SNS戦略立案のプロに聞く!企業SNS運用の成功法則と推進組織の作り方

SNS戦略立案のプロに聞く!企業SNS運用の成功法則と推進できる組織の作り方

株式会社ニュートラルワークスでは、WebマーケティングやSEO、SNSに関するさまざまな知見をセミナー(ウェビナー)で発信しています。

今回は、SNSアカウントの運用実績10年以上、累計支援実績1,000社以上の株式会社ガイアックスの雨宮様をお呼びして、企業SNS運用の成功法則と推進できる組織の作り方についてインタビュー形式でウェビナーを行いました。

※本記事は、2023年7月11日に行われた【SNS戦略立案のプロに聞く!企業SNS運用の成功法則と推進できる組織の作り方】のウェビナー講演内容から、本題となる部分を抽出・編集して記事化しています。

【登壇者】

雨宮 広樹(株式会社ガイアックス ソーシャルメディアマーケティング事業部)

SNS活用支援のコンサルタント歴7年目。2度の育休のべ1年間を経て、現在は事業部のマーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスを統括。前職は物流不動産仲介のマッチングプラットフォーム運営。前々職は印刷会社のセールス。プロダクトやセールス、マネジメントを幅広く経験。

【登壇者】

五井 伴之氏
自社メディアのセールスを経験後、株式会社デジタルガレージに入社。運用型広告コンサルチームのビルディングに従事し、年間10億円弱の広告運用からフロント業務を一気通貫で担当。その後株式会社AppBrewにて、コスメアプリメディア「LIPS」では、マーケティング担当として、新規ユーザーの獲得からリテンション施策、対外均衡、ASOを経験。株式会社ニュートラルワークス 広告チーム シニアコンサルタント。

※以下、株式会社・敬称略

SNS施策では、売上とブランディングどちらを追い求めるべき?

SNS施策では、売上とブランディングどちらを追い求めるべき?

 

五井氏:SNS施策では、売り上げとブランディング、どちらを重視すべきかという話題について、ご意見を伺いたいです。広告運用と公式アカウントの運用での目的や役割の違い、それぞれの対象となる顧客や適切な利用シーンについて、具体的な例やアドバイスがあれば教えてください。

雨宮氏:SNSの活用はマーケティング活動の1つの手段であり、売上の視点が最も重要だと考えています。全てのマーケティング施策が売上にどれほど貢献するのかを常に意識するべきでしょう。しかし、SNSと売上の相関を正確に計測するのは難しく間接的な寄与を考える必要があります。さらにブランディングも売上追求の上で行うべきと考えます。

五井氏:おっしゃる通りですね。ブランディングと売上の関係についてお客さまにはどのようにご提案されているのでしょうか?

雨宮氏:補足できる資料を映しながらご説明します。

ブランド成長に必要なメンタルアベイラビリティ

ブランド成長に必要なメンタルアベイラビリティ

雨宮氏:まずは、以下の考え方(上記図を参照)を使ってご説明します(※)。

  • メンタルアベイラビリティ
    購買状況下でブランドが想起されやすいこと(お腹がすいた。A社のハンバーガーが食べたい)
  • フィジカルアベイラビリティ
    ブランドが見つけやすく買いやすいこと(近くにA社があったからすぐに買いに行けた/近くにA社がないから、近所の別のバーガー屋さんでいいや)

ブランドの成長のためには、そのブランドが消費者の心の中でどれだけ存在感を持っているのか、すなわち「メンタルアベイラビリティ」が重要です。

このメンタルアベイラビリティを強化するためには、ブランドと消費者との「接触頻度」を増やすことがキーとなります。

具体的な戦略や施策の詳細は、それぞれのブランドや状況に応じて変わるとは思いますが、SNS施策の基本的な考え方としては、この「メンタルアベイラビリティ」を中心に据えた取り組みが必要といえるでしょう。

※メンタルアベイラビリティ、フィジカルアベイラビリティという言葉は、『ブランディングの科学ー誰も知らないマーケティングの法則11』(バイロン・シャープ/2018)という本から得たものです。

SNSのKGI/KPIの最適な設計方法

SNSのKGI/KPIの最適な設計方法

雨宮氏:SNS施策は、マーケティングミックスの4Pにおけるプロモーションと関わります。ブランドに関する情報と生活者の接触量を増やすことで、ブランドエクイティが構築され、ブランド力が向上します。

