マーケティング

最終更新日: 2023.12.29

脱オウンドメディアが目標!となりのカインズさん副編集長・与那覇さんにメディアの裏側を深堀り

脱オウンドメディアが目標!となりのカインズさん副編集長・与那覇さんにメディアの裏側を深堀り

となりのカインズさんは、ホームセンターで有名な株式会社カインズのオウンドメディア。2020年に開設してから約5カ月で、100万PVを達成、1年で400万PV/月を達成し大きな注目を浴びました。

毎日オリジナリティに溢れたコンテンツや、カインズ商品の面白さが伝わる記事が更新されており、たくさんのファンに愛されているメディアの1つです。

そこで今回は、となりのカインズさんがなぜここまで人気なオウンドメディアに成長したのか、となりのカインズさん副編集長・与那覇さんにメディアの裏側について詳しく深堀りしました。

QUERYY(クエリー)編集部

監修者

株式会社ニュートラルワークス

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QUERYY(クエリー)は、株式会社ニュートラルワークスが運営するデジタルマーケティング情報メディアです。

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執筆者

株式会社ニュートラルワークス

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となりのカインズさんとは?

与那覇さんにお話を伺う前に、カインズについて確認しておきましょう。
となりのカインズさんを運営している株式会社カインズは、1978年にホームセンター1号店をオープンしました。2019年に創業30年を迎え、現在は全国230店舗(2022年8月末時点)を展開しています。

そんなカインズのオウンドメディア・となりのカインズさんのコンセプトは「ホームセンターを遊び倒す」こと。カインズで取り扱っている日用品や建築資材、アウトドアグッズなどを始め、幅広いジャンルの記事を公開しています。

メディアを創刊することになった経緯

ーーまず、メディアを創刊することになった経緯を教えていただけますか?

与那覇:カインズは創業約30年を迎え、顧客やメーカーさんなどとのつながりも十分にありました。一方で情報は山ほどあるのに、情報をうまく生かし切れていないのではという課題があったんです。

参照元: https://magazine.cainz.com

ーーカインズと言えば、地域密着型のホームセンターとしていろいろな人に愛されているイメージです。

与那覇:たしかに地方に根強いホームセンターではありますが、店舗以外で顧客と密にコミュニケーションが取れているかと聞かれたらそうでもなく……。

カインズとして、この宝の山(情報)をどうアウトプットすれば成長できるかと考えました。その答えの一つがお客様やメーカーさんなどさまざまな人を巻き込んで、面白いコンテンツを提供できるオウンドメディアを立ち上げることでした。

ーー販売するだけではなく、そこに面白さを追求するのは興味深いですね!現在、多くのクリエイターで構成されているとなりのカインズさんですが、どのようなメンバーで立ち上げたのでしょうか?

与那覇:もともとはエンジニアと、となりのカインズさんの創刊編集長を務める清水【※1】を中心に、社内メンバー計3名で立ち上げました。清水がSEOやオウンドメディアの知見があったので、外部のコンサルは入れていません。のちに、ライターさんやクリエイターさんにお声掛けして拡大していきました。

【※1】清水俊隆氏:2020年より「となりのカインズさん」創刊編集長を務める。現在は株式会社カインズ マーケティング本部メディア戦略部部長を兼任する傍ら、メディアコンサルタント、BtoBやSaaSなどのマーケター、コンテンツディレクターとしても活躍している。

ーーはじまりが3名だったとは驚きです!そんなとなりのカインズさんは、立ち上げから約5カ月で100万PV達成という快挙を成し遂げました。達成できた理由は何か教えてください。

与那覇:達成できた理由として、1つの記事をただ公開するだけで完結させない点が挙げられます。濃いコンテンツを作成するのは大前提なのですが、例えば、一般的にはあまりポピュラーではないけれども、メダカに詳しい人は自身の知らないマニアックな情報を求めますよね。

