントと申請の注意点を把握いただけます。補助金制度についてお悩みの方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
今回紹介する補助金制度は5種類です。対象者や特徴などを下記にまとめました。
目的 | 対象 | 補助金額 | |
---|---|---|---|
IT導入補助金 | ITツール導入にかかる経費の支援により、中小企業・小規模事業者などの生産性向上を実現 | ・個人事業主 ・小規模事業者 ・中小企業 |
原則として最大450万円 ※枠の種類による |
事業再構築補助金 | 新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者の事業再構 築を支援し、日本経済の構造転換を促す |
要件を満たす中小企業・中堅企業など | 100万~1億円 ※従業員数によって異なる |
小規模事業者持続化補助金 | 小規模事業者の生産性向上および持続的発展の実現 | 従業員数に関する条件を満たす小規模事業者 | 最大100万円 ※型によって異なる |
ものづくり補助金 | サービスや商品開発などの取り組みや、生産プロセス改善に必要な設備投資などの支援 | 資本金・従業員数に関する条件を満たす小規模事業者・中小企業 | 100万~3,000万円 ※枠や従業員数によって異なる |
各自治体の補助金 | 自治体・制度による |
補助金と似た制度に「助成金」があります。一見よく似ていますが、実はまったく別の制度となっています。
補助金 | 助成金 | |
---|---|---|
交付主体 | ・国(経済産業省) ・地方自治体 |
・国(厚生労働省) ・地方団体 |
申請期間 | 数週間~1か月程度 | 月単位・年単位の長期 随時募集している制度も有 |
審査 | 有 運営事務局による審査に合格した人に支給される |
無 決められた条件を満たしていれば支給される |
企業向けの制度では、Webサイトの立ち上げやバックオフィスのIT化など、設備投資に使える補助金が多いのが特徴です。
一方、働き方改革や中途採用など雇用環境の整備には助成金が多い傾向にあります。ちなみにECサイトの制作やリニューアルに使いやすいのは、助成金より補助金です。
補助金申請時にはGビズIDプライムを準備する必要があります。GビズIDとは、法人・個人事業主に向けた共通認証システムのこと。
また、補助金の申請は電子申請システム「jGrants」で行うケースが多いです。GビズIDには以下のように3種類あります。
行政手続きによって必要なアカウントが違うため、事前に申請したサイトなどで確認してください。なお、今回紹介する補助金は、基本的に申請のためにGビズIDプライムが必要です。申請から発行までに1週間程度かかるため、早めにアカウント取得を行いましょう。
国の補助金のうち、ECサイトの立ち上げやリニューアルに利用できる補助金は複数あります。ここでは代表的な補助金5つを詳しく解説します。
引用:IT導入補助金
もっとも有名なのが、IT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業)です。経済産業省の補助金で、中小企業・小規模事業者等が対象になります。
ECサイトの立ち上げやリニューアル、バックオフィスのIT化といったITツールによる業務工程の非対面化を後押しするための制度です。
IT導入補助金の対象事業者は以下のとおりです。
またECサイト関係であれば、下記のような費用が対象になります。
IT導入補助金の補助金額は、申請する枠の種類によって異なります。
通常枠 | デジタル化基盤導入類型 | 複数社連携IT導入類型 | ||
---|---|---|---|---|
A類型 | B類型 | |||
補助金額 | 30万~150万円未満 | 150万~450万円以下 | 5万円~350万円 | 5万円~350万円 ※経費の内容によって異なる |
補助率 | 1/2以内 | 1/2以内 | 5万円~50万円以下部分は3/4以内 50万円超~350万円部分は2/3以内 |
2/3以内 ※基盤導入経費の5万円~50万円以下部分は3/4以内 |
参考:IT導入補助金2021 HP 「IT導入補助金について」
条件や経費の内容によって補助金額が変わるため、詳しい内容を知りたい方は公募要項の確認をしてください。
IT導入補助金には、以下のような注意点があります。
IT導入補助金は原則として、同じ年度内に1事業者・1回となっています。税金を財源にしたお金であり、なるべく多くの事業者が補助金を受けられるようにしているためです。