SNSはその接触量を増やすメディアの一つとして役立ち、ブランドに関する話題数や公式アカウントの露出数を分析することで、その効果を測定できます。

しかし、売上とSNSの関係は間接的で、SNS上の数字だけでは十分ではなく、ブランドエクイティの確認にはWebアンケートやパネル調査が必要です。

このように、それぞれの特性にあった効果の測定方法を適切に使い分けることがとても大切で、社内全体の共通認識としておくことも、運用にあたっては重要だと考えています。

五井氏:SNSのKPI・KGI設計に関する具体的なお話というのは、なかなか伺える機会がないので、貴重なお話だと思います。ぜひ参考にしていきたいです。
KPI指標とは?KGIとの違い、設定例を分かりやすく解説 KPI指標とは?KGIとの違い、設定例を分かりやすく解説 重要な指標を設定し、目標達成のために具体的な施策を考えるためにKGI、KPIを設定する手法が一般的です。では、具体的にどのようにKGI、KPIを設定すればいいのでしょうか?OKR、KSFの紹介とあわせて解説します。

SNS施策の社内理解・協力を得るためのポイント

五井氏:社内での理解を得るためには、予算やリソースの配分の価値についての説明が重要です。特に、立ち上げフェーズのメーカーなどでの経験から、細かなロジックを用いてその施策の効果や売り上げへの貢献を明確に示すことが、社内説得が鍵となると感じています。

この点については、どのようにお考えでしょうか。

雨宮氏:SNS施策の社内理解や協力を得るためのポイントは4つあります。

1.SNS施策にリソースを投下する価値の共有
2.社風や状況に合わせた説明
3.具体的な成功事例の共有
4.外部の専門機関との連携

特に具体的に売上への貢献を示して、社風や状況に合わせた説明が求められます。

五井氏:細かいところかもしれませんが、前提を合わせていくことはとても重要だと私も同感です。

公式アカウントを新規運用する時のポイント

公式アカウントを新規運用する時のポイント

 

五井氏:公式アカウントの新規運用開始時について、貴社の考えやフレームワークがあれば教えてください。

顧客との接触チャネルは19種に分類される

顧客との接触チャネルは19種に分類される

雨宮氏:『トラクション―スタートアップが顧客をつかむ19のチャネル』(ガブリエル・ワインバーグ/ ジャスティン・メアーズ・2015)という本では、顧客との接触チャネルが19種類に分類されています。

このような視点を参考にすると、マーケティング活動において、SNSは1つの手段に過ぎないと考えられます。

この19種類の接触チャネルを見ていくとSNSだけでのマーケティングでは不十分です。例えば、TVCMと組み合わせることでより効果的になることもあるでしょう。

SNSを取り入れたマーケティング戦略を考える際には、想定されるカスタマージャーニーから全体像を俯瞰的に捉えることが大切になるでしょう。

そのため、公式アカウントの運用を新規でサポートさせていただく際には、まずビジネスの課題を明確にし、それに対する施策をヒアリングするところから始めるようにしています。

ソーシャルメディアの施策は4つに分類

ソーシャルメディアの施策は4つに分類

雨宮氏:また、SNSを活用する際には、具体的にはPESO(ペソ)モデルという考え方で施策を分類することができます。

PESOモデルとは、上記図の青い欄にある「Paid/ペイドメディア」、「Earned/アーンドメディア」、「Shared/シェアードメディア」「Owned/オウンドメディア」の頭文字から名付けられております。具体的には、以下のような事例が挙げられます。

  • Paid/ペイド:SNS広告
  • Earned/アーンド:インフルエンサーへのPR投稿依頼やニュースメディア、キュレーションアカウントによる商品紹介
  • Sharde/シェアード:一般の方々による口コミ
  • Owned/オウンド:公式アカウントなどのオウンドメディア

これらの施策にはそれぞれ特徴があり、目的に応じたPESOモデル施策との相性を考慮することが重要です。

例えば、公式アカウントの発信は、基本的にフォロワーに届くものなので、知名度がない状態では効果が限定的になりやすいです。そういった場合は、広告などの施策を併用したり、SNS以外の手段でアカウントへの流入を促す必要があります。

目的と手段の相性に基づき、リソースの投下の比重を調整することが大切だと考えております。

五井氏:ブランド側が何を求めているのかや相性によって取るべきでやるべき施策を変えていく必要があるということですね。

自社ブランドの強み・訴求ポイントの見極め方

自社ブランドの強み・訴求ポイントの見極め方

 

五井氏:自社ブランドを競合他社と比べて差別化を図ろうとすることで、ブランドの強みや訴求ポイントを見つけられない方が多い印象があります。このあたりはどのように考えられているのでしょうか?

