補助金とは、分野や目的に合わせ、国や地方自治体から支給されるお金です。支出の一部もしくは全額の給付を受けられるため、事業にかかる負担を大幅に抑えられます。非常に便利な制度ですが、申請すれば必ず利用できる訳ではない点に注意が必要です。
なかでも人気の高い補助金として、IT導入補助金があげられます。ITツールの導入に要した費用の補助を受けられるもので、毎年さまざまな変更が行われています。
この記事では、IT導入補助金の概要から具体的に補助対象となるもの、補助額、申請方法と申請時の注意点についてわかりやすくご紹介します。
目次
IT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業)は、中小企業・小規模事業者等を対象にした、IT導入による業務効率化を後押しするための経済産業省の補助金です。補助の対象となるのはITツールの導入費(ソフトウェア費、導入関連費)で、具体的には以下のような業務効率化が図れるツールが対象になります。
また、ECサイト・予約システム・顧客管理システムのあるWebサイトなど、データの受け渡しを行う機能が搭載されたWebサイトであれば、Webサイト開設にもIT導入補助金が利用できます。ただし、パソコンやタブレットなどのハードウェアに関してはレンタル費用のみが対象になります。
IT導入補助金は2017年に開始された制度ですが、毎年内容が少しずつ変わっています。2022年(令和4年)度のIT導入補助金について、これまでとの変更点も合わせて解説します。
IT導入補助金の実施目的は、中小企業・小規模事業者のIT導入による、業務効率化の後押しです。ITツールは業務効率化や事業推進に効果的ですが、導入にあたって大きなコストが発生します。このような負担を抑えることを目的に設けられた制度です。
なお今までIT導入補助金は「通常枠(A・B類型)」と「低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)」の2つが設けられていました。しかし2022年度補正予算案では、新たに「インボイス方式への対応枠」や「複数社連携型IT導入枠」の2つが増設される予定です。
インボイス方式への対応枠は、2023年に導入予定のインボイス方式への対応を見据え、会計ソフトなどのツール導入を促進するために設けられます。関連するITツールの導入については補助率の引き上げなどが行われる予定です。
複数社連携型IT導入枠は、商業集積地やサプライチェーンなどの連携に必要となるITツールの導入を支援する制度です。
新たに追加される枠について、詳細の発表はまだ行われていません。申請を検討する方は情報を欠かさずチェックしましょう。
補助対象となる事業者は個人事業主または小規模事業者・中小企業です。小規模事業者の定義は以下のように、業種によって異なります。
中小企業はさらに細かく業種が分けられ、それぞれ人数または資本金の額が規定されています。
IT導入補助金は公式サイトで公開されているITツールが補助対象です。主なソフトウェアのほか、PC・タブレット等のハードウェアにかかるレンタル費用も補助対象となります。レンタル開始日から1年分までを上限として申請が可能です。ただし、「ハードウェアレンタルのみの申請」や「購入費用」は補助対象外となるため注意しましょう。
IT導入補助金は原則として採択前に購入した物品の費用は補助対象外です。しかし2020年度および2021年度は交付決定日前の購入費用について、条件を満たせば遡っての申請も可能でした。2022年度も対象期間について確認しましょう。
また2022年度からはインボイス方式への対応枠が追加されることにより、会計ソフトや決済関連ツールも対象になると考えられます。
IT導入補助金の種類について表にまとめました。
補助金額 | 補助率 | |
---|---|---|
通常枠A類型 | 30万円以上150万円未満 | 1/2 |
通常枠B類型 | 150万円以上450万円以下 | 1/2 |
低感染リスクビジネス枠C類型-1 | 30万円以上300万円未満 | 2/3 |
低感染リスクビジネス枠C類型-2 | 300万円以上450万円以下 | 2/3 |
低感染ビジネス枠D類型 | 30万円以上150万円以下 | 2/3 |
会計ソフトや受発注システム、決済ソフトなどのITツールの導入 (2022年度補正予算案) |
350万円以下 | 50万円まで:3/4 50万円以上350万円まで:2/3 |
パソコン、タブレットなどの購入・レンタル (2022年度補正予算案) |
10万円以下 | 1/2 |
レジなどの購入・レンタル (2022年度補正予算案) |
