ShopifyのCOOから学ぶ、 12のマーケティング戦略

ShopifyのCOO ハーリー・フィンケルスティーンが2014年に行った講演を基に、Shopifyストアで実践しているマーケティング戦略を紹介します。貴重な独自戦略や、ShopifyのCOOが語る小売業の未来についてのまとめです。

講演まとめを読む前に知っておくべき背景

講演まとめを読む前に知っておくべき背景

講演の内容を読む前に、まずは小売業界の歴史を少しだけ振り返っておきましょう。マーケティングにおける先駆者ともいわれているジョン・ワナメイカーは1876年、フィラデルフィアの中心街に、百貨店「ワナメイカー」をオープンさせました。

ひとつの建物の中に複数のショップが出店するこの形態は、アメリカ史上初めての試みです。また、店舗に電飾を始めて使用したり、店に電話を引いたりしたのもこのワナメイカーが最初とされています。

フィンケルスティーンによると、ワナメイカーが百貨店を作ったことで以後小売業界はとても退屈な世界になったといいます。

しかし、1990年代後半、インターネットが急速に普及しドットコムバブルが起こりバブルは崩壊、核の冬と呼ばれる時代に突入します。フィンケルスティーンによれば、この流れは小売業界にとって朗報であり、今後5年間の小売業界は過去150年と比較して期待できる可能性が高いと見ているのです。


新しいマーケティング手法で成功を収めた小売業の事例

新しいマーケティング手法で成功を収めた小売業の事例

ますは、新しいタイプのビジネスモデルやマーケティング戦略を打ち出しているShopifyストアの実例を紹介します。どのストアも実際に成果を上げていて、2~3年前にには存在しなかった新しい手法を用いているという特徴があります。

1、Goldiebloxの成功例:購入前にストーリーを伝える

1、Goldiebloxの成功例:購入前にストーリーを伝える

Goldiebloxは、女の子向けの構築型のおもちゃを販売するショップです。Goldiebloxでは、商品の購入前に経営理念を伝える方法を実践しています。GoldiebloxのCEOであるデビー・スターリングは女性です。彼女はスタンフォード大学のエンジニアをしていましたが、彼女はある日ふと、大学のクラスに女性が自分を含めた2名だけしかいないことに気づき疑問をもちます。

工学に興味を持つきっかけとなるおもちゃは複数あるのに、女の子向けに作られたものがなかったという事実を発見するのです。デビーはクラウドファンディングで285,000ドル以上を調達し、現在のGoldiebloxのストーリーへ繋がります。

顧客とブランドストーリーに「感情的な繋がり」をもたせることはとても重要です。デビーは、顧客が商品を購入する前に、会社を始めたきっかけを伝える動画を見てもらえるように工夫しています。簡単な方法でありながら独創的で、顧客の心をつかむ戦略です。

2、DODOcaseの成功例:購入後にリピーターになる仕組みを作る

2、DODOcaseの成功例:購入後にリピーターになる仕組みを作る

DODOcaseは、iPhoneやiPad、マックブックなどの端末ケースを制作、販売する会社です。DODOcaseでは、商品購入者に向けて友達紹介のポップアップを導入しています。商品購入後に「友達を紹介してくれた場合クーポンがもらえます」というポップアップ表示をし、リピートを促すことに成功しました。

DODOcaseのCEOであるCraigDaltonは、この友達紹介システムが事業の根幹を支えていると語っています。収益の43%がリピーターからの購入によるものだったという結果も出ているのです。

新規顧客を獲得するために出費を惜しまないことで、それ以上のリターンが入ってくるというとても有効なプログラムだといえるでしょう。

3、Canadian Iconsの成功例:地域に特化したサービスを作る

3、Canadian Iconsの成功例:地域に特化したサービスを作る

Canadian Iconsは、カナダのアパレルブランドです。開業からわずか8ヶ月という短期間で「どこの街でも売っているブランド」として広く取り扱われるようになりました。

顧客が商品を購入する時期を調査したところ、吹雪の季節に最も多く売れることがわかりました。そこで、寒い季節にはカナダ主要都市への配送をわずか90分で行えるようにしたのです。

競争の厳しいアパレル業界で、Canadian Iconsは地域性に特化したサービスを打ち出し、競争に勝つことができました。

4、Budwieser Red Lightの成功例:たったひとつの体験のために商品を作る

4、Budwieser Red Lightの成功例:たったひとつの体験のために商品を作る

バドワイザーはビールメーカーとして日本でもよく知られています。Budwieser Red Lightという商品は、カナダ人に馴染みの深いホッケー観戦を盛り上げる商品です。Wi-FiにつなげられるSDカードをセットしテレビ横に配置すれば、応援しているサッカーチームの得点に連動してランプの点灯やサイレンを鳴らすアクションが楽しめます。この体験だけのために開発したBudwieser Red Lightはカナダで大ヒット商品となりました。

5、Herschelの成功例:顧客を主役にした印刷物で商品をPRする

5、Herschelの成功例:顧客を主役にした印刷物で商品をPRする

アパレルブランドのHerschelではバックパックを商品を購入した顧客の旅記録を、1冊の紙冊子にまとめて年に2回発行しています。イメージとインスピレーションを、あえて紙の印刷物で表現したのです。