雨宮氏:こちらもいくつかフレームワークをご紹介しながら説明していきましょう。

SNS周辺におけるループモデル

SNS周辺におけるループモデル

雨宮氏:ソーシャルメディアを活用する際、口コミを生み出す能力は大きな利点となると感じております。我々の視点からすると、SNSの目的は大きく2つに集約されると考えています。

1つ目は、ソーシャル上での話題化を通じて、購買行動の後押しをすること。

2つ目は、公式アカウントのフォロワーとして人々を集め、継続的にコミュニケーションが取れる資産を構築することです。

ただし、「口コミを増やそう」というアプローチには、商品やサービスの性質によって相性の良し悪しが存在するので、その点には考慮が必要です。

口コミが起きやすい商材と起きにくい商材の見極め

口コミが起きやすい商材と起きにくい商材の見極め

雨宮氏:口コミが起きやすいか否かは、上記図の◎~△で分類したフレームワークを活用して、商品が「誰とでも話題にできるか(話題性が高いか)」×「複数人での利用性があるか」で分類していくことをおすすめします(※)。

右上の◎に該当する「旅行・レストラン・映画」といった象限は口コミが自然に発生しやすく、ソーシャルでのプロモーションに適しています。

一方で、左下の△に該当する「美容整形、BtoB」といった象限は口コミが生まれにくい商品であるため工夫が必要、または無理に口コミ創出の優先度を上げない判断も必要です。

※ここで紹介したフレームワークの参考書籍は『口コミ伝染病』(神田 昌典/2001年)です。

同質化連想と差別化連想という視点の導入

同質化連想と差別化連想という視点の導入

雨宮氏:発信戦略を考える際は、「同質化連想」と「差別化連想」の考えをもとに進めていくことが大切と考えています。

「同質化連想」(上記図でいう黄色の矢印の部分)とは、ターゲットの興味関心に対して競合は訴求できているのに自社が訴求できていないケースです。この場合は、競合の差別化要因を打ち消す必要があるため、自社でできる範囲内で競合が行っているような発信や施策(同質化)を行う必要があります。

反対に、ターゲットに価値を認識されていない・競合も訴求できていない自社の強みがある場合に、競合と差別化できる強みを訴求していくことを「差別化連想」(青色の矢印部分)といいます。

3つの要素として上記図で挙げた「ターゲットにとって関心があること」「競合の訴求」「自社の訴求」の中で、共通点を見つけることはとても重要で、「競合が訴求しているが自社がまだ訴求していない部分」については、「同質化連想」として打ち消すような訴求を増やすべきと考えます。

一方、自社が差別化できる要素を見つけて「強み」としての訴求を増やすことができるのであれば、積極的に自社の差別化要因を強化していくべきでしょう。

ソーシャルリスニングという視点

雨宮氏:ターゲットの関心を理解するためにソーシャルリスニングという手法も使用するとよいでしょう。

これはSNSでの口コミやツイートを分析することで、「消費者が何に反応しているのか」を明らかにしていくための手法です。

社内の共通言語に訴求ポイントが隠されている

雨宮氏:自社の強みや特性を明らかにする手法として、社内の共通言語や考え方を取り上げるのもおすすめです。

社内では当たり前のこととして認識されているため、訴求すべき強みや特性と認識されていない言葉や考え方が、外部から見るとユニークな特長として認識されることが多いのです。

たとえば、味の素がX(旧Twitter)で発信して話題になった「手間抜き」という言葉のケース。この言葉は、味の素の社内では日常的に使われていた言葉だったそうです。

それを外部へ発信したところ、新鮮な言葉として受け入れられ大きな話題を呼びました。これは社内の共通言語の中に、効果的な訴求ポイントが隠されていたという成功事例といえるでしょう。