20万円以下 | 1/2 |
それぞれの枠について詳しく解説します。
通常枠はITツールの導入により、業務効率化・売上アップを目的とする枠です。自社の環境から強み・弱みを分析し、課題に合ったITツールを導入することで経営力アップを目指します。
通常枠のB類型では、賃上げ目標が必須要件のひとつとなります。IT導入補助金における賃上げ目標とは、ITツールの導入により生産性を向上させ、その結果として給与支給総額を上げるという目標です。B類型では増加目標として、年率平均1.5%以上もしくは事業所の最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする目標を設定・表明する必要があります。
A類型では賃上げ目標が必須ではないものの、審査の際に加点となる加点項目です。採択されやすくなると期待できるため、設定・表明をおすすめします。
2020年度の「特別枠」(C類型)は「新特別枠(低感染リスク型ビジネス枠)」(C・D類型)に改編されました。
C類型・・・複数のプロセス間で情報連携し複数プロセスの非対面化や業務の更なる効率化を可能とするITツールであること。(事例:ECサイト制作など)
D類型・・・テレワーク環境の整備に資するクラウド環境に対応し、複数プロセスの非対面化を可能とするITツールであること。(事例:クラウド型勤怠管理システムとWeb会議システムの導入など)
IT導入補助金特別枠(C類型)では、補助率が最大2/3、補助金額が最大450万円となりました。たとえば、500万円の費用に対して最大2/3の補助率=333万円の補助金が受けられます。事業者側の実質負担は167万円です。補助金額の上限は450万円なのでご注意してください。
1,000万円のITツールを導入費用とするとして、2/3の補助率=666万円の補助が受けられると勘違いしてしまいますが、受けられる補助金額は上限の450万円となります。また、D類型の場合、補助率は最大2/3、補助金額は最大150万円となります。
IT導入補助金特別枠(C類型・D類型)で対象になるITツールやハードウェアはどのようなものがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
IT導入補助金の対象は、事務局に登録されたソフトウェア費、導入関連費に限定されています。具体的には以下のような機能を持ったソフトウェアになります。
上記のソフトウェア費以外に、自社に合わせた機能拡張、データ連携ツール、セキュリティ製品の費用や、ITツールの導入コンサルティングや保守サポート費用も補助対象に入ります。
業務の非対面化をするためのハードウェアレンタルが補助対象となっています。これは、新型コロナウィルス感染症の影響を受ける企業を支援するための措置として、テレワークを導入するためのPC・タブレット等のレンタル費用の他、これらに接続し業務形態の非対面化の目的に対応したWebカメラ、マイク、スピーカー、ヘッドセット、ルーター、ディスプレイ、プリンターが該当します。
2021年度IT導入補助金について、1次締切分は以下のスケジュールでした。
2022年度のスケジュールについて詳細の発表はありませんが、2021年度と同様のスケジュールであると予想できます。また2021年度は第5次締切分まで設けられているため、2022年度も複数回実施が行われるでしょう。
補助金申請には締め切りが設けられているため、余裕を持って申請準備を進めましょう。
IT導入補助金の2022年度補正予算案について、重要な部分は以下の2点です。
それぞれについて詳しく解説します。
複数社連携IT導入枠とは、複数の中小・小規模事業者の連携に便利なITツールおよびハードウェアの導入を支援する枠です。
商業集積地やサプライチェーンなどは複数社の密な連携が必要です。このような事業を効率良く進めるにはITツールが役立ちます。すなわちITツールの活用により、生産性向上などの効果が期待できるのです。
データ共有などの連携に必要なITツールの導入支援により、地域DXや生産性向上の実現につなげることを目的としています。
2022年度のIT導入補助金のポイントのひとつとして、2023年10月から始まるインボイス制度への対応があげられます。インボイス制度とは売手が買手に対して、正しい適用税率や消費税額等を伝える制度です。
インボイス制度への対応にあたって、会計ソフトやITツールなどの導入が必要となります。これらを支援・促進するための枠が追加されます。
2022年度のIT導入補助金から、PCをはじめとしたハード類やクラウド利用料の2年分が、補助対象となる予定です。