Herschelの実績は、この冊子の発行にあわせて大きく伸びています。もちろんオンラインストアへ訪れる人の数も増え、アナログとデジタル両方での相乗効果を生み出しているのです。戦略として最も重要なポイントは、顧客が、新たな顧客のためにコンテンツを作り出しているという点。まさに顧客が主役のマーケティング戦略といえます。

6、Chubbiesの成功例:ひとつのことだけを極める

6、Chubbiesの成功例:ひとつのことだけを極める

Chubbiesは伝説のショートパンツブランドと呼ばれています。小売業界では「ひとつの商品だけを売っていては失敗する」というのが常識でした。しかしChubbiesは「ひとつのことだけを極める」戦略で成果を挙げています。

ショップの紹介文には「スラックスもカーゴパンツ、カプリパンツも販売しません。ショートパンツのみです」との文章があります。Chubbiesはオンラインでの売り上げ成果を伸ばしており、ニッチな市場で強く生き残っています。これまで失敗しやすいとされていた戦略で見事に成功している事例です。

7、Johnny Cupcakesの成功例:新商品を毎週発売する

7、Johnny Cupcakesの成功例:新商品を毎週発売する

Johnny Cupcakesは、ケーキショップのような雰囲気の店舗でアパレルアイテムを販売する会社です。Freshly Bakedのラインでは、毎週新作商品をリリースすることによって、新作を楽しみに待つファンを獲得できるようになりました。

ブランドのファンは、毎週サイトに足を運んで、新着商品がアップされているのを確認します。購入するかどうかに関係なく、定期的にファンがお店にアクセスするようにスケジュール化されているのです。

代表のJustin Hilzは、ファンにとっての「楽しみ」を作り出すことが経営成功のカギとなったのだと話します。期待をスケジュール化するという非常に新しい取り組みです。

8、Best Made Companyの成功例:リアルイベントをオンライン購入へ繋げる

8、Best Made Companyの成功例:リアルイベントをオンライン購入へ繋げる

アウトドアブランドのBest Made Companyでは、オフラインでの体験を通じてオンラインの売り上げにつなげています。ニューヨークの実店舗では、定期的にフィジカルイベントを開催しているのです。

たとえば古い斧の修理、フィールド医学研修、キャンプで飲むカクテルづくり体験など、そのジャンルはさまざま。自社商品に直接関係のないワークショップでも「ものを購入したくなる体験」を提供することによって、結果的にBest Made Companyの売り上げアップにつなげています。

9、Pink+Dolphinの成功例:服のコーデを紹介する

9、Pink+Dolphinの成功例:服のコーデを紹介する

アパレルブランドPink+Dolphinは、新作が出るシーズンに合わせて、自社ブランドのアイテムを使ったコーディネートを紹介するルックブックを作成しています。靴、帽子、Tシャツ、バッグなどを組み合わせ、どの商品を組み合わせて購入すればいいかわかりやすくしたのです。

「この帽子とこのTシャツを合わせるとどうなるの?」「この靴にはどの靴下が合うの?」といった顧客の迷いや疑問を、視覚的に楽しく解消することができます。ルックブックの作成によって、実際に購入されるアイテムの数は増えています。1回の購入につき3~5点ほど購入する人が増え、売り上げアップにつながっているのです。

10、Pencil by FiftyThreeの成功例:商品の魅力を動画で端的に伝える

10、Pencil by FiftyThreeの成功例:商品の魅力を動画で端的に伝える

Pencil by FiftyThreeは、タブレット用のペン。この商品のマーケティング戦略は「驚きから始めること」です。Pencil by FiftyThreeでは①絵を描く②消す③色を混ぜるという3つの作業をすることができます。
しかし、このような多機能な魅力を伝えるには画像だけでは不十分だったため、ショップのサイト内で3D動画を自動再生しています。たった5秒という短い動画なら、顧客の時間を必要以上に奪わずとも商品の魅力を端的に伝えることができます。

11、Buy Me Brunchの成功例:SNSを利用して口コミを集める

11、Buy Me Brunchの成功例:SNSを利用して口コミを集める

Buy Me Brunchは、サンフランシスコの企業でTシャツをメインに販売するアパレルブランドです。この企業はSNSを利用した口コミで、カスタマーレビューを集めることに成功しています。一般的には、顧客が商品を購入して7日前後経つと「ご満足いただけましたでしょうか?次回使えるクーポンをお送りしますので、ぜひレビューの記載にご協力ください」といったメールを配信するのがデフォルトです。

しかし、Buy Me Brunchでは、商品を実際に着用した写真をInstagramやtwitterなどのSNSに投稿することを呼びかけたのです。ハッシュタグ付きの投稿は自動でBuy Me Brunchのサイトにアップロードされ、WEBでの認知度を掛け算的に高めていきました。Black Milkというアパレルブランドもこの手法を実践しており、ソーシャルメディアが発達した現代ならではの方法で口コミの力を強めています。