五井氏:料理を手抜きではなく手間抜きと紹介してネガティブな印象を変えるヒントが社内の共通言語に入っていた面白い事例です。
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今後のSNSの動向・展望について

今後のSNSの動向・展望について

 

五井氏:最後の質問です。InstagramやX(旧Twitter)などのSNSは私たちの生活に深く根付いていますが、日々大きな変化が見られる中で、今後どう進化していくのか非常に興味があります。

今後のSNSの展望についてどのようにお考えになっているか、ぜひお聞かせいただきたいです。

最近のSNS動向では動画に注目

雨宮氏:今後注目すべきSNSビジネスの動向として注目しているのは、動画コンテンツの増加です。

TikTokやYouTubeショート、インスタグラム(Instgram)のリールなど、動画のニーズが高まっており、ビジネスのマーケティングでは、効果的な動画コンテンツの作成とその拡散がキーとなっていきます。

五井氏:確かにご指摘の通りだと思います。しかし、静止画に力を入れる企業も多いですが、動画へのシフトは難しい課題が残りますよね。

たとえば、ユーザーからの動画コンテンツの投稿や、ブランド情報の共有方法についても考慮する必要があるためです。

動画コンテンツの作成をユーザーに促す手段や、その支援方法についても、専門の知識やサービスが求められていくと考えられるでしょう。

アルゴリズムの傾向も変化している

雨宮氏:最近のアルゴリズムのトレンドでは、フォロワー数だけがリーチを決めるわけではないと明らかになってきました。

X(旧Twitter)の公開アルゴリズムで、ツイートの質やエンゲージメント、関連するクラスター等が重要であることが分かっています。

これは、発信したい対象とその内容の一致が、アルゴリズムにおいて重要であることを示しています。

五井氏:おっしゃる通りで、フォロワーを増やすだけでは効果は限定的です。ツイートの質とそれを発信するコンセプト、そのツイートが届く層の分析が重要になるでしょう。

SNS戦略は日進月歩、トレンドにあった施策を取ろう

SNSにかかわる業界は常に急速に変化しており、トレンドを追うのはとても大変です。しかし、今回ご紹介いただいたフレームワークやポイントを取り入れながら時代の流れにあった施策を講じていくことが必要不可欠といえます。

一口に、「企業のSNS施策」といっても、今回のセミナーにご参加いただいた皆様であれば、改めて奥が深く複雑なものだと改めてご認識いただけたかと思います。

どうしても自分たちだけでは、期待する成果が得られないといった際は、プロの手を借りることも検討してみましょう。

本日は、株式会社ガイアックス ソーシャルメディアマーケティング事業部・マーケティング/セールスの雨宮様にご登壇いただきました。本日は貴重なお話をいただきまして誠にありがとうございました。

▼株式会社ニュートラルワークス(セミナーページ)はこちら▼
https://n-works.link/seminar


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監修者紹介

石田 哲也

取締役CMO

Twitter:@te2319
株式会社ニュートラルワークス 取締役CMO。1984年生まれ。高校卒業後にISD株式会社を起業。その後、株式会社オプトでWebマーケティングを学び、株式会社メタップスなど複数のベンチャー企業にて事業立ち上げを経験。前職はワンダープラネット株式会社でゲームプロデューサーとしてスマホゲームアプリの制作に従事。2018年に地元の神奈川へ戻り、ニュートラルワークスに入社。SEO/Web広告運用/サイト分析・改善など、Webサイトの運用改善~ゲームアプリ制作や数十万フォロワーのSNSアカウントの運用経験などWebビジネス全般を守備範囲とする。

■経歴
2003年 ISD株式会社/起業
2009年 株式会社オプト/SEMコンサルタント
2011年 株式会社メタップス/シニアディレクター
2013年 ライブエイド株式会社/執行役
2016年 ワンダープラネット株式会社/プロデューサー・BizDev
2018年 株式会社ニュートラルワークス/取締役CMO

■得意領域
Webサイト改善
SEO対策
コンテンツマーケティング
リスティング広告

■保有資格
Google アナリティクス認定資格(GAIQ)
Google 広告検索認定資格
Google 広告ディスプレイ認定資格
Google 広告モバイル認定資格

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