2022年1月中に、事業再構築補助金の第5回公募が開始予定です。この事業再構築補助金はコロナウイルスの感染拡大に伴い事業転換・新規事業・事業再編のための補助金です。
この記事では、事業再構築補助金の種類や補助率、申請の適用条件、補助対象となる具体例などを詳しく解説します。ECサイトやWebサイトのリニューアル、新規制作などオンライン事業でも活用可能な「事業再構築補助金」について、2021年12月時点での最新情報をまとめました。
目次
事業再構築補助金は、新型コロナウイルスの影響を受ける小規模事業者・中小・中堅企業を支援するために新しく設立された制度です。事業再構築補助金は返済不要の補助金で、補助率は費用の1/2~2/3。補助額の上限は100万円~最大1億円(会社の規模等によって異なる)となります。
新型コロナウイルスの流行により、さまざまな企業において需要や売上の低迷が発生しました。回復が期待し辛い上、社会情勢の変化への対応も難しい状態です。このような企業の事業再構築を目的に、事業再構築補助金の制度が生まれました。
企業の回復を目指した業種・業態・事業などの転換や、新分野への展開などを行う場合が対象となります。本制度は2021年の春に第1回がスタートし、2022年1月の公募で第5回目を迎えようとしています。
これまで、経済産業省の中小企業を対象にした補助金には「ものづくり補助金」「持続化補助金」「IT導入補助金」がありました。国の狙いとしては、これらの補助金を活用して中小企業に生産性を上げてもらい、企業の競争力を高めたり従業員の給与に反映させたりといった結果を期待していたものと推測されます。
ところが、中小企業庁が発表した「2020年版 小規模企業白書」の分析によると、補助事業終了後3年目までは事業化率が大きく伸びる一方で4年目以降は伸びが鈍化することや、生産性向上の成果が賃上げに必ずしも繋げられていない点などを問題視し、2019年度より事業の効果測定におけるKPIの見直しが計られました。つまり、補助金を利用したものの、継続して生産性をあげられるような効果が出ていない企業が多いということです。
これをふまえて、2020年12月8日の閣議決定では「ポストコロナに向け、中小企業の事業継続、業態転換や新たな分野への展開等の経営転換を強力に後押しすること等を通じて、生産性の向上、賃金の継続的な上昇につなげる」と表明されました。
新たに設けられる「事業再構築補助金」は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う事業モデルの転換や、新規事業分野への進出、M&Aなどの事業再編、海外展開によるグローバル市場開拓など、企業に対してよりスケールの大きな成長を目指す支援を目的としています。
補助金額 | 補助率 | 枠 | |
---|---|---|---|
中小企業(通常枠) | 100万円以上6,000万円以下 | 2/3 | |
中小企業(卒業枠) | 6,000万円超~1億円以下 | 2/3 | 400社限定 |
中堅企業(通常枠) | 100万円以上8,000万円以下 | 1/2(4,000万円超は1/3(※)) | |
中堅企業(グローバルV字回復枠) | 8,000万円超~1億円以下 | 1/2 | 100社限定 |
(※)補助対象経費が8,000万円以下の場合は、補助率1/2を摘用。補助金額の上限は4,000万円となる。補助対象経費が8,000万円を超える場合は、8,000万円を超える部分の経費は補助率1/3を摘用。補助金額の上限は8,000万円となる。
事業再構築補助金は、上記表のように事業規模などに応じて補助金額と補助率に4つの枠があります。それぞれの枠について詳しく解説します。
すべての中小企業を対象にした申請枠です。費用の補助金額は100万円以上6,000万円以下で、費用に占める補助率は3分の2です。
条件付きの申請枠で、全ての公募回の合計で400社限定になります。費用の補助金額は6,000万円超~1億円以下で、費用に占める補助率は3分の2です。計画期間内に、以下のいずれかのために資本金または従業員を増やし、中小企業から中堅企業等へと成長する事業者向けの特別枠です。
すべての中小企業を対象にした申請枠です。費用の補助金額は100万円以上8000万円以下、費用に占める補助率は2分の1です。(補助額が4000万円超の場合、補助率は3分の1)
条件付きの申請枠で、全ての公募回の合計で100社限定になります。費用の補助金額は8000万円超~1億円以下で、費用に占める補助率は2分の1です。以下の3つの要件をすべて満たす中堅企業向けの特別枠です。
特別枠は緊急事態宣言により深刻な影響を受けた中小企業等が利用できます。通常枠より補助率が高く、審査から採択までの時間が他の枠に比べて迅速です。もし特別枠で不採択となった場合、通常枠での再審査が行われます。補助額は従業員数によって異なり、それぞれ以下のとおりです。
従業員数 | 補助金額 | 補助率 |
---|---|---|