IT導入補助金の申請はネットで行いますが、その際にいくつかの添付書類が必要です。必要な書類について、法人・個人事業主ごとに紹介します。
まず法人の場合、以下の書類が必要です。
続いて個人事業主の交付申請に必要な書類です。
必要書類に漏れや不備があると申請対象とならないためご注意ください。
I T導入補助金は他の補助金と同じように、申請すれば必ず採択されるわけではありません。提出書類の採択審査があり、特典上位のものに補助金が支払われる仕組みになっています。
ここでは、採択される可能性が高まるIT導入補助金の申請方法について、順を追ってやるべきことを詳しく紹介します。申請方法と流れをしっかり理解したうえで、申請に臨んでください。
まずは、IT導入補助金サイトや公募要項をよく読んで、補助事業についての内容を理解をしましょう。
公募要項の詳細については、IT導入補助金2021 公募要領 通常枠(A・B類型)版 とIT導入補助金2021 公募要領 低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)版をご確認ください。
IT導入補助金2021Webサイトに掲載されているIT導入支援事業者の中から、自分の事業エリアをカバーする事業者か、必要な業務に対するITツールを取り扱っている事業者を探します。検索ツールでは「宿泊業向け」「飲食業向け」といった業種や、「顧客対応・販売支援」「調達・供給・在庫・物流」といった業務フロー別に検索が可能です。
補助金の対象となるのは事務局に登録されたITツールに限られるため、IT導入支援事業者と相談しながら必要なITツール等を選定しましょう。
IT導入補助金の電子申請には、法人や個人事業主が取得できる「GビズID」という行政サービス用認証アカウントを取得する必要があります。GビズIDの取得はIT導入支援事業者と一緒に手続きを進められるので、ご安心ください。
GビズIDプライムアカウントを取得ののち、IT導入支援事業者から「申請マイページ」の招待を受け、IT導入補助金Webサイトの申請マイページにログインしてIT導入補助金の電子申請を行います。
申請内容を元に事務局で審査を受け、交付決定の通知が下りてから、IT導入支援事業者の協力のもとITツール等の契約・導入を行います。
※交付決定の連絡が届く前に発注・契約・支払い等を行った場合は、補助金の交付を受けることができません。ご注意ください。
IT導入補助金を利用した事業の完了後は、事業実績報告が必要です。IT導入補助金Webサイトの申請マイページから、実際にITツールの発注・契約・納品・支払い等を行ったことが分かる証憑(見積書や領収証など)を提出します。事業実績報告の完了後に、1ヵ月を目安に実際の補助金額が確定・交付されます。※振込までの期間は目安となっております。
IT導入補助金の申請を円滑に行うためにおさえたいコツを紹介します。
IT導入補助金の申請は、信頼できるIT支援事業者のアドバイスやサポートを受けながら進めるのがおすすめです。申請の通りやすさは申請内容や正確さによって大きく左右されます。申請に通りやすい書類を作るには、プロの力を借りることが大切です。支援事業者を選ぶ際は、単純な能力や費用面だけでなく、相談のしやすさなども重視しましょう。
また申請書類は提出前に入念な確認が必要です。申請書類に間違いがあると修正しなければならず、受理されるまでに時間がかかってしまいます。補助金は予算の上限が迫るほど審査が厳しくなるため、修正によるタイムロスは非常にリスクが高いです。修正中に予算オーバーしてしまうといった事態を防ぐため、書類は正確に作成し、しっかり確認する必要があります。
IT導入補助金の申請時にはいくつか注意すべきポイントがありますので、下記内容をあらかじめご確認ください。
原則として、同一年度内に同じ事業者が同じ補助金を受けとることはできません。2022年度のIT導入補助金交付申請の期間はまだ発表されておりませんが、この期間内に1度でも交付決定を受けた事業者は、今年度内にIT導入補助金を再び申請することはできません。また、3年以内に補助金を受けている場合でも、減点対象となってしまいますので、注意する必要があります。
国の補助金の原資は税金です。支給された補助金は、きちんと使用されたかどうかを明確にする必要があるため、補助事業が終了した後に、証憑(見積書や領収証など)を提出し清算払い(後払い)で受け取ることになります。そのため、ITツール等の購入時は借入などを含む自己資金で支払いを行う必要があります。
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IT導入補助金以外のホームページ助成金については、別の記事もご用意しています。