また補助金は領収証やレシートなどで、確実に確認できる費用にしか支払われません。そのため、いったん自費ですべての費用を支払った後、領収証やレシートを提示し、後から補助金で補填される流れになります。
引用:事業再構築補助金HP
2020年に新しく創設された事業再構築補助金は、新型コロナウイルスの影響を受ける小規模事業者・中小・中堅企業が対象の補助金です。
経済産業省による従来の「ものづくり補助金」「持続化補助金」「IT導入補助金」とは別に、「事業再構築補助金」は、よりスケールの大きな成長を目指す企業に対する支援を目的としています。
中小企業の場合、補助率は費用の2/3で、補助額の上限は「通常枠」が100万円〜6,000万円、「卒業枠」が最大1億円となっています。もちろんECサイトの構築も補助金の対象になります。
事業再構築補助金は中小企業や中堅企業などが対象です。以下の要件を満たす必要があります。
ECサイトなどWeb事業で経費にできる例は以下のとおりです。
補助金額は中小企業と中堅企業で異なります。それぞれ表にまとめました。
中小企業の場合
従業員数 | 補助金額 | 補助率 | |
---|---|---|---|
通常枠 | 20人以下 | 100万~4,000万円 | 2/3 ※6,000万円超は1/2 |
21~50人 | 100万~6,000万円 | ||
51人以上 | 100万~8,000万円 | ||
卒業枠 ※中小企業から中堅企業へ成長する事業者向けの枠 |
ー | 6,000万超~1億円 | 2/3 |
中堅企業の場合
従業員数 | 補助金額 | 補助率 | |
---|---|---|---|
通常枠 | 20人以下 | 100万~4,000万円 | 1/2 ※4,000万円超は1/3 |
21~50人 | 100万~6,000万円 | ||
51人以上 | 100万~8,000万円 | ||
グローバルV字回復枠 ※グローバル展開を通じて付加価値の一定以上の増加を目指す事業者向けの枠 |
ー | 8,000万超~1億円 | 1/2 |
事業再構築補助金の申請時は、以下のような点に注意が必要です。
要件が厳しい補助金のため、事前に公募要項をしっかり確認しましょう。
引用:小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、個人事業主や小規模の中小企業向けの補助金です。販路開拓・販売促進・プロモーション・IT活用といった取り組みが支援され、販路開拓・販売促進に最適な補助金制度となっています。
小規模事業者持続化補助金の対象となる事業者の条件は、業種によって異なります。
業種 | 常時使用する従業員数 |
---|---|
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
ECサイトやWebマーケティング関連で対象となる経費の例は以下のとおりです。
小規模事業者持続化補助金の補助金額は、型の種類によって異なります。
補助率 | 上限額 | |
---|---|---|
一般型 | 2/3以内 | 50万円 ※「認定市区町村による特定創業支援等事業の支援を受けた小規模事業者」の場合、100万円。細かな要件有 |
コロナ特別対応型 | 3/4以内 | 100万円 |
小規模事業者持続化補助金には、以下のような注意点があります。
経費の内容について細かな条件が存在します。また型によって申請の流れなどが異なるため、それぞれの公募要項について入念な確認が必要です。
引用:ものづくり補助金
ものづくり補助金は中小企業・小規模事業者を対象に、サービスや商品開発などの取り組みや生産プロセス改善に必要な設備投資などを支援する制度です。事業者は今後数年にわたって、働き方改革やインボイス制度導入など、さまざまな制度変更に直面することになります。これらに対応するための取り組みを支援することが目的です。
ものづくり補助金は令和4年3月時点で、すでに10回の公募が実施されています。さまざまな補助金の中でも、実施回数が多い制度です。
なお、ほかの補助金制度と同様、補助金額は枠の種類や従業員数などの条件によって異なります。詳しい内容および条件については後述します。
ものづくり補助金の対象事業者は、業種によって資本金・常時使用する従業員数の条件が異なります。詳しい内容を表にまとめました。
業種 | 資本金の額上限 | 常時使用する従業員数の上限 |
---|---|---|
製造業・建設業・運輸業・旅行業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業 ※ソフトウェア業・情報処理サービス業・旅館業を除く |