5人以下 | 100万円~500万円 | 中小企業3/4 中堅企業2/3 |
6人~20人 | 100万円~1,000万円 | |
21人以上 | 100万円~1,500万円 |
一般的な企業が事業再構築補助金を申請する場合、採択数が決まっていて適用要件が厳しい「中小企業(卒業枠)」および「中堅企業(グローバルV字回復枠)」を狙うよりも、すべての企業が対象になる「中小企業(通常枠)」か「中堅企業(通常枠)」で補助金申請を行う方が手続きはスムーズです。
経済産業省の補助金は、原則として補助金採択後に発生した費用しか認められません。補助金申請が採択され「交付決定通知書」が送られてくる前に事業に関する発注契約を行うと、その発注分は補助対象経費から外れてしまいます。(※)
※事務局から事前着手の承認を受けた場合には、令和3年2月15日以降に発生した経費についても補助対象とすることが可能です。
また、補助金は原則「後払い」です。補助事業期間終了後に領収証などの証拠書類を提出して初めて、補助金の支払いが認められる方式になっています。そのため、大きな事業を計画している場合は借り入れなどの資金繰りを検討する必要があるでしょう。
これらの手続きは非常に面倒なものですが、補助金の財源は私たちの税金であるため、適正な使われ方をしたのか細かく確認する必要があるのです。
事業再構築補助金の補助対象となる企業の要件は、以下のとおりです。
それぞれ具体的に解説します。
新型コロナウイルスの流行により、売り上げが減っていることが要件のひとつです。以下の両方を満たす必要があります。
ただし第6回公募からは、後者の条件は撤廃予定です。新型コロナウイルスの影響と認められる売り上げ減少のみが対象です。
事業再構築への取り組みも、事業再構築補助金の要件となります。事業再構築補助金は、企業の回復を目指した業種・業態・事業などの転換や、新分野への展開などを支援する補助金です。中小企業庁によって制定された「事業再構築指針」に沿った、事業再構築の活動が必要です。事業再構築指針を必ずチェックし、その上で補助金の申請に向けた手続きを行います。
事業再構築補助金の申請には、認定経営革新等支援機関と連携した上での事業計画の策定も必要です。認定経営革新等支援機関は、商工会・商工会議所や税理士などさまざまな機関が認定されています。事業計画は以下のどちらかを達成できる内容の策定が求められます。
事業再構築補助金は三次公募から、「最低賃金を踏まえた見直し」が追加されました。こちらの追加により、一部の要件が以下のように変更となっています。
事業再構築補助金の申請方法を紹介します。基本的な流れは以下のとおりです。
それぞれ詳しく解説します。
事業再構築補助金の申請には、申請書類とは別に以下の資料が必要です。
また事業再構築補助金の申請には、企業版マイナンバーのような性質を持つGビズIDを使います。GビズIDは手続きからIDの発行までに2週間ほどかかります。補助金申請などで電子申請が増加する時期はそれ以上の期間が必要になる可能性があるため、早めにGビズID取得の手続きを行うのがおすすめです。
事業再構築補助金の申請時には、事業計画書の提出が必要です。この事業計画書を審査したうえで、事業再構築補助金の対象企業になれるかどうかが決まります。
事業計画書の作成にはかなりの時間がかかると思います。事業者が単独で事業計画書を作成するより、支援機関や行政書士といった専門家の支援を受けて進めた方がスムーズに作成できるでしょう。
事業計画書に記載する内容の明確な指定はありませんが、なるべく詳細に記載するのをおすすめします。また他社と比較される可能性を考慮し、以下の内容は記載すると安心です。
前述したように、事業計画は認定経営革新等支援機関との連携が必要です。事業計画の策定がある程度進んだ段階で、認定経営革新等支援機関に相談すると良いでしょう。
事業再構築補助金には、新型コロナウイルス感染症の影響が長引く中で、ポストコロナ・ウィズコロナの時代に対応するために中小企業等の事業再構築を支援する狙いがあります。事業再構築補助金で補助対象となる事業の具体例の一部を紹介します。
・飲食業 喫茶店経営
└飲食スペースを縮小し、新たにコーヒー豆や焼き菓子のテイクアウト販売を実施。
・飲食業 居酒屋経営
└オンライン専用の注文サービスを新たに開始し、宅配や持ち帰りの需要に対応。
・飲食業 レストラン経営
└店舗の一部を改修し、新たにドライブイン形式での食事のテイクアウト販売を実施。
・飲食業 弁当販売
└新規に高齢者向けの食事宅配事業を開始。地域の高齢化へのニーズに対応。
・飲食業 衣服販売業
└衣料品のネット販売やサブスクリプション形式のサービス事業に業態を転換。
・小売業 ガソリン販売
└新規にフィットネスジムの運営を開始。地域の健康増進ニーズに対応。
・小売業 ヨガ教室
└室内での密を回避するため、新たにオンライン形式でのヨガ教室の運営を開始。
・サービス業 高齢者向けデイサービス
└一部事業を他社に譲渡。病院向けの給食、事務等の受託サービスを新規に開始。