そこでメダカのマニアがとなりのカインズの記事を読んで、新しい情報を得られるかつ、面白いと感じていただけるようなコンテンツを制作できるように心がけています。

ーーたしかに、あるキーワードをネットで検索すると、情報が飽和していたり、似通った情報しか得られなかったりすることが多いですよね。

与那覇:またコンテンツを作るだけではなく、届け方にもできる限り配慮しています。「いつ公開するか」「この記事は誰に届けて、どのように届けるのか」などに重きを置いていますね。

とはいえ、1商品ごとに複数のストーリーがあるとしたら、まだそのうちの1%も紹介しきれていないと思います(笑)。

ーー1%も紹介しきれていないとはすごい…!(笑)まさにホームセンターの強みが生かされているメディアと言えますね。

メディアの運営体制はどうなっている?

ーー次に、となりのカインズさんの運営体制について伺えますか?

与那覇:となりのカインズさんの編集部は、マーケティング本部の中の、メディア戦略部に属しています。ただ、マーケティングだけではなく、人事や採用、広報、店舗との連携も重視しているので、他の複数の部署と連携しながら運営しています。

メディア戦略部には、オウンドメディアのほかにも、テレビ広告などのマスメディアを担当するグループや、社内の複数サービスの集客について横串で社内コンサルするグループ、カタログ制作のグループなどもあります。

ーーとなりのカインズさんは、外部のライターさんを積極的に採用しているイメージですが、現在のメンバー構成はどうなっているのでしょうか?

与那覇:現在、となりのカインズさんに関わる正社員は5名で、各編集者およびマーケター、ライターなどを兼任しています。外部のライターさんを含めると約100名以上に及びますね。

ーー外部のライターさんが多いというイメージでしたが、100名以上とは!となりのカインズさんはまさに、先ほど仰っていたさまざまな人を巻き込んだメディアなんですね。

コンテンツマーケティングについて

ーーとなりのカインズさんといえば、個性や面白さが尊重された記事が特徴的です。コンテンツマーケティングにおいて、重視している点はありますか?

与那覇:ライターさんは文章力よりいかにそのコンテンツが好きか、マニアックかどうかに重きを置いていますね。

ーーとなりのカインズさんは編集作業はどのように進めているのでしょうか?

与那覇:ライターさんが書いた文章をそのまま公開することもあれば、ライターさんと一緒にとことん作り込む記事もあります。

私もとなりのカインズさんの編集部にジョインして驚いたのですが、SEO記事と企画記事をそれぞれ別々に制作するのではなく、SEOと企画記事を融合したかたちでコンテンツを制作しています。「情報網羅+キャッチーなもの」ですね。

ーーSEO+企画記事を制作するのはなかなかハードルが高そうです。

与那覇:難度は高いですね。例えば、以前となりのカインズさんで公開したバスマジックリンの記事は、まさにSEOと企画が組み合わさったコンテンツとなっています。

カインズが取り扱っている商品はマニアックなものも多いので、読者が記事を読んだ際に「内容が浅いな」「この情報はもう知っている」とがっかりされないためにも、とにかく優先順位はマニアック度です(笑)。

出典:バスマジックリン最大のタブー「実はこすってる」問題を花王に聞いてみた

ーー私も約20年以上のバスマジックリン愛用者ですが、バスマジックリンの記事を初めて読んだときは驚きでした(笑)。1人の読者として知らない情報を得られるのは、今後の生活に活かせるので助かります。

メディアが掲げている目標は立ち上げ当初から変わらない

ーー現在も月間350〜400万PVを達成しているとなりのカインズさんですが、どんな目標を掲げているのでしょうか?

与那覇:となりのカインズさんで掲げている目標は「読了率」「PV数」「関連記事への遷移率」「SNSの反響」などが挙げられます。カインズの店舗への来店数が大切なので、店舗の来店促進やECからどのくらい売上があるかも随時チェックしていますね。

加えて、となりのカインズさんを閲覧したユーザーが実店舗で商品を購入しているのかどうかといったデータも追っています。

ーー毎年掲げる目標に変化はありますか?