5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業 ※自動車または航空機用タイヤおよびチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く |
3億円 | 900人 |
ソフトウェア業・情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
それ以外の業種 | 3億円 | 300人 |
対象となる経費の例は以下のとおりです。
ものづくり補助金の補助金額は、枠の種類や従業員数によって異なります。
従業員数 | 補助金額 | 補助率 | |
---|---|---|---|
通常枠 | 5人以下 | 100万~750万円 | 1/2 ※小規模企業者・小規模事業者・再生事業者は2/3 |
6~20人 | 100万~1,000万円 | ||
21人以上 | 100万~1,250万円 | ||
回復型賃上げ・雇用拡大枠 | 5人以下 | 100万~750万円 | 2/3 |
6~20人 | 100万~1,000万円 | ||
21人以上 | 100万~1,250万円 | ||
デジタル枠 | 5人以下 | 100万~750万円 | 2/3 |
6~20人 | 100万~1,000万円 | ||
21人以上 | 100万~1,250万円 | ||
グリーン枠 | 5人以下 | 100万~1,000万円 | 2/3 |
6人~20人 | 100万~1,500万円 | ||
21人以上 | 100万~2,000万円 | ||
グローバル展開型 | ー | 1,000万~3,000万円 | 1/2 ※小規模企業者・小規模事業者は2/3 |
ものづくり補助金には以下のような注意点があります。
枠の種類が多く、設備投資額をはじめとした厳しい要件が複数あるため、公募要項の細かな確認が必要な制度です。
ECサイト制作に使える補助金は、国の制度だけではありません。自治体の補助金を利用できるケースもあります。
自治体主体の補助金として、今回は3つの例を取り上げました。
ここからはそれぞれの制度について詳しく解説します。
ECサイトの活用による東京の特産品販売支援事業は、東京都が主体の補助金制度です。コロナ禍における東京の特産品の販路拡大の支援を目的としています。
支援メニューは以下の2種類です。
都内に本店または支店が登記されている、東京の特産品を取り扱うなどの条件があります。広告費をかけることなく、販路拡大につながるPRが実現できる制度です。
中小企業ホームページ等作成事業補助金は、大阪府吹田市が主体の補助金制度です。販路拡大などを目的としたホームページの制作を、市の登録作成事業者に委託した場合、要した費用の一部を補助します。
補助対象者となるのは、吹田市内に主たる事業所を有する中小企業者です。補助対象の事業は以下のとおりです。
上記事業に関する外部委託費が補助対象の経費となります。補助率は1/2以内、上限額は以下のとおりです。
Webサイトの制作やリニューアルをするなら、ぜひ活用したい制度といえます。
日進市ECサイト構築支援金は、愛知県日進市が主体の補助金制度です。 新型コロナウイルスの影響で販売機会が減少した事業者を対象に、販路拡大や事業継続を目的としたECサイトの開設などを支援することを目的としています。
補助対象となるのは、中小企業基本法第2条に規定する条件を満たした中小企業などで、日進市内に事業所を有している必要があります。
対象経費となる項目は以下の2種類です。
補助率は1/2、上限額は1事業者あたり5万円です。
ECサイト制作に利用できる補助金を選ぶ際におさえたいポイントとして、以下の3点があげられます。
これらのポイントは、自社に適した補助金を選ぶうえで大切です。それぞれ詳しく解説します。
まずは自社が対象事業者に当てはまるのか確認が必要です。対象事業者の条件を満たしていない場合、どんな理由であっても審査に通過できません。
補助金の大半は、中小企業または小規模事業者を対象事業者としています。中小企業・小規模事業者の条件は、業種や組織などによって細かく定義されます。そのため自社が当てはまるかどうか、資本金や従業員数を必ず確認しましょう。
資本金・従業員数以外にも細かな要件が存在するケースがあります。たとえば本記事でも紹介した事業再構築補助金ですが、こちらは新型コロナウイルスの流行が原因での売上減少が要件です。ものづくり補助金のように、枠によって要件が異なる制度もあります。対象事業者の条件は、細かな部分まで確認が必要です。