・サービス業 半導体製造装置部品製造
└半導体製造装置の技術を応用した洋上風力設備の部品製造を新たに開始。
・製造業 タクシー事業
└新たに一般貨物自動車運送事業の許可を取得し、食料等の宅配サービスを開始。
・運輸業 航空機部品製造
└ロボット関連部品・医療機器部品製造の事業を新規に立上げ。
・製造業 伝統工芸品製造
└百貨店などでの売上が激減。ECサイト(オンライン上)での販売を開始。
・製造業 和菓子製造・販売
└和菓子の製造過程で生成される成分を活用し、新たに化粧品の製造・販売を開始。
・食品製造業 土木造成・造園
└自社所有の土地を活用してオートキャンプ場を整備し、観光事業に新規参入。
・建設業 画像処理サービス
└映像編集向けの画像処理技術を活用し、新たに医療向けの診断サービスを開始。
引用:経済産業省
事業再構築補助金は、ECサイトやEコマースなどのWeb事業にも利用できます。経済産業省の予算資料には、中小企業等事業再構築促進事業の説明には「新規事業分野への進出等の新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援します」と書かれています。
これらの内容に該当するのであれば、ECサイトやEコマースなどのWeb事業を始めることも事業再構築補助金の対象になると考えられるでしょう。ECサイトやEコマース事業に関する補助金については、以下の記事で詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
ECサイト制作、リニューアルに利用できる補助金はある?申請方法やもらえる金額を解説!【2021年版】
事業再構築補助金のスケジュールについて解説します。事業再構築補助金に限らず、補助金は申請から支払いまでに要する時間が長めです。申請に関する期日はかなり厳格であり、必要な作業も多いため、事前にある程度のスケジュールを把握する必要があります。
事業再構築補助金の第5回公募について、現在判明している情報から予想できるスケジュールは以下の通りです。
申請締め切りに間に合うよう、1月中には事業計画の策定および認定経営等支援機関への相談ができると安心です。
補助金は実績報告および確定検査後のあとに支払われます。具体的な流れは以下のとおりです。
仮に第5回事業再構築補助金の交付決定が2022年6月に行われたとすると、2023年7月頃に実績報告、2023年8月頃に補助金の支給を受けると予想されます。
事業再構築補助金の申請スケジュールについて押さえるべき注意点があります。今回紹介する内容は以下3つです。
それぞれ具体的に解説します。
事業再構築補助金に限らず、補助対象は原則として、交付決定後に着手した部分にかかる経費です。補助事業実施期間内に生じた経費が対象となる点を、必ず押さえる必要があります。
先ほど紹介した「支払いまでのスケジュール」の場合、交付決定日~12カ月の間が対象期間です。そのため設備の発注や建物建築の契約締結日など、大きな支出を行うタイミングにはとくに注意しましょう。
ただし事業の再構築は急を要する場合が多く、交付決定を待つのが困難なケースもあります。このような場合「事前着手承認制度」が利用できる可能性が考えられます。こちらは一定の申請書を提出すれば、期間よりも前に発生した費用も補助金の対象にできる制度です。
ただし補助金が不採択となった場合、費用はすべて自己負担となります。採択されるか不明な状態で多額の支出を行うのはリスクが高いため、交付決定後の着手が大前提です。
補助金額が3,000万円を超える案件の場合には、金融機関の確認書が必須です。こちらの書類は発行に時間がかかるうえ、金融機関によっては事業計画書の提出が求められます。申請期日を確実に守れるよう、早めに金融機関へ相談、確認を行うと安心です。
システムエラーやネットワーク不具合などのトラブルにも気を付ける必要があります。事業再構築補助金の第1回受付ではシステムエラーが発生しました。こちらは事務局側に原因があったため、締め切りが延長となりましたが、申請者側に原因があった場合は特別な救済を受けられません。
万が一のトラブルにも対応できるよう締め切りの1週間前、どんなに遅くても3日前には提出できるよう準備を進めると安心です。
事業再構築補助金は、新型コロナウイルスによる影響を受けた中小企業等の事業再構築を強く支援します。大きな設備投資や施策展開など、自社の負担のみでは難しい活動の実施を後押しする制度です。
事業再構築補助金の申請には、細かな要件や必要資料などが多数あります。スケジュールも非常に厳格なため、事前の情報収集が非常に重要です。
もし事業再構築補助金をECサイトやEコマースなどのWeb事業に利用するのであれば、ぜひニュートラルワークスへご相談ください。国家資格である行政書士や中小企業診断士と提携しているため、安心してお任せいただけます。無料相談も受け付けておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。