与那覇:基本的に目標は立ち上げ当初からあまり変わっていません。私自身は「いかれてて草」と思われるような面白いコンテンツを作れるか、編集者として力を強められるかを常に追求しています(笑)。

ーーいかれてて草!とても新鮮な表現です(笑)。となりのカインズさんの記事は、1人1人の編集者の熱意のもと制作されているんですね。

与那覇:また「PV数を追うことで、PVに嫌われないか」は、常に意識するようにしています。目先の数字だけを取りに行こうとする手段は避けていますね。

例として、安易に芸能人の方に力を借りるのは避けています。頼む場合は知名度に頼らず、企画を面白くしたうえで芸能人の方にお話を聞くというスタンスです。

ーーメディア運営していると、ついついPV数にとらわれがちですが、常にユーザーに寄り添ってコンテンツ制作することが大切なんですね。

デジタルマーケティングについて

ーー続いて、カインズ全体におけるデジタルマーケティングの取り組みについて教えていただきたいです。

与那覇:カインズで商品を購入した顧客にあわせて、必要な情報を提供する仕組みを作っています。例えば、会員登録している顧客がカインズでトマトの苗を買ったとしましょう。するとその顧客にトマトの育て方の記事がメルマガで届く仕組みになっています。

さらに収穫の時期になると、トマトの収穫に関する記事や「そろそろ収穫時期ですよ」といったメルマガをお届けしています。

ーー初めてトマトの苗を買った場合、育て方がわからず戸惑う人も中にはいるはずです。ユーザーにとってありがたい仕組みですね。今後カインズとして、実現したい取り組みはありますか?

与那覇:今後は顧客がネットで注文後、店舗のロッカーで受け取れる「CAINZ Pick Up」の普及や、店舗にあるサイネージの活用を検討中です。まだ構想段階ですが、デジタルマーケティングと実店舗の融合も実現したいと考えています。

カインズ全体としてみた場合、成功のステップは踏めていると思いますが、アメリカの小売業と比べると日本の小売業自体は、まだまだ攻める余地がありますね。

メディアの今後の課題は?

ーーとなりのカインズさんにおける今後の課題を教えてください。

与那覇:創造的破壊ですね。現状維持のままでは衰退してしまう一方なので、リテール(小売)としてのメディア拡大、いずれかは脱オウンドメディアを検討しています。

ーー脱オウンドメディアを目指している理由は何でしょう?

与那覇:コンテンツの追求はもちろん大切ですが、オウンドメディアブームが終結したと言われるように、今後もコンテンツばかり追求していてはさらなる成長は難しいと思います。

マーケティングの4P(PRODUCT・PRICE・PROMOTION・PLACE)〔※2〕として考えたら、メディアとしてのプロモーションをさらに高めたい。コンテンツの質に加えて、情報提供のバリエーションを増やす、どのタイミングで公開するのかなど、よりきめの細かいサービスを提供したいですね。

〔※2〕4P:企業が自社のサービスや商品を販売する際に使われる4つのマーケティング要素。マーケティングミックスとも呼ばれる。

人間が抱く好奇心の核を大切にしていきたい

ーー最後に、一言メッセージをお願いします。

与那覇:メディアで圧倒的な成果を出すためには、人間が「知りたい」「楽しい」といった感情をいつ・どんな時に抱くのかを考え抜くことが大切です。
私自身、実際にメディアを運営する立場として、人に対する思いやりや、楽しんで欲しいというサービス精神があるか無いかで、メディアとしての重みが大きく変わってくると感じています。

 

ーー今回のお話で、カインズ全体で常にユーザーに寄り添いながら企画やコンテンツ制作を行っていると分かりました。今後、カインズがどのようなプロモーションを行っていくのか注目です。貴重なお話をありがとうございました!
QUERYY(クエリー)は、株式会社ニュートラルワークスが運営するデジタルマーケティング情報メディアです。