対象事業者に該当するかを確認したら、続いて対象経費の適用範囲を確認する必要があります。一言でECサイトの制作・リニューアルに利用できる補助金といっても、制度によって対象経費は異なります。
今回紹介した補助金のうち、国が主体の制度4つの、主な対象経費は以下のとおりです。
ECサイト制作やリニューアルで補助金を利用する場合、制作目的や制作方法を明確にしましょう。そのうえで対象経費を確認し、自社に適した補助金を選びます。
補助金を選ぶ際、対象期間の確認も大切です。
補助金には申請受付の締切が設定されています。1日でも過ぎると申請を受け付けてもらえないため、期限に間に合うように申請準備を進める必要があります。
良いと感じる補助金が見つかっても、対象期間がギリギリでは準備・申請にかかる負担が大きいです。無理なく間に合うものを選ぶため、対象期間は早めに確認が必要です。
どの補助金を選べば良いかわからない、申請手続きのために時間をとれる期間が限られているなどの場合、期間で決めるのもひとつの選択肢といえます。
なお補助金の募集はたいてい、1次、2次といったように、年に数回あることが多いです。そのため直近の締切に間に合いそうになければ、次の募集を待つのも良いでしょう。
ECサイトで利用できる補助金を申請する前に、おさえておくべき注意点があります。今回紹介するのは以下3点です。
それぞれ詳しく解説します。
補助金はすぐに受給できるわけではありません。審査に通過したとしても、補助金の受け取りには時間がかかります。
補助金はほとんどの場合、支出した経費を確認し、そのうえで補助金額が支給される仕組みです。すなわち一度は事業者が費用を負担する必要があります。すぐに補助金を受け取れると考えてしまうと、資金繰りがうまくいかなくなってしまう恐れがあります。
そもそも補助金は、交付開始から申請受付終了までに数週間から1か月程度、採択結果が発表されるまでにはさらに数か月かかります。補助金の申請から結果がわかるまでにも、かなりの時間を要するのです。
補助金は費用面の負担をおさえるうえで有用な制度です。しかし受給までには時間がかかるため、急ぎの対応をしたい場合や、資金繰りの改善に利用するのは現実的ではありません。いったんは自社で支出をまかなえるような、ある程度の資金力が求められます。
補助金申請に必要な書類の作成は、時間と手間がかかる作業です。期限間近で対応しようとすると、準備が間に合わず申請できないという事態が起こり得ます。前述したように、申請は基本的にWeb上で行います。画面の指示に従って入力を進めるもので、基本情報の入力はそれほど難しくありません。
しかしWebで入力する申請書だけでなく、さまざまな添付書類が必要です。今回紹介したIT導入補助金では、法人の場合は履歴事項全部証明書と納税証明書、個人事業主の場合は身分証明書・納税証明書・確定申告書などが求められます。窓口での発行が必要なものもあるため、早めに対応する必要があります。
また多くの申請書では、事業計画書の提出が必要です。こちらは記載内容に細かな規定があり、作成に大きな労力を要します。書類作成に時間と手間がかかることをおさえたうえで、早めの準備が大切です。
補助金は申請したとしても、必ず審査に通るわけではありません。審査に落ちる可能性があるという認識が必要です。
大前提として、条件を満たしていなければ審査ではじかれてしまいます。しっかり確認したつもりでも、細かな部分で条件を満たせていないケースは十分に考えられます。条件を満たしているかどうか、何度も丁寧な確認が必要です。
条件を満たしている場合でも、採択を受けられないケースがあります。補助金は採択枠や予算が決まっているため、申請が多いと審査に落ちる事業者が出てしまいます。補助金が支給される前提でECサイトの制作・リニューアルを進行するのは危険です。申請が通らず補助金がもらえないケースを考慮する必要があります。
なお審査の通過率は、事業計画や内容によって左右されると考えられます。少しでも可能性を高めるには、支援会社や専門家のサポートを受けるのが有用です。
今回はECサイトに使える5つの補助金について解説しました。補助金は手続きが難しかったり、用途に制限があったりと「補助金は使いにくい」というイメージを持っている事業者も少なくないでしょう。
しかし、実際はIT導入支援事業者や認定経営革新等支援機関が一緒に事業計画書を策定し、その後の事業の実施についても伴走支援をしてくれます。サポートを受けながら補助金を活用することで、コスパ良く競合と差をつけることができるうえ、更なる顧客獲得・売上増加にも繋げられます。
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