12、Stravaの成功例:ゲーミフィケーションをマーケティングに取り入れる

12、Stravaの成功例:ゲーミフィケーションをマーケティングに取り入れる

アスリート向けのアプリを提供しているStravaは、非常にユニークな「ゲーミフィケーション」を取り入れたマーケティングを行っています。まずアプリを使って、顧客にミッションをクリアしてもらいます。そしてミッションを完了することができた人だけ、限定の商品を購入できるという仕組みです。

過去にはミッションを完了すると、自転車業界のパタゴニアとよばれるRaphaのTシャツが購入できるといったゲーミフィケーションが行われました。このプロモーションによって自社売上は、たった1ヶ月で前年の四半期の売り上げを上回ってしまったのです。クリスマスラッシュの売り上げをも越える大きな成果を上げました。

今後5年間の小売業界は、過去150年間よりも期待できる

今後5年間の小売業界は、過去150年間よりも期待できる

Shopifyは現在50万以上の店舗を抱えています。フィンケルスティーンは、これからの小売業界は大規模なECサイトや店舗よりも、中小企業のクリエイターやキュレーターが引っ張っていく時代であると考えているのです。

Shopifyストアは2018年にはブラックフライデー、サイバーマンデーの最高売上を記録し、収益は10億ドルにも上りました。さらにShopifyは、AmazonやeBayに次いでトラフィック数第3位を獲得しています。Shopifyストアのトラフィックは、Sears、Target、Walmart、Best Buyなどよりも高く、今後も伸びていく可能性が高いとみています。

今回紹介したような、新しく独創的なマーケティング戦略を打ち出しているストアが、今後の小売業を支えていくでしょう。今後5年間の小売業界は過去150年よりも期待が高く、未来をどう左右するかは中小企業の方にかかっています。

講演来場者とのQ&A

講演来場者とのQ&A

フィンケルスティーンの講演から、来場者とのQ&Aの内容をまとめます。

Q:eBayやAmazonに出店することに関してどうお考えですか?

A:直接購入が一番多いですが、他のマーケットプレイスへの出店も考慮する必要があると考えています。自社サイト、Amazonでも、どこにでも複数出店しておく必要はあるでしょう。

Shopifyは、複数のチャネルと連携がとれるというメリットがあります。そのため、Shopifyでは複数のビジネスを始めることが可能なのです。Shopifyのストアオーナーには、ビジネスチャンスをより多く獲得するためにさまざまなマーケットプレイスへ出店することをおすすめしています。

Q:アプリチャネルを持つことに関してどうお考えですか?

A:Shopifyストアでの購入は、20%がスマホやタブレットからのモバイルからのアクセスです。そのため、さまざまなデバイスに対応できるレスポンシブデザインへの対応が求められるでしょう。

ただ、顧客との接点を複数持つことだけを考えるのであればAmazonマーケットプレイスへの出店で十分かもしれません。

モバイル対応は必須というわけではありません。ビジネスの形態の一種というだけに過ぎないのです。小売はオンライン、オフラインをはっきり分ける必要はなく「顧客がどう選択するか」にかかっているのです。オンラインで購入したものを十店舗で受け取りたいという場合もあれば、そのまま自宅へ配送してほしいなど、選択は顧客の意思で変わります。

過去150年間の小売業での常識では、店舗側が顧客に購入方法を指示していたと思います。たとえば「PS4が欲しいなら、夜通し列に並んでください」ということもありました。

しかし今後は消費者が店舗に対して「このような方法では買いたくない。あなたのお店で試してから、後々ゆっくり検討してオンラインで購入したい」と意思表示することも可能になるでしょう。

まとめ

以上が、ShopifyのCOO ハーリー・フィンケルスティーンの講演内容です。紹介されている12のマーケティング戦略の実例は、既存の手法と組み合わせたり、独自戦略のヒントにしたり、自社のスタイルやコンセプトに合わせてアレンジしてみるとよいでしょう。ただ、多くのshopifyストアオーナーは、Webサイト構築のための時間と専門知識がありません。ニュートラルワークスは、トレンドを抑えたデザインで徹底的に「成果」にこだわったECサイトを構築いたします。

そのため、あなたは競合と差をつけることができ、それが更なる顧客獲得・売上増加に繋がります。Zoomなどのオンライン相談(無料)をやっておりますので、まずはこちらのお問い合わせページよりお気軽にご相談ください。ご連絡心よりお待ちしております。

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監修者紹介

三木 五月

代表取締役社長

神奈川県の湘南でデジタルマーケティングの会社を経営しています。湘南をシリコンバレーのようにしたく、社員一丸で突っ走っています! 座右の銘は「好きこそものの上手なれ」。成熟した文化、自然豊かな湘南で一緒に働いてくれる仲間を絶賛募集中です。詳しくは採用ページをご覧ください。

■経歴
1983年 5月7日生まれ
2002年 インド、カンボジア、ヨーロッパへ海外放浪
2005年 アメリカカリフォルニア州へ留学
2010年 株式会社エイ出版社入社
2011年 株式会社文藝春秋入社 Sports Graphic Number担当
2016年 株式会社ニュートラルワークス設立

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